産業用ロボットの動向を解説!トレンドや今後の展望について紹介
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少子高齢化による労働人口の減少や、製造業における生産性向上の要求が高まる中、産業用ロボットの活用がますます重要になっています。多くの企業が自動化による課題解決に関心を寄せていますが、市場がどのように変化し、どのような技術が注目されているのか、全体像を把握するのは容易ではありません。
本記事では、産業用ロボットの市場動向について、世界と日本の市場規模、業界別の動向、技術トレンド、そして導入における課題までを網羅的に解説します。
産業用ロボット市場の現状
産業用ロボット市場は、生産性向上や労働人口の減少の解決策として注目されています。まずは、世界と日本国内の市場動向を具体的なデータと共に見ていきましょう。
世界の市場規模と今後の予測
世界の産業用ロボット市場は、著しい成長フェーズにあります。調査会社のFortuneBusinessInsightsによると、2024年の世界市場規模は198.9億米ドルと評価されており、2032年までには555.5億米ドルに達すると予測されています。これは、年平均成長率(CAGR)14.2%という非常に高い成長率です(※)。
| 項目 | 2024年 | 2032年(予測) | 予測期間中の年平均成長率(CAGR) |
|---|---|---|---|
| 世界市場規模 | 198.9億米ドル | 555.5億米ドル | 14.2% |
※出典:FortuneBusinessInsights「Industrial Robots Market Size, Share & Industry Analysis, By Robot Type (Articulated, SCARA, Cylindrical, Cartesian/Linear, Parallel, and Others), By Application (Pick and Place, Welding & Soldering, Material Handling, Assembling, Cutting & Processing, and Others), By Payload Capacity (Up to 16 KG, 16 to 20 KG, 61 to 225 KG, and Above 225 KG), By Industry (Automotive, Electrical & Electronics, Healthcare & Pharmaceutical, Food & Beverages, Rubber & Plastic, Metals & Machinery, and Others), and Regional Forecast, 2025-2032」https://www.fortunebusinessinsights.com/industry-reports/industrial-robots-market-100360
日本国内の市場規模と今後の予測
日本は世界有数のロボット大国であり、2020年時点では世界供給の45%を担っています(※1)。さらに、経済産業省とNEDOの調査によれば、サービス分野なども含めた日本のロボット市場全体は、2035年には9.7兆円規模にまで拡大すると予測されています(※2)。
また、日本ロボット工業会の統計によると、2024年の産業用ロボットの受注額と生産額は前年比で減少したものの、これは一時的な調整期間と見られています。2025年には回復が見込まれており、国内需要も長期的には増加していく見通しです(※3)。
※1出典:国際ロボット連盟(IFR)「Japan is the world´s number one industrial robot manufacturer – delivering 45% of the global supply. In recent years, the country’s robot suppliers have increased their production capacity considerably: Their export ratio rose to 78% in 2020, when 136,069 industrial robots were shipped. These are results published by the International Federation of Robotics (IFR) ahead of the International Robot Exhibition (iREX) in Tokyo, March 09 to 12, 2022.」https://ifr.org/news/japan-is-worlds-number-one-robot-maker/
