異常検知とは?システム導入のメリットや生産現場での活用法
公開日:2024.12.26 更新日:2024.12.26
製造業においては、不良品を正確に検出したり、機械の故障を防いだりすることが業務効率に直結します。 こうした異常を自動で検出する技術が「異常検知」です。近年では、AIによって異常検知を行う手法も注目されています。この記事では、異常検知の概要やメリット、導入のために解決すべき課題、具体的な活用法をお伝えします。異常検知システムを活用し、業務効率化やリスクの低減を実現させましょう。
異常検知とは?
「異常検知」とは、大量のデータの中から異常を検出するシステムです。以下で詳しく見ていきましょう。
異常検知の概要
異常検知システムとは、蓄積されたデータと比較し、通常とは動きが異なるデータ(異常値)を自動で検出するものです。異常検知システムを用いれば、人が認識できない些細な異常や変化を察知することができます。
仕組みとしては、大量のデータを統計学やAIなどで分析する「データマイニング」の技術を利用しています。膨大な量のデータを検知するシステムであるため、AIや機械学習、深層学習と組み合わせるとより精度が向上します。
最近の異常検知では、さまざまな形式で保存されている非構造化データを用いることが多いです。例えば、メールや画像、動画、Webサイトのログなどがこの非構造化データにあたります。これらのデータを活用するためには、データ分析の専門知識や経験を持つ人材が必要となるでしょう。
異常検知の用途
異常検知システムが活用される具体的な場面としては、製造業における製品の品質管理や、製造プロセスにおける異常診断などが挙げられます。人が感知できない細かい異常も分かるため、例えば機械故障の前兆なども検出が能です。
そのほか、クレジットカードの不正使用の検知や障害検知、不審者の異常行動検知などに活用されています。こうした用途があることから、異常検知システムは「故障検知」や「不正使用検知」と呼ばれることもあります。
異常検知システムの種類
異常検知システムの設備のタイプには、「機械・設備監視型」「カメラ解析型」「異音検知型」などが存在します。
「機械・設備監視型」は、製造ラインの設備に取り付けたセンサーから得られるデータを基に、異常を検知するタイプです。センサーでは、画像や映像、音声などのデータを収集します。
「カメラ解析型」は、カメラが捉えた画像を活用して異常を検知するタイプです。AI画像解析を用いるものや、ネットワークカメラで捉えたリアルタイム映像と平常時の映像を比較した差分から判別するものなどがあります。AI画像解析を利用すれば、人の手を借りずに自動で異常を検知してくれます。
「異音検知型」は、マイクで捉えた音から異常を検知するタイプです。平常時の機械などの音(音圧や周波数)をしきい値に設定することで、異常時の音をリアルタイムで判別することができます。
異常検知の手法・異常検知の仕組み
異常検知では、「外れ値検出」や「変化点検出」といった手法が用いられています。
「外れ値検出」は、明らかな人為的ミスなど、全体のデータから大きく逸脱しているデータを検出する手法です。機械学習や深層学習によって過去のデータを学習させることで、より精度を高めることができます。
「変化点検出」は、時系列で継続的に収集しているデータの中で、急激にパターンが変化した部分を検知する手法です。例えばサイトのアクセス解析において、特定の検索ワードからの流入が増えた場合、その要因を正確に検知することができます。
ここでは具体的な仕組みとして、よく用いられる「統計手法(ホテリング理論)」「分類手法(LOF法)」「機械学習や深層学習」について解説します。
統計手法(ホテリング理論)
ホテリング理論は、異常検知の仕組みの中で最も代表的なもので、外れ値を検出することができます。ホテリング理論では統計モデルに基づき、対象となるデータの正規分布から大きく外れているデータを、異常として検知します。
しかし、正規分布や回帰モデルのパラメータが時系列で変化するような場合には対応できません。また、分布の山が複数発生した場合は、異常を検知できないことがあります。
分類手法(LOF法)
