工場セキュリティの課題とは?対策や事例を徹底解説
公開日:2024.12.26 更新日:2024.12.26
サイバー攻撃やセキュリティと聞くと、ITや金融系の企業に関わる印象が強いですが、製造業にとっても無関係ではありません。特に自社の工場を持つ企業では、近年進む工場のIoT化やDX化にともない、サイバー攻撃のリスクは高まっています。
今回は工場のセキュリティの向上に必要な製品やシステムについて、事例や導入のポイントとともにご紹介します。製造業の会社のITシステム部⾨や⽣産関係部⾨に携わる担当者は、ぜひ参考にしましょう。
工場セキュリティの課題とは?
産業制御システム(ICS/OT)をはじめとした従来の工場システムは、外部のネットワークに接続しないことを前提に設計されていました。しかし近年は⼯場のIoT化や⾃動化、DX化にともない、⼯場システムをインターネットに接続する機会が増加しました。その結果、サイバーセキュリティ上のリスクは増⼤したのです。
一方、インターネット接続の機会に乏しい⼯場であっても不正侵⼊者等による攻撃を受ける場合もあり、いかなる⼯場においてもサイバー攻撃を受ける可能性がある状況です。
セキュリティの脅威が工場システム及ぼす影響
工場システムがサイバー攻撃や不審者による操作を受けた場合、そのような影響があるのでしょうか。まずは製造業の⼯場で重視される5つの価値への影響が挙げられます。
- 安全確保(Safety)
- 事業・⽣産継続(Business Continuity)
- 品質確保(Quality)
- 納期遵守・遅延防⽌(Delivery)
- コスト低減(Cost)
また、工場システムや機器の正常動作ができなくなり、適正なフィードバック制御ができなくなる可能性もあります。
さらに被害が拡大すれば工場外に影響を及ぼします。製品や生産ノウハウに関わる情報やデータの外部漏えいは企業の信頼に関わる問題です。
自社工場の機器を踏み台にした、エンジニアリングチェーンやサプライチェーンの連携先へのセキュリティ問題の拡大も考えられるでしょう。
製造業の工場特有の事情
製造業の場合、以下で挙げる3点のようにITや金融業界と異なる状況を考慮しなければなりません。
- 一般的なデータの保護だけでなく、機器稼働などの維持や安全の確保が求められる
- 既存システムに対する段階的なセキュリティ対策の導入が必要になる
- 工場の規模や性質によって行うべき対策が異なる
上記に加えて、大規模な工場であれば従業員や車両の動きを常に把握し、不正侵入に備える必要もあるのです。以下で工場セキュリティを向上させるための具体例を紹介します。
※出典:経済産業省「工場システムにおけるサイバー・フィジカル・セキュリティ対策ガイドラインVer1.0」 https://www.meti.go.jp/policy/netsecurity/wg1/factorysystems_guideline_ver1.0.pdf
セキュリティ向上術① 入退管理システムの強化
一般的な工場では責任者など限られた人物だけがアクセスできる部屋が存在します。入退管理システムは、従業員や訪問者の出入りを管理し、許可された人物のみが特定エリアにアクセスできるようにすることで、不正な侵入や情報漏えいを防ぎます。主に、ICカードや指紋認証、顔認証といった認証技術を用いる点が特徴です。
入退管理システムの製品や機能
ある入退管理システムでは、高精度な認証技術を用いて、従業員の入退場をリアルタイムで管理します。例えば、ICカードを利用したアクセス制御に加え、指紋認証や顔認証を組み合わせることで、より高いセキュリティレベルを実現しています。システムの管理者は、各従業員のアクセス権限を細かく設定できるため、工場内のセキュリティレベルを柔軟に調整することが可能です。
別の製品では建物全体のセキュリティ管理を包括的に行うソリューションも提供されており、入退場の記録を詳細に残せます。工場の敷地内に複数の出入り口がある場合でも、すべてにおいて統一された管理が可能です。また、システムは監視カメラと連動しており、異常事態が発生した場合には迅速に対応できるよう設計されています。
入退管理システムのメリット
