製造業におけるIoTとは?データの見える化のメリットから導入ステップまでを解説

公開日:2024.12.26 更新日:2024.12.26

IoT

IoTとは「Internet of Things」の略で、さまざまなモノをインターネットに接続する情報通信技術を指します。近年では、働き方改革や新たな価値創出が求められる背景から、IoTを推進する企業が増えてきました。特に製造業は、IoTの導入が進んでいる分野の一つです。 この記事では、IoTの概要と活用法、企業がIoTでデータを「見える化」するメリット、製造業における導入ステップを解説します。

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IoTとは?

最近では、一般家庭や街中、産業などの至るところでIoT技術が活用されています。まずはIoTの概要を見ていきましょう。

IoTの概要

従来のインターネットといえば、パソコンやスマートフォンから接続する技術でした。IoTではこの範囲を広げ、産業や日常生活におけるあらゆる製品をインターネットに接続し、活用できるようにしています。

生活の中では、家電製品や電子機器、自動車などにIoT技術が搭載されることが増えました。例えば、以下のような機能を持つIoT家電が登場しています。

エアコン

外出中にスマホで起動操作ができる

冷蔵庫

中身を自動で撮影し、開けなくても画像で食材を確認できる

ロボット掃除機

離れた場所からスマホで操作し、掃除のスタート・ストップやコースを設定できる

スマートスピーカー

声によってハンズフリーで操作し、ニュースを流したり家電を操作したりできる

産業において、IoTは機械や電子機器、駆動装置などの分野に活用されています。例えば、電力・ガス・水の使用量のデータ化による省エネルギー推進、無人生産設備の監視などが可能になります。

製造業におけるIoT

近年では政府の後押しもあり、働き方改革やDX化が推進されるようになりました。生産設備にIoT技術を導入することで、人間が行っていた作業を機械に代替したり、従業員の手間を大幅に減らしたりすることが可能です。そのため、IoTは働き方改革と相性の良い技術といわれています。

多くの先進国では、製造業の競争力を高めるためにデジタル技術の導入を進めています。産業におけるデジタル化で先陣を切ったのはドイツです。ドイツ政府は2011年に「インダストリー4.0」を発表し、いち早く製造業へのIT技術の導入を進めてきました。その後アメリカや中国も国家レベルでのDX化を進め、日本でも2015年に「IoT推進コンソーシアム」が設立されました。

こうした背景もあり、IoTは一般家庭のみならず、産業向けとして著しく発達しています。特に、製造業は他業種と比べてIoT技術の導入が進んでおり、さまざまな現場で活用されています。

製造業において、IoTやAIなどのデジタル技術を導入した工場を「スマートファクトリー」と呼びます。特に、生産工程のあらゆるデータを可視化できることは、スマートファクトリーの大きなメリットです。

スマートファクトリーでは、センサーやカメラから得た膨大なデータを分析して活用します。これにより、生産性の向上や省エネルギー化、新たな価値創出、競争力の強化などが実現できます。

製造業のIoT化で実現できること

製造業のIoT化

製造業にIoTを導入すると多くのメリットを享受できます。ここではその一例を見ていきましょう。

生産管理

工場のIoT化によって得られるデータは多岐にわたります。例えば、製造ラインにセンサーを取り付け、設備の稼働状況を自動的に監視することが可能です。センサーから収集したデータを分析すれば、生産過程のボトルネックとなっている部分を特定し、改善計画を策定できるでしょう。

各拠点やサプライチェーンから収集したデータは、本社などで一元管理することができます。その分析結果と改善案をサプライチェーン全体で共有することで、さらなる合理化が期待できます。

設備点検や故障の早期発見

IoTを活用すると「予防保全」を徹底することが可能です。予防保全とは常日ごろから検知など異常点検をしていることです。機械設備から継続的にデータを収集するため、トラブルの予測または早期発見ができます。

予防保全を行うことで、突発的に機械が故障して作業が止まる、大規模な修理が必要になるといったリスクが減るでしょう。結果としてメンテナンスコストの削減にもつながります。

データ活用による生産性改善

製造業におけるIoT化の大きなメリットは、データを可視化できることです。収集したデータは、製品の品質や納期管理、コスト管理、安全性向上などさまざまな面で役立ちます。

また、データを分析することで、企業にとって新たな価値を創出することも可能です。各拠点が持つ強みと弱みを洗い出し、強みは伸ばして弱みは改善することがポイントです。そして強みをさらに深掘りすれば、革新的な商品やサービスを生み出すこともできるでしょう。

人的コストの削減

工場のIoT化を進めると、人的コストを削減できることも大きな魅力です。IoT技術の導入によって、設備保全や品質管理などの業務、また定型的なルーティンワークなどは自動化できます。こうした業務を省人化することで、人件費を削減できるでしょう。

また、保全業務に関しては、各拠点の産業機械や駆動装置の稼働状況を、一つの拠点から一元管理が可能です。異常検知システムを活用すると常に無人で監視でき、異常時は自動アラートを発してくれます。これらの機能によって、トラブル発生が疑われる際に遠隔地から従業員が駆けつけるケースも減るため、移動コストも抑えることができます。

そのほか、あらゆる業務をデジタル化・自動化することで、ペーパレス化につながることもIoTのメリットの一つです。紙や筆記用具を使わないことで、事務用品費を削減できます。

音声操作による生産支援

IoT機器はセンサーやカメラ、マイク、スピーカーを搭載しており、デバイスごとにさまざまな機能を備えています。中でも、音声で操作できるデバイスや、体に直接装着して操作するウェアラブルデバイスは便利で、製造業の可能性をさらに広げるでしょう。