※2出典:総務省「総務省|平成27年版 情報通信白書|関連市場の動向」https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h27/html/nc241330.html
※3出典:日本ロボット工業会「マニピュレータ、ロボット統計 受注・生産・出荷実績」https://www.jara.jp/data/press/2025/250602.html
【業界別】産業用ロボットの需要動向
産業用ロボットの需要は、特定の業界に留まらず、複数分野で拡大しています。ここでは、主要な業界における動向を解説します。

自動車業界:EV化を背景に依然として発達している市場
自動車業界は、歴史的に産業用ロボットがさかんに活用される分野であり、溶接、塗装、組み立てといった主要な工程で自動化が進んできました。
近年では、電気自動車(EV)へのシフトが新たな需要を生み出しています。バッテリーの搬送・組み立てや、軽量化のための新素材加工など、EV特有の製造プロセスにおいて、高精度で柔軟な作業が可能なロボットの役割がますます重要になっています。
▶日本での電気自動車(EV)の普及率は?今後の動向予測もあわせて解説|株式会社カナデン 製品サイト
自動車部品の組み立て・検査などの自動化には三菱電機株式会社の産業用ロボット『MELFA FRシリーズ』もおすすめです。
電気・電子業界:小型ロボットの需要が拡大
スマートフォンや半導体などの製造を手がける電気・電子業界も、ロボット活用を牽引する主要分野です。
この業界では、微細な部品の組み立てや、クリーンルーム内での基板搬送など、精密な作業が求められます。そのため、水平多関節ロボット(スカラロボット)や、人との協働作業が可能な小型ロボットの需要が特に高まっています。
製品ライフサイクルの短縮化に対応するため、生産ラインを柔軟に変更できるロボットシステムの構築が進んでいます。
3品業界(食品・医薬品・化粧品)では人手不足解消の切り札に
食品、医薬品、化粧品を扱う「3品業界」では、人手不足の深刻化や衛生管理の厳格化を背景に、ロボット導入が求められています。
具体的には、食品の箱詰め(パッケージング)、医薬品の仕分け、化粧品の容器への充填といった作業が自動化の対象です。
これらの業界では、衛生基準に対応した特殊な材質や設計のロボットが求められるほか、多品種少量生産に対応できる柔軟性が重視されます。
物流業界:Eコマース市場の拡大が導入を後押し
Eコマース市場の急拡大に伴い、物流倉庫内での作業量が増加しており、これを支えるためにロボット技術の導入が不可欠となっています。
倉庫内での商品のピッキング、棚入れ、搬送といった作業を自動化するAGV(無人搬送車)やAMR(自律走行搬送ロボット)の導入が活発化しています。これにより、作業効率の向上と省人化を実現し、24時間稼働の物流センターの運営を可能にしています。
▶AGV(無人搬送車)とは|種類や導入の注意点・事例を解説|株式会社カナデン 製品サイト
注目すべき産業用ロボットの技術トレンド
産業用ロボットの性能は、周辺技術の進化と共に飛躍的に向上しています。AIやIoTといった最先端技術との融合により、ロボットはより賢く、より柔軟な働き手へと進化を遂げています。ここでは、特に注目すべき3つの技術トレンドを解説します。

AIと機械学習による自律性の向上
AI(人工知能)と機械学習の技術がロボットに搭載されることで、これまで人間が行っていた複雑な判断を伴う作業も自動化できるようになりました。
例えば、画像認識AIを活用したロボットは、製品の僅かな傷や形状の違いを自ら検知し、不良品を自動で仕分けることが可能です。
また、機械学習によってロボット自身が作業を通じて学習し、動作の精度を高めていくことも可能になりつつあります。これにより、ティーチング(ロボットへの動作教育)にかかる時間と労力が大幅に削減されることが期待されます。
人と安全に協働するロボットの普及
従来の産業用ロボットは、安全上の理由から人間と作業スペースを隔離する必要がありました。しかし、高感度センサや制御技術の進化によって開発された「協働ロボット」は、人に接触すると自動で停止するなど、高度な安全機能を備えています。
これにより、安全柵を設置することなく、人と同じ空間で並んで作業することが可能になりました。協働ロボットの普及は、これまで自動化が難しかった細かい組み立て作業や、人とロボットが協力して進める工程の自動化を促進します。
