【事例付き】工場(製造業)によるカーボンニュートラル実現への取り組みを解説
更新日:2025.07.2
カーボンニュートラルとは、製造過程で排出されるCO₂をはじめとする温室効果ガスの排出量をできる限り削減し、残りの排出分については植林などの吸収・除去活動を活用して相殺し、実質的な排出量をゼロにする取り組みです。世界各国でその実現に向けた動きが加速しており、日本も2050年までにカーボンニュートラルを達成することを宣言しています(※)。
このような背景の中、企業には積極的な対応が求められており、特に温室効果ガスの排出量が多い製造業では早急な対策が必要とされています。製造業におけるカーボンニュートラルに向けた取り組みとは、具体的にどのようなものなのでしょうか。
本記事では、製造業におけるカーボンニュートラルの概要、取り組むメリット、活用できる補助金制度、工場で実施できる施策、そして実際の事例などを分かりやすく解説します。ぜひ本記事を参考にして、自社に合った取り組みを実践してみましょう。
※参考:脱酸素ポータル.「カーボンニュートラルとは」.https://ondankataisaku.env.go.jp/carbon_neutral/about/ ,(参照 2025-05-15).
そもそも製造業におけるカーボンニュートラルとは?
2022年度の日本のCO₂排出量、約10億3,668万tのうち、エネルギー転換部門の排出量が40.5%と最も多く、次いで製造業を含む産業部門が24.4%となりました(※1)。
また産業部門における排出量の約9割は、製造業が占めていることも分かっています(※2)。
工場などに多数の生産設備を保有する製造業において、カーボンニュートラルを実現するためには、使用する電力の再生可能エネルギー化と「設備の省エネ化」が重要なポイントとなります。前者では再生可能エネルギーによる電力への切り替え、後者では高効率機器への切り替えなどが具体例として挙げられるでしょう。
しかし電気代が高騰している今、再生可能エネルギーへの切り替えは、コスト面での負担が大きくなりがちです。また設備の切り替えにも導入コストがかかるので、すぐに実行するのは難しいかもしれません。
そのため、カーボンニュートラル実現に向けて貢献するには、無理のない範囲から取り組むことが大切です。例えば、既存の生産設備における電力使用量の最適化や、電力会社の見直しなどが挙げられるでしょう。コストを抑えつつ効果が期待できる施策から取り組むことが、製造業におけるカーボンニュートラルの第一歩となります。
※1 参考:デコ活.「4-04 日本の部門別二酸化炭素排出量(2022年度)」.https://www.jccca.org/download/65477 ,(参照 2025-05-16).
※2 参考:環境省.「2.3 産業部門におけるエネルギー起源CO2」.https://www.env.go.jp/content/900445206.pdf ,(参照 2025-05-16).
