電気自動車(EV)の充電にかかる時間、料金はどれくらい?一回の充電で走れる走行距離も解説
電気自動車(EV)の普及拡大において「充電時間」と「電気料金」は、非常に重要な要素です。ガソリン車と比較した際、時間や料金に優位性があれば今後、ますます電気自動車(EV)のシェアが拡大し、施設や駐車場に充電器を設置するメリットが大きくなるでしょう。そこで今回の記事では、電気自動車(EV)の一般的な充電時間や航続距離、ガソリンとの料金の差額について解説します。
電気自動車(EV)の充電時間はどれくらい?
電気自動車(EV)の充電時間は「充電方法」によって異なります。主要な充電方法は「普通充電」と「急速充電」の2種類がありますが、いずれもガソリン車と比べるとより多くの時間を要することが一般的です。また、電気自動車(EV)に搭載されているバッテリーの種類によっても、フル充電できる電力量が異なるため、同じ充電器を使ったとしても充電時間に差が生じるケースがあります。
充電時間の計算方法
電気自動車(EV)の充電時間は「充電量(kWh)÷充電器の出力(kW)」で求めることができます。
・充電時間(h)=充電量(kWh)÷充電器の出力(kW)
充電量は電気自動車(EV)に搭載されている「バッテリー容量」であり、充電器の出力はコンセントや普通充電器、EV急速充電器の性能に依存します。それぞれの違いを以下で確認してみましょう。
普通充電の場合
普通充電は3kW~6kWの出力で充電する方法で、自宅のコンセント(3kW)などを利用することが多いです。また、コンビニエンスストアなどに設置されている普通充電スタンドのなかには6kWのものもあり、「家充電」もしくは「基礎充電」と呼ばれることもあります。普通充電(3kW)を使用したときの40kWhと60kWhのバッテリーの充電時間の差は以下になります。
■自宅のコンセントでの充電時間
1.40kWh÷3kw=約13時間
2.60kWh÷3kw=約20時間
■6kWの普通充電スタンドでの充電時間
1.40kWh÷6kw=約6.5時間
2.60kWh÷6kw=約10時間
例えば、日産のリーフで採用されている40kWhのバッテリーでは、自宅のコンセントでは半日以上かかります。あくまで目安であり、車種や環境によって充電時間は異なりますが、基本的に普通充電は自宅など、まとまった時間を確保できる環境での使用に適していると考えられます。また、一般的に3kWの普通充電で30分充電すれば10km、6kW出力であれば20kmの走行が可能とされています。
急速充電の場合
急速充電はその名のとおり、普通充電器 (コンセント型・ポール型)よりも出力が高いため、充電時間を圧倒的に短縮することができます。一般的に出力が50kW以上の機器を指すことが多く、90kWを超える高出力EV急速充電器もあります。また、小型化による汎用性を高める代わりに、出力が控えめになった20~30kWのEV急速充電器も提供されています。40kWhのバッテリーを搭載した電気自動車(EV)のそれぞれの充電時間は以下となります。
1.20kWのEV急速充電器の充電時間 40kWh÷20kW=約2時間
2.50kWのEV急速充電器の充電時間 40kWh÷50kW=約0.8時間
3.90kWのEV急速充電器の充電時間 40kWh÷90kW=約0.4時間
EV急速充電器の充電は、普通充電と比べて大幅に充電時間が短縮できます。充電時間はバッテリー容量と充電器の出力に影響されますが、特に大きな影響を与えるのは「充電器の種類と性能」です。50kW出力の急速充電であれば、普通充電の4分の1程度(約5分)の充電時間で倍以上の40kmを走行できる計算になります。
充電時間が短いことが優れているわけではない
充電時間だけに注目するとEV急速充電器の方が優れていると考えられますが、あらゆるシーンで優位性があるわけではありません。例えば、出力が増えるほどバッテリーに負荷が大きくかかり、熱によって劣化してしまうリスクが高まります。 また、実際は電気自動車(EV)をフル充電する機会はそこまでなく、バッテリーへの負荷を考えると80〜90%程度の充電に抑えることを推奨するケースもあります。この場合は充電すべきバッテリー容量(kWh)が減るため、充電時間も理論値ほど必要なくなると考えられるでしょう。 自宅や近所の商業施設、コンビニエンスストアであれば小まめに充電したり、夜間に自宅で充電すれば、充電時間を短縮する必要性も少なくなります。普通充電器 (コンセント・ポール型)、EV急速充電器は「ケースバイケースでの使い分け」が大切で、充電器を設置する際も「ニーズに合った充電器」を選びましょう。
急速充電はどこでできる?
急速充電は自宅や近隣施設だけではなく、移動途中での充電「経路充電」もしくは一時的な滞在先である「目的地充電」を目的に設置することが一般的です。そのため、普通充電器が設置される「プライベートエリア」だけでなく「パブリックエリア」に適しているのが特長といえます。
■経路充電のパブリックエリア
(例) ・高速道路のサービスエリア、パーキングエリア ・道の駅 ・観光地の駐車場
■目的地充電のパブリックエリア
(例) ・ホテルなどの宿泊施設 ・レジャー施設 ・大型商業施設 経路充電は主に駐車時間の目安が30分以下、目的地充電は2時間以上であることが多いです。
電気自動車(EV)の一回の充電にかかる料金
電気自動車(EV)の充電にかかる料金は、大きく自宅のコンセントを利用する「家充電」と外部の充電器を使う「外充電」で異なります。家充電は1回あたり数百円程度でフル充電が可能です。外充電は公共の充電スポットを利用することが一般的で、充電時間に応じて料金がかかる「時間課金制」で支払うケースが多いです。また、カードを発行しなければならないため、月額基本料金+充電料金(時間課金)の合算を支払わなければなりません。月額料金は数百円~1万円程度と幅があり、高額なプランであるほど充電料金が安くなります。さらに充電器を導入する事業主にも課金システムの利用料などでランニングコストが発生することも覚えておきましょう。
一回の充電で走れる走行距離は?
一回の充電で走れる走行距離のことを「航続距離」といいます。航続距離が長いほど、充電の回数が減り、遠距離・長時間のドライブがしやすくなります。従来の電気自動車(EV)はガソリン車と比べると、走行距離の短さがデメリットでしたが、近年はバッテリー性能の向上により、多くの車種が1回の充電で200km以上、走行できるようになっています。一般ユーザーの日常運転の距離は平均30km程度なので、多くの人にとっては使いやすい状況になっているといえるでしょう。
※出典:一般社団法人「次世代自動車振興センター」
http://www.cev-pc.or.jp/what_ev/distance/
ニーズにマッチした充電器を導入しましょう
電気自動車(EV)の普及率が向上するほど、EV急速充電器による「経路充電」のニーズも高まると考えられます。EV急速充電器を設置することで充電料金を得られるほか、集客・広告宣伝効果も狙えるため、今後は導入を検討する事業者も増えると予測できます。ただ、EV急速充電器は設置スペースの確保や収益と導入コスト・運用コストのバランスの考慮など、考慮すべきポイントがたくさんあります。そのため、まずは信頼と実績が豊富な業者に相談しながら進めていく必要があるでしょう。