アシストスーツとは|メリット・デメリットや選ぶ際のポイントを解説
公開日:2024.06.27 更新日:2024.06.27
製造業や物流、農業、介護といった分野で、現場作業の負担を軽減するアシストスーツが注目されています。アシストスーツとは、現場作業者の作業を補助する装着型の機器のことで、電動タイプのものから非電動タイプのものまで、さまざまな製品が販売されています。高齢化などを背景に、現場作業者の負担軽減が求められている中、多くのメリットが期待されていますが、作業者に合った製品を導入する必要があるため選び方には注意が必要です。
本記事では、アシストスーツの基礎知識とメリット・デメリットのほか、アシストスーツを選ぶ際のポイントなどについて解説します。現場作業者の負担軽減に課題を感じている方や、アシストスーツの導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
アシストスーツの基礎知識
アシストスーツとは、製造業(工場)、物流、農業、介護、小売、災害救助といったさまざまな現場で利用されている装着型の補助機器のことです。人工筋肉や内蔵のモーターが荷物や重量物の持ち上げ・持ち運びを補助し、腰などへの身体的負担を軽減できるといった特長があります。
アシストスーツはほかにも「パワーアシストスーツ」「パワードスーツ」「サポートジャケット」といった呼称があります。動力(モーター)の有無などによって呼び方が変わりますが、メーカーごとに名称が異なり一様ではありません。本記事では、一般的な呼称であるアシストスーツで統一します。
アシストスーツの種類
アシストスーツはさまざまなメーカーから販売されており、種類は主に下記の3種類です。それぞれの特長について解説します。
パッシブタイプ
パッシブタイプは、モーターがついていないタイプのアシストスーツです。パッシブタイプの大きな特長は、モーターが搭載されていないため装着しやすく、長時間の作業をしても肩こりなどにならないこと。また、装着したまま作業着などを着ることもできます。
パッシブタイプは、モーターではなく人工筋肉や支柱構造体によって動作を支える仕組みになっています。パッシブタイプを装着すると、荷物を持ち上げる際に肋骨やひざが支えられ、腰に負担の少ないバランスのとれた姿勢を保つことが可能です。腰をかがめた作業が多い農業や、材料や部品の持ち運びの多い工業などで多く利用されています。価格は数万円から数十万円です。
アクティブタイプ
アクティブタイプは、モーターが搭載されているアシストスーツです。作業者の動きをセンサーで検知し、モーターの力によって動作を補助。パッシブタイプよりもアシスト力が高く、重い荷物も持ちやすくなるのが特長です。
一方、スーツそのものが重いため、長時間の作業には不向きといえます。身に着けた状態でフォークリフトなどを運転するのは難しく、着脱にも手間がかかるといったデメリットもあります。また、モーター付きのため、価格は数十万円から100万円程度と高く、メンテナンスも必要です。
サポートタイプ
サポートタイプは、モーターを使用せず、腰やひざをサポートするだけのアシストスーツです。ベルトの収縮力や素材の反発により、コルセットのように姿勢をサポートしてくれます。
価格が数万円程度とパッシブタイプやアクティブタイプと比べて安価であり、導入しやすいといえるでしょう。
アシストスーツのニーズが高まっている理由
アシストスーツのニーズは、さまざまな分野で高まっています。その大きな理由が、日本ではあらゆる業界で作業者の高齢化が進んでいること。高齢化により、作業効率の低下や労働災害の増加といった問題が起きており、改善策のひとつとしてアシストスーツの導入が求められているのです。
また、腰痛に悩む人が高齢化に伴って増えていることも、アシストスーツのニーズを高める要因となっています。厚生労働省が2023年7月に公表した「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況※」では、腰痛は日本人の病気やケガの自覚症状として最も多く、約10人に1人が悩んでいるという結果が出ています。そのほか、現場の肉体労働には、「きつい」「危険」といったマイナスイメージが依然として強くあるのも事実。こうした状況下で、作業者の負担を軽減できるアシストスーツが期待されているのです。
製造業では、AGV(無人搬送車)や物流支援ロボット、バランサー(助力装置)、産業用ロボットといった、材料や製品の運搬を補助する機器が導入され、自動化・ロボット化が進められています。しかし、製品をコンベアから移したり、台車に載せたりする作業はロボット化が難しいのが現状です。50kg以下の荷物の持ち運びで、自動化が難しく、作業する距離や時間が短い業務では、比較的安価に導入できるアシストスーツに大きなニーズがあります。
