電気自動車(EV)の急速充電とは?EV普通充電との違いも解説
世界中で普及が拡大している「電気自動車(EV)」を利用するためには、充電器が必要不可欠です。また、充電器のなかでも近年、特に注目が集まっているのが「EV急速充電器」で日本でも増設が推進されています。 そこでEV・PHV用のEV急速充電器などによるエネルギーソリューションを提供しているカナデンが、これから導入を検討する事業者の方が知っておくべき基礎知識などの情報を紹介します。EV急速充電器と普通充電器の違いやメリットを把握して、適切な導入に役立ててください。
EV急速充電器とは
V急速充電器とは、電気自動車(EV)を充電するための設備装置 です。充電器にはEV急速充電器(+大出力充電器)に加えて、普通充電器(+大出力充電器) があり、それぞれで充電時間、設置スペース、電源設備などが異なります。EV急速充電器の電源は「3相200V」を使用することが一般的です。また、電気のみで走行する「電気自動車(EV)」と電気を中心にガソリンも補助的に燃料として活用する「PHV(プラグインハイブリッド自動車)」は基本的に同じ充電器が使用できます。ただし、普通充電と急速充電では電力を供給する仕組みが異なるため、ほとんどの電気自動車(EV)にはそれぞれの充電口が備わっています。
普通充電と急速充電の違い
普通充電器とEV急速充電器の違いについて解説します。比較すべき項目としては、「充電場所(設置場所)」と「充電時間」、「価格」が挙げられます。それぞれを一覧表でまとめました。
■普通充電器、EV急速充電器の違い
項目 | EV普通充電器 | EV急速充電器 | |
---|---|---|---|
電源の種類 | 交流電源 | 直流電源 | |
充電設備 | 100Vコンセント | 200Vコンセント | エンジン |
出力 | 0.6~1.2kw | 3.2~6kw | 50kw以上 |
充電場所 【プライベート】 |
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ほとんどない |
充電場所 【パブリック】 |
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充電時間 【航続距離160km】 |
約14時間 | 約7時間 | 約30分 |
充電時間 【航続距離80km】 |
約8時間 | 約4時間 | 約15分 |
一般的な価格 | 数千円程度 | 数十万円程度 | 1,000万円以上 |
上記はあくまで一般的な数値ですが、設置場所や充電時間、導入費用(イニシャルコスト)で大きな差があることが分かります。また、普通充電器は自宅などの「拠点充電」、EV急速充電器は目的地に向かう途中の施設での「経路充電」が主な用途となります。普通充電よりも急速充電器の方が大きいため、設置スペースもより広く確保する必要があります。それぞれの違いについて詳しく確認していきましょう。
普通充電でかかる充電時間
まず、電気自動車(EV)の充電時間は普通充電・急速充電だけでなく、車の「航続距離によって異なります。航続距離は1回で走れる距離の限界のことで、一般的に電気自動車(EV)の航続距離は、フル充電で走れる距離です。航続距離が長い車種ほど、フル充電するには多くの時間を要します。前述した表を参照すると普通充電に必要な充電時間は、80kmを走るためにおおよそ8時間。160km走るためには、およそ14時間かかることが分かります。あくまで理論値ではありますが、200Vの普通充電器であれば、必要な時間を半分にできますがそれでも外出先でたっぷり充電することは難しいといえるでしょう。そのため、普通充電器の主な設置場所は戸建てやマンションであり、車庫などに電気自動車(EV)を格納している間に時間をかけて充電する「家充電(拠点充電)」が一般的です。
急速充電でかかる充電時間
急速充電の所要時間は「1回最大30分」が目安とされています。最大時間まで充電すれば、およそ160kmの走行が可能になり、15分でも航続可能距離は80kmです。EV急速充電器は、普通充電器と比べると充電時間が非常に短いのが最大の特長といえます。ただし、高出力での充電による負荷の軽減、発熱防止のため、電気自動車(EV)に搭載しているバッテリーの種類によっては、満充電に近づくほど受入電力を抑える特性を備えているうえ、受入最大電力によって同じ時間に同じ出力で充電しても充電量が異なるケースがあります。さらにEV急速充電器は公共の場で充電されることが多いので、混雑を避けるために30分経過したら自動で充電が停止する機能が備わっているEV急速充電器もあります。
EV急速充電器のメリット
EV急速充電器が普及することは、電気自動車(EV)の所有者にとってさまざまなメリットがあります。また、設置者においてもメリットがあるので併せて紹介します。
電気自動車(EV)の所有者のメリット
