日本での電気自動車(EV)の普及率は?今後の動向予測もあわせて解説
近年、世界規模で注目が高まっているのが「電気自動車(EV)」です。日本でも販売台数が増加しているため、一度は見たことがある方もいるのではないでしょうか。電気自動車の普及は消費者や生産者だけの話題でなく、「急速充電器」などを設置することで、店舗や施設などの集客や顧客満足度向上も図れます。
そこでこの記事では、今後、自動車産業の中心になる可能性がある電気自動車の基礎知識と現状・課題、普及拡大に必要なインフラについて解説します。
電気自動車(EV)とは?
電気自動車とは電気を動力源として走る乗用車のことを指します。日本ではEVと称されることも多いですが、本来の「EV(Electric Vehicle)」は電気で動く乗り物の総称であり、広義の意味ではバスなども含まれることを覚えておきましょう。電気自動車は、今も自動車産業の中心である「ガソリン自動車」からの代替が期待されています。そのため、まずはガソリン自動車との違いを把握することが、電気自動車の理解を深めるためには大切です。
◆電気自動車の種類別の違い
電気自動車 | ガソリン自動車 | |
---|---|---|
利用する燃料 | 電気 | ガソリン |
動力に変換する仕組み | モータ | エンジン |
二酸化炭素 | なし | あり |
航続距離(比較) | 短い | 長い |
税金(比較) | 安い | 高い |
補給場所 | 充電器、充電ステーション | ガソリンスタンド |
電気自動車(EV)の種類と特徴
電気自動車以外でも電気を動力源として利用する自動車の種類として、HV(ハイブリッド自動車)、PHV・PHEV(プラグイン・ハイブリッド自動車)車が挙げられます。それぞれ「エネルギー」と「エネルギーを動力に変換する仕組み」が異なります。
■電気自動車の種類別の違い
電気自動車 | ハイブリッド自動車 | プラグイン・ハイブリッド自動車 | |
---|---|---|---|
利用する燃料 | 電気 | 電気とガソリンの併用 ※メインはガソリン |
電気とガソリンの併用 ※メインは電気 |
動力に変換する仕組み | モータ | モータとエンジン | モータとエンジン |
二酸化炭素 | なし | あり ※ガソリン車より少ない |
あり ※ガソリン車より少ない |
航続距離(比較) | 短い | 長い | 長い |
税金(比較) | 安い | ガソリン車より安い | ガソリン車より安い |
補給場所 | 充電器、充電ステーション | ガソリンスタンド | ガソリンスタンド、充電器 |
ハイブリッド自動車は、モータを搭載したガソリン自動車という位置付けであり、電気自動車のようにエンジンで発電することはありません。走行中に余った力を利用して発電し、コツコツと貯めたうえで「発信・低速時」にEV走行するなどの仕組みが電気自動車と大きく異なるポイントです。また、あくまでガソリンがメインのため、電気自動車のように充電器や充電ステーションは利用できません。 プラグイン・ハイブリッド自動車は、HVハイブリッド自動車と同じくガソリンと電気の両方をエネルギーとして利用します。ただ、電気をメインの燃料として、ガソリンは補助的な利用に留まります。また、電気自動車と同じように外部からバッテリーを充電できるのも特徴です。
電気自動車(EV)のメリット・デメリット
電気自動車は他の種類の車と比べると、メリット・デメリットの両方があります。メリットを活かし、デメリットを改善することが電気自動車の普及の鍵を握るでしょう。
社会的なメリット:環境に優しい
社会的なメリットとしてまず挙げられるのが、電気自動車はガソリン自動車と比べると環境に優しい自動車ということです。二酸化炭素の排出がゼロのため、地球温暖化などの対策として有効であり、エコな車として注目が集まっています。
消費者のメリット:乗り心地が快適でランニングコストが優れている
電気自動車は、バッテリーとモータのみで走行できるためガソリン自動車のように稼働時の音や振動がほとんど発生しません。加速もスムーズで走行音も静かなため、車内でより快適に過ごしやすくなるでしょう。また、燃料費も電気代のみでガソリン代よりも安くなりやすく、補助金や減税が適用されるのでイニシャルコストの削減も図れます。