入退管理システムを導入するメリットとしては、不正侵入の防止が挙げられます。機密情報にアクセスできる工場システムの管理室を、許可された人物のみがアクセスできるエリアに設定することで、情報漏えいやサイバー攻撃のリスクを減らせるでしょう。
さらに、従業員の行動を把握できるため、労務管理の効率化にもつながります。例えば、出退勤の記録が自動的に保存されるため、タイムカードの管理が不要になります。災害時や緊急時においても、従業員の安否確認が迅速に行える点も重要なメリットです。
入退管理システム導入のポイント
システムの選定時に注意すべき点は拡張性と柔軟性です。工場の規模や運用に合わせてシステムをカスタマイズできなければ、セキュリティレベルの低下につながります。また、導入時には従業員への十分な説明が必要です。セキュリティポリシーを明確にし、従業員が守るべきルールを徹底できるよう、訓練を実施しましょう。
セキュリティ向上術② ゲートのセキュリティ強化
インターネットからは隔離された工場システムであっても、不審者などによる操作をきっかけに設備の誤作動やサイバー攻撃のリスクにさらされる可能性はゼロではありません。工場のセキュリティゲートは、敷地内への不正侵入を防ぐための重要な設備です。
工場用セキュリティゲートは、従業員やトラックをはじめとした車両の入退場を管理し、無断駐車対策や人車分離による安全対策を目的としています。
工場用セキュリティゲートの製品や機能
具体的な製品例として、車両の出入りを管理できる工場用セキュリティゲートや、入退管理などと組み合わせたセキュリティゲートがあります。
車両の出入りを制御するためのセキュリティゲートであれば、自動開閉やリモート操作が可能です。主に屋外に設置されるため、高い耐久性を持ち、天候や衝撃にも耐える設計となっています。工場の駐車場や出入口に設置することで、事前に許可された人物や車両のみに出入りを制限することも可能。不審者の侵入防止に大きく貢献するでしょう。特定の時間帯にゲートを自動的に閉じる機能もあり、セキュリティレベルの向上に役立ちます。
また、高機能なセキュリティゲートであれば、入退管理のほか、防犯カメラや顔認証システムと連携することで、より精度の高いセキュリティを実現しています。例えば、特定の従業員のみが許可されたエリアに入ることができるようにするなど、工場内のセキュリティを細かく管理することも可能です。
工場用セキュリティゲートのメリット
工場用セキュリティゲートを導入することで得られるメリットは多岐に渡ります。まず、外部からの不正な侵入を防ぐことで、資材や製品の盗難・システムへの不正アクセスを防止できることが挙げられます。企業にとっては出入りの記録を管理することで、労働時間の把握やトラブル発生時の迅速な対応ができることもメリットです。
工場用セキュリティゲート導入のポイント
導入に際してのポイントとしては、まず工場の規模や特性に合わせたセキュリティゲートの選定が重要です。自動車の出入りが多い工場では、車両用のゲートを導入する必要がありますし、歩行者が多い場合は、歩行者用のゲートや通路も考慮する必要があります。
また、ゲートと他のセキュリティシステムとの連携や、総合的な運用コストも考慮し、自社の工場に最適なシステムを選ぶことが必要です。
セキュリティ向上術③ AI搭載カメラによる不審者検知
工場内のセキュリティ向上には、AI搭載カメラの導入が効果的です。AI搭載カメラは、映像データをリアルタイムで解析し、不審者の行動を自動的に検知できる製品です。
従来の監視カメラとは異なり、AI技術を活用することで、特定の行動パターンや動きに基づいて異常を察知し、アラートを発する機能が搭載されています。
AI搭載カメラの機能や導入事例
具体的な機能として、工場内のセキュリティ強化に特化したカメラをご紹介します。本製品は不審者の検知以外にも、危険な作業行動の監視や、火災の早期発見にも対応しています。
例えば、夜間の無人の工場で人の動きを検知した場合に、即座にアラートを発することで、不正侵入を防ぐことが可能です。また、従業員の健康状態を監視できる製品もあり、体温異常を検知して警告を出せるカメラは感染症対策にも効果があります。
