AGVのメリットとは|導入に当たっての選び方と併せて解説
公開日:2023.09.05 更新日:2023.03.10
人手不足の課題を解決するため、無人で搬送に対応できるAGVを導入するケースが増えています。この記事では、AGVの基本情報に触れた上で、具体的なメリット・デメリットや活用シーンなどを解説します。AGVを導入して有効活用したいと考えている場合は、ぜひ参考にしてください。
AGVの基本情報
AGVとは、そもそもどのようなものなのでしょうか。ここでは、AGVの基本情報を解説します。
なおAGVの種類や導入の注意点、導入例などはこちらの記事で詳しく解説しています。AGVの導入を検討している方は、ぜひ合わせてご覧ください。
AGVは無人搬送車
AGVとは、工場や倉庫などでものを自動で運ぶ機械です。「AGV」は「Automated Guided Vehicle」の略であり、自動搬送車や搬送ロボットともよばれています。例えば、部品や材料などを積み、あらかじめ決められた場所まで運びます。AGV は1980年代初頭から活用されており、さまざまな現場の生産性向上に貢献してきました。
AGVは、床に設置された磁気テープや電磁誘導ケーブルなどの誘導体を目印として走行する仕組みです。そのため、あらかじめ設定したルートを外れずに走行できます。
AGVとAMRの違い
「AMR」は「Autonomous Mobile Robot」の略であり、自律走行搬送ロボットのことです。AGVを走行させるためには誘導体が必要であるのに対し、AMRは自律走行ができます。
また、障害物があるとAGVは走行を停止します。一方、AMRは自動で障害物を回避し、走行可能なルートへ変更できます。
なおAMRとAGVの違いや導入に向いている現場などの情報は、こちらの記事で詳しく解説しています。
AGVの4つのメリット
AGVにはさまざまなメリットがあります。ここでは、メリットについて具体的に解説します。
1.業務の効率化ができる
AGVを導入するとそれまで人が対応していた業務を代替でき、効率化を実現できます。人が工場や倉庫の中を歩いてものを運搬していた場合、その作業をAGVに任せられます。
人が作業すると、本人のスキルや状態によって業務効率が下がるケースもあるでしょう。しかし、AGVに作業を任せれば、常に一定以上の業務効率を維持できます。
2.労働力不足を解消できる
人手が足りず労働力不足に悩んでいる企業は増えています。AGVを導入すれば省人化が可能になるため、少ない人員でも無理なく業務を進められるようになります。労働力不足を解消できるだけでなく、それまで運搬を担当していた人員を他の部署へ異動させて別の業務を任せることも可能です。
3.ヒューマンエラーを削減できる
人が作業する場合、細心の注意を払ってもミスは少なからず発生します。しかし、人が担当している作業をAGVに任せると、ヒューマンエラーは削減できます。たとえば、ピッキングにAGVを導入すればデータに基づいて正確に作業できるため、基本的に商品の取り違えは発生しません。商品を交換する手間もかからなくなります。
4.限られたスペースを効率よく活用できる
AGVは、スペースが限られていても導入可能です。ものを自動的に運ぶ設備としてはベルトコンベアもありますが、広いスペースが必要なうえに、工事が大掛かりです。一方、AGVは広いスペースがなくても活用でき、工事もそれほど大掛かりにはなりません。AGVは、限られたスペースを効率よく活用したい場合にも適しています。
AGVの3つのデメリット
AGVにはデメリットも存在します。具体的にどのようなデメリットがあるのか解説します。
1.コストがかかる
AGVを導入すると長期的にみればコスト削減につながりますが、導入時にはまとまった初期費用が必要です。具体的には、ロボットの購入費用、磁気テープや電磁誘導ケーブルといった誘導体の設置費用、システムの導入費用などがかかります。
2.レイアウトを変更しなければならない
AGVの導入時には、レイアウトの変更が必要になる可能性が高いです。AGVを導入する上で広いスペースは必要ないものの、AGVが通過できるよう通路を整理しなければなりません。ルート上に障害物があるとAGVは停止するため、障害物を避けられるルートを用意する必要があります。AGVの走行方式には複数の種類があるため、慎重に検討しましょう。
3.安全対策を講じなければならない
AGVを導入する上では、安全対策も必要です。JIS規格「無人搬送車及び無人搬送車システム-安全要求事項及び検証」により、AGVは障害物接触検知装置や警報装置・接近検出装置などの安全装置の取りつけが必要とされています。
ただし、安全装置をつけても、すべてのトラブルを回避できるわけではありません。状況によっては、従業員がAGVと接触して怪我をしたり、荷物やAGVそのものが破損したりする恐れもあります。また、非常停止すれば搬送作業がストップし、全体の生産性の低下にもつながります。AGVを活用する上では、そのような問題が発生しないようにするための対策や配慮が必要です。
AGVのおもな活用シーン
AGVを活用できるシーンは幅広いです。特によく活用されているシーンとしては、物流センター、倉庫、店舗のバックヤードなどでの荷物の搬送、仕分け、ピッキングなどがあげられます。ほかにも、飲食店や病院などでAGVを導入しているところがあります。
AGVを導入する際の選び方は?