電気自動車(EV)のデメリット
電気自動車のデメリットには家庭での充電の時間がフル充電だと7~15時間かかるうえ、放電により車に乗らなくても残量が減少することが挙げられます。また、充電ステーションの数もガソリンスタンドと比べると非常に少ないので、利便性においてはガソリン自動車の方が優れているといえるでしょう。さらに補助金があるとはいえ車両価格がガソリン自動車と比べると高めであることも、デメリットの1つです。
海外での電気自動車(EV)の普及動向
電気自動車の普及拡大は、中国や欧米諸国がけん引しています。経済産業省が作成した「第4回 モビリティの構造変化と2030年以降に向けた自動車政策の方向性に関する検討会 参考資料 」によると、電気自動車の販売比率は2021年時点で欧州が16.7%、中国が15.9%と2%未満だった2018年からわずか3年で急速に拡大していることが明らかになっています。さらに各国は自動車の「電動化(EV・PHEV・FCV)」の目標を立てるとともに、ガソリン車の規制も強化する方針です。 今後はこれらの政治的な背景の影響もあり、さらに電気自動車の普及は加速すると考えられます。
■主要国・エリアの電動化目標
主要国 | ガソリン車 | EV・PHEV・FCV | 市場規模 |
---|---|---|---|
イギリス | 2030年販売禁止 ※HV/PHEVは2035年販売禁止 |
2030年販売目標EV:50~70% | 270万台 |
フランス | 2040年販売禁止 | 2028年ストック台数目標EV:300万台:PHEV:180万台 | 280万台 |
中国 | 国の目標はなし | 2025年販売目標EV・PHEV・FCV:20% | 2580万台 |
ドイツ | 国の目標はなし | 2030年ストック台数目標EV:1500万台 | 400万台 |
EU | 2035年販売禁止 ※実質PHEV/HV含む内燃機関廃止 |
2035年販売目標EV・FCV:100% | 1400万台 |
米国 | 国の目標はなし ※カリフォルニア州知事:2035年EV・FCV100% ※ニューヨーク州知事:2035年EV/FCV100% |
2030年販売目標 EV・PHEV・FCV:50% | 1750万台 |
日本の電気自動車(EV)の普及率は低調傾向
世界各国で電気自動車の普及率が高まるなか、日本は低水準が続いていることが課題に挙げられています。販売比率の差を確認してみましょう。
■主要国・エリアと日本の電気自動車の販売比率の比較
元々、電気自動車の普及率が低調だったことに加え、2020年に世界的に流行した新型コロナウイルス感染症の影響を受けた各国の優遇策強化に乗り遅れたことが、販売比率の差が拡大した大きな要因と考えられています。
日本でも電気自動車(EV)の拡大の動きが強まる
2022年現在、電気自動車の普及率のトップ国や地域とは大きく差が開いています。ただ、日本も国を挙げて電気自動車の普及に取り組んでおり、2035年に「電動(EV/PHEV/FCV/HV)」を100%にするため、2030年にはEV・PHEVを20~30%、FCV(燃料電池自動車)を~3%まで販売比率を高める目標を掲げています。このような背景もあり、東京都は2030年までに都内で販売される新車をすべてハイブリッド自動車や電気自動車に切り換える方針を示すなど、具体的な施策の実施も始まろうとしています。また、トヨタは25年ごろまでに全新車 に電動車の機能を設定することを明らかにするなど、自動車メーカーの動向も積極的になっていることが伺えます。
脱ガソリン自動車が広がる背景
日本を含めた世界中で急速に脱ガソリン自動車が広がる背景には、「脱炭素社会(カーボンニュートラル)」が大きく関わっています。脱炭素社会とは、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出量から森林などによる吸収量を差し引いて「実質ゼロ」になった社会を指します。「2050年カーボンニュートラル」という120ヵ国以上が取り組む世界共通の目標を実現するためには、二酸化炭素を排出するガソリン自動車を脱却し、環境に優しい電気自動車の普及を拡大する必要があるのです。日本も2020年10月、カーボンニュートラルを目指すことを政府が宣言しました。また、自動車産業のカーボンニュートラル実現に向けた経済対策も打ち出しています。
