工場の熱中症対策で企業ができることは?場所別・個人でできる対策方法をご紹介

更新日:2025.07.2

ペットボトルをもった工場作業員のイラスト

日本の夏は年々厳しさを増しており、熱中症による健康被害も深刻化しています。特に熱源が多く、高温になりやすい工場内は熱中症になるリスクが高いです。

2025年6月から労働安全衛生規則が改正され「職場における熱中症対策の強化」が予定されている今、企業にとって熱中症対策は、さらに見過ごせない課題となっています(※)。どのような熱中症対策を講じれば、工場で働く従業員の健康と安全を守れるのでしょうか。

本記事では工場で室温が高まりやすい要因や「職場における熱中症対策の強化」の概要、工場でできる熱中症対策方法を場所別で解説します。

熱中症対策は企業が取り組むだけではなく、従業員一人ひとりが意識して行動に移すことが重要です。本記事を参考に適切な熱中症対策を行い、従業員にも周知して、快適に働ける環境を作りましょう。

※出典:厚生労働省「「令和7年6月1日に改正労働安全衛生規則が施行されます」職場における熱中症対策の強化について」https://www.mhlw.go.jp/content/001476821.pdf

工場で室温が高まる要因は複数ある

さまざまある労働環境の中でも、工場は特に室温が高まりやすい傾向にあります。なぜ工場の室温が高まってしまうのか、2つの要因を解説します。

高温となる設備へ遮熱・断熱処理を施していない

工場の室温が高まる要因の一つは、高温となる設備へ遮熱・断熱処理を施していないことです。

運転中に高温になる設備を設置している工場は多いでしょう。そういった設備に遮熱処理や断熱処理を行っていないと、設備から発せられる熱で工場内の室温が上昇します。加えて蒸気を発する設備の場合、湿度も高くなるので、工場内の体感温度はかなり高くなります。

特に設備の近くで作業をする従業員は、常に過酷な環境の中で働くことになるため、熱中症になるリスクが高いです。

空調設備を効率よく使用できていない

空調設備を効率よく使用できていないことも、工場の室温が高まる要因の一つです。

工場は敷地面積が広いことに加え、天井が高く設計されているので、一般的な住宅やオフィスビルと比べると、空調効率が悪い傾向にあります。そのため工場内を効率よく冷やすには、対策が必要です。ただし十分な対策ができていないと、エネルギーコストばかりがかさんで効果があまり出ず、悪循環に陥ってしまいます。

2025年6月より熱中症対策義務化が施行

暑そうな工場作業員のイラスト

2025年6月1日より、改正労働安全衛生規則が施行されたことはご存知でしょうか。

この改正には「職場における熱中症対策の強化」に関する内容が盛り込まれており、事業者に対して一定条件下での熱中症対策が義務付けられる予定です。背景には、職場における熱中症の災害が増加していることが挙げられます。

対象となるのは、暑さ指数(WBGT値)が28度以上または気温が31度以上の環境で、連続して1時間以上、もしくは1日4時間以上の作業が見込まれるケースです(※)。対象となる事業所には、「体制整備」「手順作成」「関係者への周知」が義務付けられます。

具体的には、以下のような内容です。

体制整備 熱中症の自覚がある従業員や、熱中症が疑われる従業員を発見した際の報告体制を整備する
手順作成 以下の手順書を作成する
  • 事業場の緊急連絡網や、緊急搬送先の連絡先・所在地
  • 重症化を防ぐための応急処置や救急搬送などの実施手順
関係者への周知 「体制整備」「手順作成」を行ったら、従業員を含めた関係者へ周知徹底する

なお対象に当てはまらない場合でも、作業内容や作業服などによって熱中症のリスクは高まるため、上記に沿った対応が推奨されています。

2020〜2023年に職場で発生した熱中症による死亡災害の103件のうち100件は、初期症状の見過ごしや、対応の遅れが原因でした(※)。これを受けて、改正労働安全衛生規則では、熱中症が発生した際に迅速な初期対応を行い、重篤化させないための対策に重点を置いています。

まずは熱中症のリスクを軽減できる環境を整備することが何よりも大切です。後述する工場での熱中症対策を取り入れ、熱中症予防に努めましょう。

※出典:厚生労働省「職場における熱中症対策の強化について」https://jsite.mhlw.go.jp/kagoshima-roudoukyoku/content/contents/2025-0418-7_pamphlet.pdf

工場でできる熱中症対策方法

では、工場でできる熱中症対策には、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。ここからは、工場の場所別に効果的な熱中症対策を解説します。