LOF(Local Outlier Factor)法は、「局所外れ値因子法」とも呼ばれる外れ値検知アルゴリズムの一種です。LOF法では、データの集積を空間の密度(局所密度)に置き換え、外れ値を見つけます。
2000年に編み出された歴史の長いアルゴリズムで、比較的シンプルな手法であることから、実装しやすさが魅力となっています。また、局所的なデータのみを使用して外れ値を判定するため、全体が複雑なデータにも対応できるというメリットがあります。
機械学習や深層学習
異常検知システムはAIと相性が良い仕組みとなっています。そのため機械学習や深層学習(ディープラーニング)をあわせて活用するのがおすすめです。近年では、AIによる画像分析技術を活用した異常検知システムも注目を集めています。
AIを導入すればある程度自動で異常検知が可能となるため、検査に割くヒューマンリソースや時間、コストを大幅に削減できると期待されています。特に製造業では、深層学習によって異常検知を行うケースが増えているのです。
製造業の現場では、製造プロセスにおける製品や部品の画像、動画データをAIに学習させることが一般的です。蓄積したこれらのデータを基に、不良品や機械の異常を判定します。
異常検知における機械学習では、「教師あり学習」「教師なし学習」「半教師あり学習」「強化学習」「生成モデル」といったモデルが用いられます。また、機械学習や深層学習を行う際、学習用サンプ多いほど精度が上がりやすいとされています。
機械学習や深層学習を導入したい場合は、数ある機械学習モデルについて熟知したうえで、異常検知に適したモデルを組む必要があります。そのため、AIや機械学習に精通した人材が求められるでしょう。
異常検知を導入する際は、AIや機械学習に精通した人材が求められるでしょう。
異常検知システム活用における課題
生産現場にとって異常検知システムの必要性は高まっていますが、導入にあたっては解決すべき課題もあります。ここでは、異常検知システムの課題をいくつかご紹介します。
大量の学習データが必要とされる
異常検知システムは、正常なデータと異常なデータを判別するために、大量のデータが必要です。学習用データは多いほど正確性が上がるとされているため、膨大な学習用データを用意しなければならないことは、手間がかかるポイントの一つでしょう。
誤検知のリスクがある
人力と比べるとかなり精度の高い異常検知システムでも、100%完璧に判定することは難しいといえます。システムの学習が足りない場合、データが少し変動するだけでも誤判定のリスクがあります。
例えば医療現場など慎重な判断が求められる現場では、最終的に人の目によるチェックが求められるでしょう。このような分野では、異常検知システムを導入するにあたり、十分に検討する必要があります。
異常値と判定されるしきい値の設定が難しい
異常検知システムの性能を発揮するためには、適切なしきい値の設定が重要です。しきい値の設定には、データの分布や異常データの割合を考慮し、誤検知(誤って異常と判断する)と見逃し(異常を見逃す)のバランスを取れた値を見つけることが重要です。
ただし、データが正規分布にならない場合や異常値の分散が大きい場合は設定の難易度が上がります。
システムを活用できる人材が必要
異常検知システム、特にAIや機械学習を導入したい場合は、専門知識や職務経験を持つ人材が不可欠です。
しかし、現在多くの分野でDX化が進むにつれ、それに対応できるデジタル人材が不足しています。異常検知システムを熟知した人材を確保できるかどうかは、システムの導入時はもちろん、継続的に運用するためにも重要なポイントです。
異常検知システム導入のメリット
異常検知システムの課題をいくつかお伝えしましたが、企業にとって異常検知システムを導入することで得られるメリットは多々あります。ここでは、そのうち4つのメリットについて見ていきましょう。
自動化による業務効率化
異常検知システムにチェック作業を任せて自動化することで、従業員によるチェック作業はほとんど不要となります。また、人の目でチェックするよりも、システムやAIがチェックする方が見落としが少ないうえ、スピードも速く効率的です。