EV急速充電器が普及することで利用者が得られるメリットは、電気自動車(EV)の利便性がさらに向上することです。電気自動車(EV)の大きな課題の一つが、ガソリン自動車と比べたときの航続可能距離の短さです。ガソリン自動車の航続可能距離が1000kmを超える一方、電気自動車(EV)は最大400km程度であることが多く、長距離ドライブをする際には充電する機会が増えると考えられます。また、いわゆる「経路充電」の場合、普通充電器のように長時間かける充電よりも、30分で160km程度の充電が可能なEV急速充電器の需要が高くなると予測できます。給油並みのスピードの実現は難しいものの、駐車場や商業施設などの経由地にEV急速充電器を設置することで、買い物や休憩時間に電力をこまめに補給できる環境が構築できるでしょう。そうなれば、電気自動車(EV)の利便性が向上し、ガソリンよりも低コストかつストレスなく使用しやすくなります。
EV急速充電器を設置するメリット
目的地や経由地にEV急速充電器を設置すれば、設置者は大きく2つのメリットが得られると考えられます。1つめは「収益源の確保」です。EV急速充電器の利用者から「充電サービス料金」などを徴収する課金システムを構築すれば、駐車場であれば「駐車料金+充電サービス料金」、商業施設であれば「商品の売上高+充電サービス料金」といった新たな収益源を加えることができるでしょう。さらにEV急速充電器での充電を目当てに、商業施設や駐車場を経由地や目的地に設定する人が増えることも考えられます。このようにEV急速充電器を設置している施設としての宣伝効果や集客効果も期待できるでしょう。
EV急速充電器のデメリットと注意点
メリットと同じように、EV急速充電器には利用者と設置者にとって普通充電器にはないデメリットや注意点があります。まず、利用者にとっての注意点は「バッテリーの劣化」です。急速充電によって大量の電力の供給を受けると、バッテリーが高温になり、その熱で劣化してしまうリスクが高まるのです。特に高速道路の走行でただでさえバッテリーが熱を持っている状況のうえ、立ち寄ったサービスエリア(SA)などですぐに急速充電してしまうと、より負荷が大きくなると考えられます。ただし、バッテリーも飛躍的に進化しているため、最近のモデルであればその影響は小さくなっています。設置者にとっても、EV急速充電器を設置する際は普通充電器よりもイニシャルコストが高めなうえ、機器や電源設備の設置スペースを確保しなければならないというとういデメリットがあります。さらに課金システムなどのランニングコストも発生します。これらのメリットとデメリットを考慮し、補助金なども活用しながら「長期的な視点でどれだけ利益を得られるか」がEV急速充電器の導入の可否を判断する重要なポイントといえるでしょう。
EV急速充電器の種類・機能
EV急速充電器には、出力、規格などさまざまなポイントで複数の種類に分類できます。また、それぞれ機能も異なるので、設置する際はベストなものを選ぶ必要があります。代表的なEV急速充電器を紹介します。
EV急速充電器の種類
EV急速充電器の代表的な規格は大きく4種類あります。日本で最も普及しており、主要な日本のメーカーが準拠しているのが「CHAdeMO方式」です。そのほか中国が主体となっている「GB/T方式」、欧米主導の「CCS」、テスラ社の独自充電規格「スーパーチャージャー」などがあります。CHAdeMO方式は、他の充電規格と比べると高出力化に課題がありましたが、近年は高出力のEV急速充電器の開発・販売も活発化しています。日本に充電スポットを設置するのであれば、CHAdeMO方式の充電器が最も無難な選択肢といえるでしょう。
EV急速充電器の機能
サービスエリア(SA)などに設置されているEV急速充電器(パブリック充電)の多くは、ICカードを操作パネルにタッチして利用できるタイプが主流となっています。利用者が事前登録した月額制のサービスで利用できるので、現金などを用意する必要がありません。設置者にとっても、現金の管理を行う必要がないのでより効率的に管理できます。また、各社により使用方法は異なりますが、携帯電話やスマートフォンで登録を行い、一時的に利用可能なパスワードを発行してもらい、それを充電器に入力することが基本となります。支払いについてはクレジットカードが基本となっています。
EV急速充電器の容量
一般的にEV急速充電器は50kw程度の電力を共有できる充電器の総称であり、出力される電力には機器によって差異があります。 例えば、道の駅やコンビニに設置されているEV急速充電器は20~30kw程度しか出力できないタイプが多い一方、90kw以上の高出力タイプも提供されています。
EV急速充電器の設置場所
EV急速充電器の容量は、利用人数と滞在時間、設置スペースによって最適な種類が異なります。例えば、ファーストフード店やコンビニなどの滞在時間が短く利用人数も少人数が多い施設では、20~30kwのEV急速充電器を設置するケースが多いです。一方、観光地の駐車場、大型商業施設など大人数で滞在時間も比較的長めな場所では、1機で2台の車を充電できるような大容量のEV急速充電器が適しています。
ベストなEV急速充電器を導入しましょう
EV急速充電器にはさまざまな規格や種類があり、供給できる電力量も異なります。運用し続けることで得られる利益が設置する際のイニシャルコストを上回るためには、事前に利用予測と計画を立てる必要があるでしょう。