カーボンニュートラルに取り組むメリット
カーボンニュートラルに取り組むと、企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。5つのメリットを解説します。
1.エネルギーコストの削減
企業がカーボンニュートラルに取り組むメリットの一つは、エネルギーコストの削減です。脱炭素化に向けて取り組む中で、省エネ設備への投資や運用方法・生産工程の見直しなどをすることにより、電気代や燃料費を削減できる可能性があります。
設備投資のためには初期費用がかかりますが、中長期的に見ればコストを削減できる場合もあります。
2.市場競争力の強化
市場競争力の強化につながることも、企業がカーボンニュートラルに取り組むメリットの一つです。
現在、世界的にカーボンニュートラルの実現に向けた動きが加速している中、サプライヤーにも具体的な対応を求める企業は少なくありません。カーボンニュートラルへの取り組みを進めることで、環境意識の高い企業との取引において、自社や自社製品の価値を高めることにつながります。また、既存の取引先との関係強化に加え、新たなビジネスチャンスの獲得につながる可能性もあります。
3.ブランディングの向上
企業がカーボンニュートラルに取り組むメリットとして、ブランディングの向上につながることも挙げられます。
脱炭素化や省エネに取り組み、実績を残した企業は、行政機関やメディアなどで先進的な事例として取り上げられたり、表彰されたりする可能性があります。こうした外部からの評価は、企業イメージの向上につながり、環境意識の高い企業としてのブランド力を強化できるでしょう。
4.資金調達において有利に働く
カーボンニュートラルへの取り組みは、資金調達の面でも企業にとって有利に働くことが期待できます。
環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)の3つに重点を置いて企業を評価し、投資を行うESG投資は、投資におけるトレンドになりつつあります。また融資の際、カーボンニュートラルへの取り組み状況を重視している金融機関も増えつつあります。そのため、カーボンニュートラルに取り組むと資金調達がしやすくなる傾向にあるのです。
5.社員のモチベーション強化・人材獲得力強化
社会的課題であるカーボンニュートラルに積極的に関わることで、環境意識の高い社員が誇りを持って働けるようになり、社員のモチベーション強化になります。その結果、生産性アップや離職率低下などにつながるでしょう。
また若い世代を中心として、就職先を探す際に企業の社会問題への姿勢を重視する人も増えています。カーボンニュートラルへの取り組みをアピールすることで、企業の人材獲得力が高まり、優秀な人材の獲得を目指せるでしょう。
カーボンニュートラルの取り組みには補助金制度が活用できる
カーボンニュートラルに関心を持っていても、費用面がネックになり、具体的な行動に至っていない企業もあるかもしれません。しかし、カーボンニュートラルへの取り組みに対して、国や自治体はさまざまな補助金制度を設けています。
例えば、環境省が実施する「工場・事業場における先導的な脱炭素化取組推進事業(SHIFT事業)」は、CO₂排出量の少ない設備やシステムの導入を支援する補助金制度です。
また同じく環境省では、民間企業における自家消費型・地産地消型の再生可能エネルギーの導入を支援するために、「民間企業等による再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業」を実施し、対象となる7事業に対して、補助金を交付しています(※)。
その他にも、さまざまな補助金制度があるため、対象となる補助金を活用すれば、負担を軽減しながら、カーボンニュートラルの推進が可能です。
とはいえ「活用できる補助金が分からない」「申請が複雑で難しそう」と考える方も多いのではないでしょうか。
カナデン補助金ヘルプデスクでは、補助金に関する最新情報や申請方法についてのご相談を無料で受け付けています。補助金の活用を検討している方は、お気軽にご相談ください。
※参考:環境省.「民間企業等による再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業」.https://www.env.go.jp/content/000156332.pdf ,(参照 2025-05-16).
カーボンニュートラル達成のために工場(製造業)が取り組める施策
カーボンニュートラル達成に向けて、製造業が工場で取り組める施策にはどのようなものがあるのでしょうか。3つの施策をご紹介します。
GHGプロトコルに準拠したCO₂排出量の"見える"化
「GHGプロトコル」とは、温室効果ガス(GHG:Greenhouse Gas)排出量の算定・報告を行うための国際基準です。企業活動による温室効果ガスの排出量をサプライチェーン全体で評価することが重視されており、排出量を以下の3つの区分に分類して計測します。