※参考:厚生労働省「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況 Ⅲ世帯員の健康状況」(2023年7月4日)
■製造業における運搬を補助する機器の適性
荷物の重量 | 自動化 | 作業距離 | 作業時間 | 本体価格 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
50kg以下 | 50kg以上 | |||||
アシストスーツ | ◎ | × | × | 短距離 | 短時間 | 低 |
AGV | ◯ | ◎ | ◎ | 長距離 | 長時間 | 高 |
物流支援ロボット | ◯ | ◯ | × | 長距離 | 長時間 | 中 |
バランサー (助力装置) |
◯ | ◯ | × | 短距離 | 短時間 | 中 |
産業用ロボット | ◯ | ◎ | ◎ | 短距離 | 長時間 | 中~高 |
介護業界では、ヘルパーに女性が多く、入浴介助などの補助としてアシストスーツのニーズがあります。農業においても、農家の高齢化を背景に、農作物や肥料を運ぶ際の補助としてアシストスーツのニーズが高まっています。
物流関連製品ラインアップアシストスーツのメリット
アシストスーツを導入することの主なメリットは、下記のとおりです。アシストスーツの導入を検討する際の参考にしてください。
身体的負担を軽減できる
アシストスーツを導入すると、作業者の身体的な負担を軽減できます。荷物の上げ下げや持ち運びをする際は腰に大きな負担がかかりますが、アシストスーツを着けると、そうした負担を軽くすることが可能です。中腰や前かがみといった姿勢になる作業でも、体を前傾させる際にかかる負担を軽減することができるでしょう。
生産性向上を期待できる
アシストスーツは、現場作業の生産性向上にも期待できます。例えば製造業では、作業員の生産性が上がれば、現場の稼働時間を短縮できるでしょう。工場の経営改善につなげていくことも可能です。
働きやすさ向上につながる
作業者の働きやすさ向上につながることも、アシストスーツのメリットです。アシストスーツを導入すれば、現場作業の負担を軽減でき、ひいては肉体労働のマイナスイメージをやわらげられるかもしれません。離職防止のほか、女性や高齢者が活躍できる場の拡大なども期待できます。
アシストスーツのデメリット
アシストスーツには、いくつかのデメリットもあるため注意が必要です。アシストスーツの導入をお考えの方は、メリットと比較して検討してください。
慣れるまでに時間が必要
アシストスーツは、作業に慣れるまでに一定の時間が必要です。着脱はもちろん、本来の性能を発揮できるよう正しく操作するには、それなりに経験を重ねなくてはなりません。
負担軽減や生産性向上といったメリットを享受できるようになるには、時間がかかることを認識しておきましょう。
導入に一定の費用がかかる
アシストスーツを導入するには、一定の費用がかかります。サポートタイプは比較的安価ですが、アクティブタイプは、メーカーによって異なるものの、数十万円から100万円を超えることもあります。まとまった数量を導入するには、多額の予算の確保が必要です。
費用の確保が難しい場合は、補助金制度を活用したり、レンタルで導入したりする方法もあります。自社の状況に応じて検討してください。
サイズ選定が難しい
サイズ選定が難しいことも、アシストスーツのデメリットです。アシストスーツはメーカーによってラインアップが異なり、S、M、Lの3種類を用意しているメーカーもあれば、フリーサイズの製品のみのメーカーもあります。女性や高齢者だと、Sサイズでも大きく感じるケースがあります。
アシストスーツは体格が合わないと操作がしにくく、性能を発揮できません。作業者に合った製品を選ばないと、導入したものの使われなくなってしまうことがあるため注意が必要です。複数のメーカーのアシストスーツを作業者に試着してもらうなどして検討するようにしましょう。
アシストスーツを選ぶ際のポイント
アシストスーツを導入する際は、現場の状況や作業者に合った製品を選ぶことが大切です。アシストスーツの主な選び方について見ていきましょう。
現場の作業内容
現場の作業内容は、アシストスーツを選ぶ上での大切なポイントです。作業者が持ち上げる物の重さや大きさ、作業環境、持ち上げる際にどのような姿勢になるかなどを踏まえ、使い勝手の良い製品を選んでください。
製品の重さ