AGVにはさまざまな種類があります。AGVを導入して課題を解決するには、自社に合ったAGVを導入することが重要です。
では自社に合うAGVを選ぶには、どのような点を重視すれば良いのでしょうか。AGVを導入する際の3つのポイントを解説するので、製品選びにお役立てください。
使用場所・運搬内容
AGVを導入する際は、使用場所や運搬内容に合ったものを選びましょう。
例えば、それほど大きくない工場や倉庫に大型のAGVを導入してしまうと、小回りが利かず、思うようにAGVを活用できません。反対にかなり大きな工場や倉庫に小型のAGVを導入しても、効率よく搬送を行うことはできないでしょう。導入後の作業効率を高めるには、使用場所の床面積に合わせてAGVを選ぶことが大切です。自社に合ったAGVを導入するには、以下を目安に床面積に合ったAGVの種類を選びましょう。
- 床面積10,000㎡以上 :平ボディ型・重量級型・特殊型
- 床面積2,000~10,000㎡ :台車型・けん引型
- 床面積2,000㎡以下 :低床型
同時に、通路幅や旋回スペースに問題がないかも、確認が必要です。走行ルートを具体的に想定し、問題なく走行できるかどうかを確かめておきましょう。
加えて、使用環境が屋外なのか屋内なのかによっても、適したAGVの種類は変わってきます。屋内と屋外の両方で使用する場合は、屋外型を選びましょう。また、凹凸のある路面を走行させる場合は、屋外型や特殊型が適しています。特殊型はカスタマイズ可能なAGVのことです。例えば屋根付きにカスタマイズすれば、雨天でもAGVを使用できます。
またAGVは主に誘導体に沿って走行する仕組みになっているので、床に誘導体を設置する必要があります。磁気テープに沿って走行する磁気誘導式は、コストが抑えられるものの、複雑な走行ルートを組みたい場合には適していません。また走行ルートを変える際は、磁気テープを貼り替えなければならないため、走行ルートを頻繁に変える必要がある現場には向かないでしょう。
頻繁に走行ルートを変える場合は、床や天井にQRコードを設置し、AGVが読み取ることで走行が可能となる画像認識式がおすすめです。ただし画像認識式は、設置場所に表面度の高さが求められるため、斜行や旋回が得意ではなく、直線の動きが主になります。
磁気誘導式や画像認識式以外にも走行方式はいくつかあるため、各方式のメリット・デメリットを踏まえてAGVを選ぶようにしましょう。
また運搬するものの内容に合ったAGVを選ぶことも重要です。各タイプに適した運搬内容は、以下のようになっています。
- 台車型:段ボール・小型コンテナ・小型荷物
- 低床型:固定式の棚・パレット
- けん引型:可動式の棚・かご台車・パレット台車
上記に加えて、運搬するものの重さや大きさも考慮し、問題なくものが運べるAGVを選ぶことがポイントです。
サポート体制
導入するAGVを選ぶ際は、サポート体制も必ず確認しておきましょう。
万が一AGVが故障した場合、業務に支障が出て大きな損害を被ってしまう可能性があります。故障のリスクを未然に防ぐには、定期メンテナンスを実施してくれるAGVメーカーの製品を選ぶのがおすすめです。またサポートが手厚いAGVを選べば、予期せぬ故障が発生した際もスムーズな対応が期待できるので、故障による影響を最小限に抑えられる可能性があります。
さらに導入時のシステムテストや、オンサイトでの操作トレーニングなどを実施してくれるAGVメーカーなら、導入もスムーズに進められるでしょう。
サポートの有無やサポート期間だけでなく、具体的にどのようなサポートが受けられるのかを確認した上で、手厚いサポート体制のAGVを選ぶのがおすすめです。
ただし一部のAGVメーカーはサポートが受けられない場合もある為、必ず事前に確認をした上で導入しましょう。
導入コスト
AGVを選ぶ際は、導入コストも重要なポイントです。
AGVにはさまざまな製品があり、本体価格は製品によって大きく変わってきます。また同じ製品でも、要求する仕様などによって導入コストが変わってくるので注意が必要です。
多機能なAGVもありますが、搭載している機能が多ければ多いほどコストがかかってしまう傾向にあります。反対にコストを重視し過ぎて最低限の機能だけを搭載したAGVを選んでしまうと、思うように活用できず、十分な費用対効果が得られないかもしれません。
導入する際は、自社がどのような機能・仕様を求めるのかを十分に検討した上で見積もりを取り、妥当な導入コストかどうかを確認しましょう。前述した使用場所や運搬内容、サポート体制も踏まえて、必要な機能を備えたコストパフォーマンスの高いAGVを選ぶことが大切です。
まとめ
AGVは業務効率化や労働力不足解消のために活用でき、物流センターや倉庫といったさまざまな場所に導入されています。AGVの導入により、ヒューマンエラーの削減や限られたスペースの効率的な活用も実現可能です。初期費用としてかかるコストや必要な安全対策についても確認した上で、AGVの導入を進めましょう。
カナデンでは、それぞれの顧客が抱える問題を解決するために必要な製品の提案が可能です。要望に合わせ、メーカーをまたいだ幅広い商品の中から最適なものを選定できます。自社に適しているAGVを導入するために、ぜひ相談してください。
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