■経済対策パッケージ
目的 | 予算 |
---|---|
蓄電池の国内製造基盤確保 | 2021年度補正予算:1,000億円 2022年度当初予算:15億円 |
電気自動車、燃料電池自動車等の購入補助 | 2021年度補正予算:250億円 2022年度当初予算:140億円 |
サプライヤー、販売・整備業の構造転換支援 | 2021年度補正予算:125億円 2022年度当初予算:90億円 |
充電、水素インフラの整備 | 2022年度当初予算:4億円 |
※出典:経済産業省「第4回 モビリティの構造変化と2030年以降に向けた自動車政策の方向性に関する検討会 参考資料」政府はこれらの予算を投じ、2030年の目標である2030年にはEV・PHEV:20~30%、FCV(燃料電池自動車)~3%を図る方針です。
日本国内における電気自動車(EV)普及の課題
さまざまな施策が実施されていますが、実際はどのような問題が日本の電気自動車の普及率の向上を妨げているのでしょうか。その代表的な例を確認してみましょう。
充電ステーションなどのインフラ
電気自動車の利便性の大きな障壁となっているのが「充電インフラの整備不足」です。 経済産業省の資料によると、2017年時点で公共EV充電器の導入台数は日本は3万台 だったのに対し、中国は21.3万台、米国は4.5万台と大きく差があります。 ガソリンスタンドの数と比べると非常に少ないため、設置台数を増やす必要があるでしょう。
■充電器の種類と目的
目的 | 概要 | 充電器の種類 |
---|---|---|
基礎充電 | 通勤や買い物のこまめな充電や日常移動で活用 | 普通充電器 |
目的地充電 | レジャー・ドライブなどの目的地や施設で充電する | 急速充電器 |
立ち寄り充電 | 長距離移動中の休憩場所での充電。 より早く充電が完了する必要がある |
大出力急速充電器 |
また、マンションなどの集合住宅でもEV充電設備を配備しやすいように、法規制の緩和なども求められます。このような状況を改善するため、政府は2030年までに急速充電器を3万基・普通充電器を12万基整備する方針を示しています。
車両本体の価格
電気自動車の価格がガソリン自動車と比べると高いことも、普及の拡大に大きな悪影響を与えている理由の1つです。そこで政府は補助額を拡大することでガソリン自動車からの乗り換えを促しました。
■購入補助予算
概要 | 充電器の種類 | 2021年度補正予算 | |
---|---|---|---|
車別 | ベース | ベース | 条件付き |
EV | 40万円 | 65万円 | 85万円 |
軽EV | 20万円 | 45万円 | 55万円 |
PHEV | 20万円 | 45万円 | 55万円 |
FCV | 225万円 | 230万円 | 255万円 |
走行可能距離
電気自動車がフル充電した場合の(航続距離)は200~600kmとされています。メーカーや車種によって差はありますが、ガソリン自動車の航続距離は満タン給油でおよそ600kmで1000km走れる車も珍しくありません。充電ステーションの少なさも考慮すると、長距離ドライブに不安を感じる人も少なくないのではないでしょうか。ただし、技術革新によって蓄電量などが改善されることで、より使いやすくなる可能性は十分にあるでしょう。
充電ステーションの設置が電気自動車(EV)の普及のカギ
日本と世界の電気自動車の普及率について解説しました。現在、国や自治体を上げてさまざまな取り組みが行われています。そのなかでも、ガソリン自動車と同じように電気自動車を利用できる環境の構築には「充電ステーション」や「充電器」の増設、整備が欠かせません。カナデンは急速充電器をより多く設置することで、電気自動車の普及率の向上に貢献していきます。