三菱電機株式会社の産業用ロボット『MELFA FRシリーズ』は安全機能を備え、作業者と同一空間での作業を実現します。
IoT連携で実現するスマートファクトリー
IoT(モノのインターネット)技術を活用し、工場内のあらゆる機器をネットワークで接続することで、生産プロセス全体を最適化する「スマートファクトリー」の実現に向けた動きが加速しています。
産業用ロボットもIoTデバイスの一つとしてネットワークに接続され、稼働状況やエラー情報をリアルタイムで収集・分析することが可能です。これにより、生産ラインのボトルネックを特定したり、故障の予兆を検知してメンテナンスを行う「予知保全」が実現し、工場全体の生産性を向上することができます。
▶予知保全とは?導入の重要性や知っておくべきメリットと導入フロー|株式会社カナデン 製品サイト
▶スマートファクトリー(スマート工場)とは?AI/IoTの活用事例とともに紹介|株式会社カナデン 製品サイト
産業用ロボット導入における主な課題
産業用ロボットの導入は多くのメリットをもたらしますが、同時に乗り越えるべき課題も存在します。ここでは、企業が導入を検討する際に直面しやすい3つの主要な課題について解説します。これらの課題を事前に理解し、対策を講じることが、導入成功の鍵となります。

高額な初期投資と費用対効果の検証
産業用ロボットの導入には、ロボット本体の購入費用だけでなく、システムインテグレーション(SI)費用や周辺設備への投資など、多額の初期コストがかかります。企業にとっては、この初期投資が大きなハードルとなる場合があります。
そのため、導入前にどの工程を自動化すれば最も効果が高いのかを慎重に見極め、投資額に対してどれくらいのリターン(生産性向上、コスト削減など)が見込めるのか、費用対効果を詳細に検証することが不可欠です。
▶【令和7年度】省力化・業務効率化に使える補助金・助成金とは?4つの支援制度を徹底解説|株式会社カナデン 製品サイト
ロボットを運用する人材の不足と育成
ロボットを導入すれば、人の仕事が全て無くなるわけではありません。ロボットを操作し、メンテナンスを行い、トラブルに対応するための専門知識を持った人材、ロボット関連技術者が必要になります。
しかし、こうした専門人材は多くの企業で不足しているのが現状です。そのため、導入計画と並行して、社内での人材育成プログラムを整備したり、外部の専門家と連携したりするなど、長期的な視点での人材確保・育成戦略が求められます。
安全性の確保と関連規制への対応
産業用ロボットは、重量物を高速で動かすため、作業員の安全を確保することが最も重要です。労働安全衛生法などの関連法規では、ロボットの設置にあたり、安全柵の設置や作業員への特別教育などが義務付けられています(※)。
特に、人と並んで作業する協働ロボットの場合は、リスクアセスメント(危険性の評価)を適切に行い、万全の安全対策を講じる必要があります。これらの規制を遵守し、安全な作業環境を構築することが、ロボットを安定的に稼働させるための大前提となります。
※出典:厚生労働省「産業用ロボットに係る労働安全衛生規則第150条の4の施行通達の一部改正について」https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb9779&dataType=1&pageNo=1
産業用ロボットの将来性と今後の展望
産業用ロボットの市場は、今後も技術革新と社会的なニーズの両面に支えられ、持続的な成長を続けると確実視されています。AIやセンシング技術のさらなる進化は、ロボットの適用範囲を飛躍的に広げ、これまで人間でなければ不可能だと考えられていた、より繊細で複雑な作業の自動化を実現していくでしょう。
また、人手不足が社会全体の課題となる中で、製造業だけでなく、建設、農業、医療・介護といった多様な分野でのロボット活用が本格化していきます。ロボットは単なる「機械」から、人間と共存し、社会を支える不可欠な「パートナー」へとその役割を変えていくと考えられます。企業にとっては、この大きな変化の波を捉え、いかにロボットを戦略的に活用していくかが、将来の競争力を左右する重要な要素となるでしょう。
まとめ
本記事では、産業用ロボットの市場動向について、市場規模の予測から最新技術、導入における課題まで幅広く解説しました。市場は世界的に拡大を続けており、AIや協働ロボットといった技術革新がその成長をさらに加速させています。
一方で、導入にはコストや人材育成といった課題も伴いますが、これらを乗り越えることで得られる生産性向上のメリットは計り知れません。この記事が、貴社の自動化推進に向けた検討の材料となれば幸いです。
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