例えば、産業用スマートグラスがこれに含まれます。スマートグラスは顔に装着するメガネ型のウェアラブルデバイスです。ボタン操作やタッチ操作が不要な完全ハンズフリーで、声のみで操作できます。そのため、作業の手を止めずに利用できることがメリットです。

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製造業でデータを見える化するメリット

製造業におけるIoT化の大きなメリットは「データの可視化(見える化)」です。ここでは、データの可視化によって得られる効果を見ていきましょう。

収集データの活用

工場にIoT技術を導入することで、生産過程のデータを収集・分析し、現場を見える化することができます。具体的には、センサーで工場の稼働状況を24時間365日監視する「センシング技術」を用いた手法などが挙げられます。

センサーから得られるデータには、設備機器の稼働状況、電力・ガス・水などのエネルギー使用量、製品の品質状態、そして現場の労働生産性などがあります。特に労働生産性のデータを活用すれば、業務効率化や労働環境の改善も実現できるでしょう。

品質向上・安定化

IoT技術によって、製品の品質を高めることも可能です。従来の製造ラインでは、人の目によって検品を行うことが一般的でしたが、現在はカメラやセンサーによって自動的に欠陥を検出することが可能になりました。機械が検品作業を担うことで、人間が行うよりも正確かつ安定したチェックができます。

近年では、AI・深層学習による画像分析も浸透しつつあります。AIを活用することで、より精度の高い品質管理ができると期待されています。

また、IoT化によって各拠点やサプライチェーン全体のデータを一元管理できるため、トラブル発生時の原因を究明しやすくなりました。もし不良品や製品の欠陥が見つかった場合も、迅速に原因を突き止め解決できるでしょう。

自動化による生産性向上

あらゆる工程を自動化できることもIoT化のメリットです。これまで人間が行っていた業務を機械が担い、従業員を他のコア業務に充てることができれば、製品開発力の向上につながります。また、自動化・省人化によって人為的ミスが減るため、コストの損失も最小限に抑えることができるでしょう。

さらに従来の設備保全業務は、熟練した従業員の経験に頼ることが少なくありませんでしたが、製造業でも人手不足・後継者不足が大きな課題です。こうした業務をIoT化することで、属人化を防ぎやすくなり人手不足にも対処しやすくなります。

そのほか、画像解析による不良品の発見、スタッフや施設の安全管理、需要予測による出荷量管理などの機能を活用できます。さらにAIを導入すれば、より正確性の高い分析も可能です。

製造業におけるIoT導入のステップ

製造業の企業がIoTを導入するにあたって、データ選定・収集・蓄積・可視化・利活用という5つのステップを踏む必要があります。

収集するデータの選定

製造業でIoTを効率的に活用するには、収集するデータの選定が重要です。収集すべきデータは目的によって変わります。例えば、生産効率の向上が目的なら従業員の行動履歴や位置情報、コスト削減なら在庫情報、品質管理の強化なら画像データや環境情報などが挙げられます。また、集めたいデータによって必要になるセンサーやシステムも変わるので、最初に決めておきましょう。

データの収集

まずデータ収集できる環境を整えることが必要です。データの収集は、生産設備にカメラやセンサーデバイスを設置して実施します。最初から大規模なシステムを導入することは大きなリスクであるため、PoC(Proof of Concept:概念実証)と呼ばれる検証プロセスで、導入効果が得られそうかを確かめながら、徐々に適用範囲を広げる方法が一般的です。生産設備のデータ収集によって、遠隔地からでも機器の稼働状況や、製品に関するデータを取得でき、さまざまなIoTソリューションで活用できます。

データの蓄積

収集したデータを保管・管理することも必要です。近年はクラウド環境で管理し、社内の各部署で閲覧や活用できるIoTソリューションが増加しました。リアルタイムで情報を更新でき、より精密な情報収集が可能になるでしょう。インターネットにつなげる都合上、機密性の高いデータを安全にやりとりするセキュリティ対策も必要です。

データの可視化

IoTで収集できるデータは複雑で、種類も多い場合がほとんどです。そのため、あらゆるデータの統計をまとめ、数値やグラフによってわかりやすく可視化することが求められます。タブレット端末などで、生産実績の記録や自動取得したデータを閲覧できるようにするのがおすすめです。

なお、BIツールを使うことで、データをグラフやチャートの形式で可視化でき、実際に業務に携わる担当者でなくても、データを読み取りやすくなります。蓄積したデータのうち、どのデータを可視化するべきなのかは、IoTソリューション導入の目的によって異なることが多いです。

データの利活用

データの可視化によって製造プロセスの課題を発見しただけでは、企業の売り上げや利益につながりません。得られたデータを改善計画の策定に活かす必要があります。またIoTのデータは、リスク管理や経営戦略のベース、労働環境の改善など生産性改善以外にも活用可能です。データの利活用を推進するには、まずは見やすい画面づくりやインターフェイスを整備し、管理者や現場の従業員がデータを閲覧しやすくすることが大切です。

データの見える化からIoT導入をはじめよう

データの見える化

製造プロセスの課題解決につながるIoT導入には、綿密な計画性が求められます。データ選定・収集・蓄積・可視化・利活用の5ステップを意識し、改善プロセスに一貫性を持たせることがポイントになります。

あらゆるモノがインターネットにつながるIoTは、ビジネス分野の中でも特に製造現場で導入が進んでいます。スマートファクトリーでは、IoTによって収集したデータを生産性改善や設備のメンテナンス省力化につなげやすく、企業にとって売り上げや収益性の向上というメリットが得られるでしょう。

データの見える化に向け、様々なシステムやサポートを活用し、IoT導入を進めていきましょう。

※出典:日本公庫総研レポート「IoT時代にサービスで新たな付加価値創出に取り組む中小製造業」https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/soukenrepo_18_06_15a.pdf

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