屋根からの輻射熱対策

太陽光や外気によって屋根が温められると、輻射熱(ふくしゃねつ)によって工場内の室温が上昇します。輻射熱とは、遠赤外線などの熱線を通して伝わる熱のことです。屋根からの輻射熱に効果的な2つの対策を見ていきましょう。

遮熱シートの敷設

屋根からの輻射熱を抑えるには、屋根に遮熱シートを敷設するのが効果的です。

屋根に遮熱シートを敷くと、太陽光による熱で屋根が温められるのを防ぐことが可能です。輻射熱を抑えて室温上昇を抑制すれば、夏場の電気代節約にも効果が期待できます。また冬場の保温効果や結露の防止にも役立ちます。

なお弊社カナデンでは、特殊遮熱フィルム使用の遮熱材「キープサーモウォール」を取り扱っています。輻射熱を約97%カットでき、室温を5度以上低減することが可能です(※)。

※出典:株式会社カナデン 製品サイトhttps://products.kanaden.co.jp/product/detail/818/

屋根用スプリンクラーの設置

屋根に水を散布する屋根用スプリンクラーの設置も、屋根からの輻射熱を低減する有効な方法の一つです。

スプリンクラーで工場の屋根に水を散布することにより、屋根の表面温度が下がるため、工場内の温度上昇を防げます。冷房効率も高められるので、電気代の節約にも大きく貢献するでしょう。

スプリンクラーの設置が難しい場合は、ビル用マルチエアコンやチラーなどの室外機間に取り付けて、吸気側への排熱の循環を防止する「エアシェード」もおすすめです。スプリンクラーと同じく冷房効率を向上させることができ、夏場の消費電力を5〜13%程度抑えることが可能です。

窓からの直射日光対策

窓からの直射日光を遮ることでも、熱中症予防ができます。ここからは、おすすめの窓の直射日光対策を2つご紹介します。

窓ガラスを複層ガラス化する

窓からの直射日光による室温の上昇を防ぐには、窓ガラスを複層ガラスに取り替えるのが効果的です。

複層ガラスとは、2枚以上のガラスで構成されており、ガラスとガラスの間に乾燥空気やガスを封入した窓ガラスを指します。複層ガラスの中でも、ガラスに特殊な金属膜をコーティングした「Low-E複層ガラス(遮熱タイプ)」は、太陽熱を吸収・反射する効果を持つのが特徴です。紫外線をカットする効果もあるので、工場内の設備や製品の紫外線による劣化も防止できます。

遮熱シート・断熱シートを貼る

より簡単に窓からの直射日光対策をしたいなら、窓に遮熱シートや断熱シートを貼る方法もあります。

外気の熱を抑える効果がある遮熱シートや断熱シートは、窓に貼り付けるだけなので、窓ガラスを取り替える必要がありません。コストを抑えながら、工場内の室温上昇を防げます。

ただし、直射日光対策としての効果は、前述した複層ガラスの方が高いです。

製造設備などの機械熱対策

工場内にある製造設備などから発生する熱への対策を講じることも、熱中症対策には欠かせません。以下で詳しく開設します。

断熱シートによる保護

設備から発せられる熱を抑えるには、断熱シートによる保護が効果的です。

ボイラーや蒸気配管、溶鉱炉、焼成炉などは、高い輻射熱を発する代表的な設備です。これらの設備に断熱シートを施すことで、設備からの放熱を防ぐことができ、室温上昇を抑制できます。設備を運転した際の表面温度を基に、適切な耐熱温度の断熱シートを選びましょう。

カナデンで取り扱っている「クルムダン」は、工具なしで設備に装着できる保温カバーです。断熱効果で設備周辺の温度上昇を防ぎ、作業環境の快適性を維持します。各メーカーの規格品に対応できる他、特注品に合わせた設計・製造も可能です。詳しくはカナデンまでお問い合わせください。

作業場全体の対策

工場内での熱中症の発生を防止するには、作業場全体の暑さ対策も必須です。ここでは、3つの対策方法を解説します。

スポット空調の設置

スポット空調とは、部分的な冷却を行える空調機器です。

同じ工場内でも、熱を発する設備の近くとそうでない場所では、体感温度が変わってきます。局所的に温度を下げる効果があるスポット空調は、暑さを感じる箇所だけを効率的に冷やせるので、無駄なく快適な作業環境を作り出せます。状況に応じて使用するには、キャスター付きのタイプを選ぶのがおすすめです。