ある工場では、AI搭載カメラの導入により、外部からの不審者侵入や従業員の安全確保に成功した事例があります。特に夜間や週末など、少人数での監視が難しい時間帯でも、AIが常に監視を行い、必要に応じて管理者に通知を行うことで、迅速な対応や警備費用の削減が実現できました。
AI搭載カメラのメリット
AI搭載カメラを工場に導入するメリットは、まず、不審者の検知能力の向上です。AIが学習したデータに基づいて、異常行動や危険な行動を自動的に検出するため、従来の監視方法よりも精度が高まります。また、リアルタイムでの監視とアラート機能により、即座に対応が可能となり、被害を最小限に抑えることができます。
AI搭載カメラ導入のポイント
まずは工場の規模やレイアウトに合わせたカメラの設置場所の選定が重要です。入り組んだ通路の場合はカメラの死角ができやすく、必要台数も増えます。1台で広範囲を撮影できるPTZカメラであれば、設置台数を減らせるでしょう。
また、プライバシー保護の観点から、従業員への適切な説明や同意を得ることも忘れてはなりません。
セキュリティ向上術④ 従業員教育と緊急時対応計画
これまで紹介した高度なシステムや設備を導入しても、それを正しく運用し、緊急時に迅速に対応できるかは、従業員の知識と意識にかかっています。従業員がセキュリティの重要性を理解し、緊急時に適切な行動を取ることができるようにするためには、定期的な教育と訓練が不可欠です。
従業員教育と緊急時対応計画の例
従業員教育の具体的な例として、セキュリティ意識向上のためのセミナーやワークショップが挙げられます。セキュリティトレーニングの一例として、工場の特性に合わせた実践的なセキュリティ教育が行われます。従業員に対して、サイバー攻撃や不正アクセスのリスクについて理解を深めてもらい、日常業務での注意点や予防策を学ぶことが可能です。また、セキュリティインシデントが発生した際の対応方法も訓練することで、実際の状況で冷静に行動できるようにします。
緊急時対応訓練の例としては、工場の生産ラインやITシステムに対するサイバー攻撃シミュレーションが挙げられます。これにより攻撃が発生した際の初動対応から復旧までの手順を実際に経験することが可能です。従業員は緊急時の対応力を向上させるとともに、攻撃の兆候を早期に発見する能力を養います。
従業員教育と緊急時対応計画を行う際のポイント
工場の規模や業務内容に応じて、必要な知識やスキルは異なります。そのため、一般的なセキュリティ知識だけでなく、自社の工場特有のリスクや対応策についても具体的に伝えることが重要です。
また、教育や訓練は一度きりではなく、定期的に実施することが求められます。従業員の入れ替わりはもちろん、セキュリティ脅威は日々進化しており、知識やスキルもそれに合わせて更新する必要があるのです。
さらに、教育や訓練の効果を評価し、改善点を見つけることも重要です。例えば、訓練後にアンケートを実施し、従業員がどの程度理解したかを確認することで、次回の訓練に向けた改善策を立てることができるでしょう。
総合的なアプローチで工場の安全を確保しよう
サイバー攻撃が増加する昨今、製造業においても工場のセキュリティ強化は優先度の高い取り組みです。
セキュリティ強化によって工場の安全を確保するには、ステップに沿ってPDCAサイクルを回す必要があります。まずは、法令や自社の業務、保護対象を整理し、セキュリティ対策を立案します。その際、今回ご紹介した4つのセキュリティ向上術が参考になるはずです。
セキュリティ対策が完了したら、運用・管理で課題はないか定期的に見直し、PDCAサイクルを回しましょう。不断の見直しが工場の安全性を高め、不正アクセスから企業を守ることにつながるのです。
カナデンでは、お客様のニーズに最適な製造業のセキュリティ対策システムの導入から導入後のアフターサポートまで、ワンストップでお手伝いいたします。最新のIoTやAI技術を活用したソリューション提案も可能です。工場セキュリティについてお悩みごとがあれば、まずはお気軽にご相談ください。
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