その分、システムやAIにはできない作業や他の業務に人的リソースを集中させることができ、業務全体を効率化できるでしょう。
損失リスクの低減
異常検知システムを用いれば、異常をいち早く検出することができます。具体的には、不良品の発生や機械の故障などの早期発見が可能になります。また、異常の内容や対処法を迅速に割り出し、従業員へ伝達できる点も大きなメリットです。
これらのリスクを未然に防いだり、早期に対処したりすることで、企業の金銭的損失を最低限に抑えることができるでしょう。
人件費の削減
人間がすべての工程をチェックする場合、多くの従業員が時間をかけて監視する必要があります。ダブルチェックが必要となる場合は、単純計算で倍の人件費がかかります。さらに、ヒューマンエラーが発生した場合、無駄な作業が発生して人件費がかさんでしまうでしょう。
異常検知システムを導入することで、自動的に異常を検出することが可能となりました。これによって、チェックに割く人的リソースが減り、人件費を削減することが可能です。
ヒューマンエラーの防止
異常検知システムを導入する大きなメリットの一つは、ヒューマンエラーを防げることです。人の目だけで監視をする場合、従業員の経験値や体調などによって、クオリティーにムラが生まれてしまいます。そのため、どんなに気を付けても見落としや人為的ミスは防げません。
異常検知システムを利用すれば、24時間365日、一定レベルを維持した異常検知が可能です。人間とは異なり、体調などによってムラが生まれることもありません。また、AIや機械学習を活用すれば、さらに精度の高い異常検知も可能となります。
生産現場での異常検知活用法
ここからは、実際の生産現場において、異常検知システムが活用されている例を見ていきましょう。
活用法1 作業効率改善
製品の製造過程では、欠陥品を取り除くための対策が不可欠です。製造ラインにおいて異常検知システムを活用することで、素早く不良品を発見し、作業効率を改善することができます。
さらに、人間が一つずつチェックするより速く、確実な検査が可能です。精度の向上によって現在では、人の目では確認できなかった小さな不具合なども、画像分析によって発見できるようになりました。
活用法2 リスク軽減
工場など多くの機器設備を稼働させる現場では、異常検知システムを予知保全のために活用し、リスクを大幅に軽減できます。例えば、異音検知や電流モニターを行うことで、機器の故障を事前に予測できるのです。
従来のように機器が故障した後に対応すると、修理に多額の費用がかかる場合も少なくありませんでした。しかし、故障や劣化を事前に予測できれば、トラブルが起こる前にメンテナンスによって対応できることがあります。
このように予知保全を徹底することで、リスクの軽減のみならず、コスト削減や業務効率化も叶えることができます。
異常検知システムを適切に活用しよう
これまで人間の目で行っていたチェック作業では、見逃しや人為的ミスがしばしば発生していました。これらの作業を異常検知システムに置き換えれば、安定した品質で異常の検出が可能になります。
また、従業員の負担軽減や人的コストの削減、業務効率化、トラブルの防止など、異常検知システムには多くのメリットがあります。
特に、AIや機械学習、深層学習の機能を搭載した異常検知システムも増えています。最近では、大量のデータ分析を必要とするチェック業務をAIに一任している企業も少なくありません。こうした企業は今後も増えることが予測されます。競争優位性を保つためには、膨大なデータとAIを適切に活用し、異常検知システムを使いこなすことが重要です。
また、異常検知システムの導入にあたっては、少なからず誤検知のリスクがあることを忘れないようにしましょう。そのうえで、大量の学習データや、デジタル人材の確保に力を入れることをおすすめします。
カナデンでは、お客様のニーズに最適な異常検知システムの選定から導入後のアフターサポートまで、ワンストップでお手伝いいたします。最新のIoTやAI技術を活用したソリューション提案も可能です。異常検知システムについてお悩みごとがあれば、まずはお気軽にご相談ください。
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