三菱電機システムサービス株式会社のスポット空調「ムーヴオアシス工法」は、優しい冷風で適度に作業場の温度を下げられる空調ソリューションです。吹き出し口のカスタムもできるので、現場に応じた使い方ができます。一定期間の利用を希望される場合はレンタルも可能です。詳しくはカナデンにお問い合わせください。

産業用扇風機の設置

大型の産業用扇風機を設置することも、熱中症対策には効果的です。

産業用扇風機は、家庭用扇風機よりもかなり羽が大きく、たくさんの風を送り出せます。エアコンと比べると価格が安い上に、ランニングコストが抑えられるのがメリットです。また排熱が発生しないため、運転による室温上昇を防げます。

産業用扇風機にはさまざまなタイプがあり、局所的に冷風を送るタイプや、工場内全体の冷房効率改善に効果的なシーリングタイプもあります。

ただし産業用扇風機は風が発生するので、徹底した衛生管理が求められる食品製造工場や、精密機器を多く設置している工場には適していないでしょう。設置を検討する際は、使用する場所の状況や扱う製品を考慮することが大切です。

カナデンでは、狙った箇所にピンポイントに風を送ることができる「ブルージェットファン」や、軽量で場所を選ばず設置できるHVLS大型シーリングファン「SD-FAN」も取り扱っています。工場に合わせた最適なソリューションをご提案しますので、お気軽にお問い合わせください。

出入口をエアカーテンで仕切る

エアカーテンとは、空気の流れによって物理的なカーテンと同様の仕切りを作り出す装置です。出入口にエアカーテンを設置すると、工場内の涼しい空気が流出するのを防ぐことができるため、工場内を快適な室温に維持できます。また、虫やほこりなどの侵入を防ぐことも可能です。

「ムーヴオアシス工法」や、産業用扇風機「ブルージェットファン」を活用して、エアカーテンと同じような仕組みを作ることもできます。設置場所によって適した設備が異なるので、詳しくはカナデンにお問い合わせください。

作業員個人の対策

熱中症を防ぐためには、作業員一人ひとりが対策を行うことも重要です。代表的な個人でできる熱中症対策には、以下のようなものがあります。

  • 小まめに水分補給をする
  • 塩飴・タブレットなどでミネラルを補給する
  • 保冷材付きベストを着用する
  • ファンが内蔵された空調服を着用する
  • 速乾吸収・接触冷感などの機能性インナーを着用する
  • 冷却タオル・ネッククーラーを活用する
  • 冷感シート・スプレーを活用する

小まめな水分補給やミネラルの補給は、熱中症対策に欠かせません。企業側としても、小まめに補給できる環境を整備するようにしましょう。また、体に熱がこもらないようにする衣類やアイテムを活用するのも効果的です。

カナデンでは、以下のような個人での熱中症対策に適した製品も取り扱っています。熱中症対策として、従業員に配布することもご検討ください。

早期発見で従業員を守ることができる

前述した通り、職場で発生する熱中症による死亡災害のほとんどは、初期対応の遅れが大きな原因です。万が一作業中に熱中症になった従業員がいても、早期発見できれば重症化を防げる可能性が高くなります。

広い工場内で熱中症により倒れた作業員を早期に発見するには、転倒検知機や転倒検知システムの活用もおすすめです。転倒検知機や転倒検知システムを導入すれば、熱中症以外の不測の事態にも備えることができ、従業員の安全を守れます。熱中症対策義務化への対応や、工場内での事故防止のためにも、導入を検討してみましょう。

カナデンでは、転倒時に警報音と無声信号の自動送信を行う転倒検知送信機「EXH-TK12」や、防爆・防滴対応であらゆる環境に設置できる転倒検知送信機「EXH-TKB1A」、カメラ映像を用いた「FAtis 転倒検知システム」などを取り扱っています。FAtis 転倒検知システムは、転倒だけでなく、工場内で起こるさまざまなリスクへの対応や課題解決にも活用可能です。

従業員を守りつつ生産ラインを止めないためにも熱中症対策の設備環境を整えよう

室温が上昇しやすい工場での熱中症対策は、従業員の健康と安全を守るために欠かせません。また万が一熱中症が発生すると、生産ラインにも影響が出てしまいます。自社の生産性維持のためにも、熱中症対策は重要です。

またエネルギーコストの低減にも効果が期待できるので、利益率を高めることにもつながります。本記事を参考に自社に合った熱中症対策を行い、工場の環境整備に努めましょう。

カナデンでは、ご紹介した設備やシステムの他、熱中症対策に効果的なさまざまなソリューションをご提案しています。作業環境の改善にお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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