アシストスーツを選ぶ際は、製品自体の重量を確認してください。メーカーによって異なりますが、アクティブタイプのアシストスーツだと、重量は3~4kgになります。長時間にわたり装着する場合、作業者の負担を考慮するとパッシブタイプやサポートタイプのほうがいいかもしれません。作業者にとって無理のない重さの製品を選ぶことが大切です。
動きやすさ
動きやすさも、アシストスーツを選ぶ際のポイントです。アシストスーツは荷物の上げ下ろしや持ち運びを補助してくれますが、作業者はそれ以外の動作をすることもあります。アシスト機能が優れていても、現場で動きにくいと作業者にとってはストレスになることもあるでしょう。製品自体の重さと併せ、動きやすさにも注意して選んでください。
防水性能
介護における入浴介助など、作業現場では水にふれることがあります。特に、アクティブタイプのアシストスーツはモーターを搭載しているため、導入の際は製品の防水性能を確認することが重要です。
アシストスーツの防水性能は、国際電気標準会議によって定められた防水規格の等級で確認できます。防水規格の等級は、防水性能がない「IPX0」が最も低く、最も高いのが水中でも完全に保護される「IPX8」です。入浴介助の場合、どの方向からの水の直接噴流でも有害な影響を受けない、「IPX5」以上が望ましいといわれています。
価格
アシストスーツを選ぶ上で、価格は外すことができないポイントです。特にアクティブタイプの場合は、本体価格が高くなります。導入する製品のグレードや台数など、予算内で検討するようにしてください。
業種別・アシストスーツの使われ方
アシストスーツは、製造業や物流、農業、介護などの分野で導入され、利用されています。各業種での主な使われ方について、詳しく見ていきましょう。
製造業
製造業は、工場や倉庫での重量物の上げ下ろしや持ち運び、積み込みといった「重筋作業」が多く、繰り返すことによる腰などへの負担が大きいことが現場の課題です。
製造業がアシストスーツを導入する主な目的は、重筋作業を補助し、作業員の腰への負担を軽くすること。重筋作業のほかにも、製造現場には中腰や前傾といった姿勢での作業も多く、そのような姿勢からくる負担を軽減する目的でもアシストスーツが導入されています。
物流
物流の現場では重い荷物が多く取り扱われ、梱包のほか、パレットに積み付けてベルトやフィルムで固定する「パレタイズ」といった作業の際に、作業者に大きな負担がかかります。
アシストスーツを導入すると、こうした負担を軽減可能です。中でも、軽量かつ動きやすいサポートタイプを導入すれば、作業者が現場内を動いて、ほかの作業もできるメリットがあります。
農業
農業は全般的に中腰姿勢での作業が多く、腰への負担が大きい仕事です。また、農作業者の高齢化も進んでおり、作業効率を高め、腰などへの負担も軽減できるアシストスーツを求める声が少なくありません。
アシストスーツは、立って行う選果、前傾姿勢になる箱詰め、中腰で行うことが多い収穫、収穫物の積み下ろし、しゃがみ姿勢で行う定植といった作業で活躍します。さまざまな現場で導入され、農作業者の負担軽減に役立てられています。
介護
介護は、ベッドから車椅子への移乗介助のほか、排泄介助、入浴介助など、作業者の腰に負担がかかる作業が多い仕事です。腰痛が主な原因となって離職するケースも多いため、作業者の腰の負担を軽減することは大きな課題となっています。
アシストスーツの導入は、こうした課題を解決する手段のひとつです。作業者の負担軽減だけでなく、離職を防ぐことにもつながるとして導入が進んでいます。
現場に合ったアシストスーツで経営を改善
アシストスーツは、作業者の腰などへの負担を軽減できる製品として、製造業をはじめとしたさまざまな現場で導入されています。
アシストスーツには身体的負担の軽減のほか、生産性向上、働きやすさ向上といったメリットがあります。一方で、着脱や操作に慣れるまでに時間がかかる、一定の費用が必要、サイズ選定が難しいといったデメリットもあるため、導入の際は複数の製品を比較検討することが大切です。また、製品を選ぶ際は、現場の作業内容や製品自体の重さ、動きやすさなどもポイントとなります。現場に合ったアシストスーツを導入すれば、作業者の身体的な負担軽減だけでなく生産性向上も期待でき、経営にとってもプラスとなるでしょう。
カナデンでは、お客様の課題に応じてさまざまなアシストスーツをご提案しています。現場のお困り事を伺い、各メーカーのアシストスーツを幅広く選定し、ご提案することが可能です。現場作業でのお困り事があれば、ぜひカナデンにご相談ください。
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