- Scope1:自社での燃料の燃焼などによる排出量
- Scope2:社外から供給される電気・熱の使用による排出量
- Scope3:上記以外の事業活動で発生する間接的な排出量(原材料生産・輸送・製品使用など)
この基準に準拠し、自社でのCO₂排出量を見える化するシステムなどを導入することで、どの過程の脱炭素に重点的に取り組めば良いのかが見極めやすくなります。
省エネ設備の導入
高効率な省エネ設備を導入することも、工場でできる取り組みの一つです。老朽化したモーターやポンプはエネルギー効率が悪く、無駄な温室効果ガスを排出している可能性があります。省エネ設備を導入してエネルギー使用量を削減すれば、CO₂排出量の削減が可能です。
再生可能エネルギーを利用
既存のエネルギーを、CO₂をほとんど排出しない再生可能エネルギーの利用に切り替えることも、工場で実施できる取り組みです。太陽光発電システムを工場の屋根などに設置し、自家発電を行うといった例が挙げられます。
カーボンニュートラルに向けた取り組み事例
最後に、カーボンニュートラルに向けた取り組みの事例を見てみましょう。
1. エネルギー監視システムの導入による消費電力の可視化
カナデンで取り扱っている「Ever Green Vision」は、工場やオフィスで使用されるあらゆるエネルギーを計測し、必要に応じて設備の制御を行うエネルギー監視システムです。
前述した通り、カーボンニュートラル達成のための取り組みとして、CO₂排出量の見える化は効果的な施策です。エネルギー監視システムを導入して消費エネルギーを可視化し、不要な消費を抑えることで、省エネに貢献できます。
カナデンでは「Ever Green Vision」の導入により、お客さまの「見える化」の第一歩を踏み出すお手伝いを行っています。今後もお客さまのご要望に合わせて、補助金制度を活用した設備の更新や導入を進めていく予定です。
また、FA(ファクトリーオートメーション)やITのデータを一元管理し、監視・分析が行えるSCADAソフトウェア「GENESIS64」や、ニーズに合わせてさまざまな監視システムを構築できる工程監視構築ツール「JoyWatcherSuite」なども取り扱っています。お客さまのニーズに合わせて、最適なソリューションの提案が可能です。
2. 省エネ設備の導入
カナデン関西支社では、空調に特化した省エネ・節電システム「Ai-Glies」を導入しました。
導入前の試算は、以下の通りです。
- 設置場所:関西支社
- 対象空調設備:室外機約15台
- 稼働時間:月~金曜日、12時間/日 × 240日間
- 電気代削減見込:約450,000円 / 年
- CO₂削減見込:約7t
実際の導入では、効果が見込めると判断した室外機9台に限定し「Ai-Glies」を導入することとなりました。2023年2月18日から2024年2月17日の1年間での導入結果は、以下の通りです。
- 対象空調設備:室外機9台
- 電気代削減実績:
- 基本料金:約550,000円
- 従量料金:約540,000円
- 合計:約1,090,000円
- CO₂削減実績:約9.5t
「Ai-Glies」の導入により、100万円以上の電気代削減、約9.5tのCO₂削減に成功しています。
またカナデンでは、照明と空調の自動制御が可能な省エネシステム「PLC-Connector」も扱っています。照明・空調の自動制御を行って消費電力を抑えることにより、CO₂排出量削減への貢献が可能です。
3. 太陽光発電設備の導入
カナデンでは、太陽光発電設備の導入に役立つ製品を多数取りそろえており、多くの企業さまで電気代やCO₂排出量の削減を実現しています。カナデンがご提案する太陽光発電システムは、弊社とパートナー企業の連携により、お客さまのニーズに合わせて、部材調達から設計、施工、保守、電力販売までワンストップでの提供が可能です。お客さまの敷地に太陽光発電設備を設置し、自家消費するオンサイトPPAにすれば、初期費用0円で太陽光発電設備を導入できます(※)。
例えばある企業さまでは、工場の屋根に太陽光パネルを設置し、コストとCO₂排出量を削減された事例もあります。
詳しい内容や資料のご請求はこちらのページをご覧ください。
※参考:カナデン.「太陽光発電システムのご提案」.https://products.kanaden.co.jp/lp/solar/ ,(参照 2025-05-16).
長期的なコスト削減やブランディング向上のため、できることから始めましょう
多くのCO₂を排出する製造業において、カーボンニュートラルへの具体的な取り組みの実施は喫緊の課題です。施策の実施にはコストや手間がかかりますが、長期的なコスト削減や競争力強化、自社のブランディングといったメリットも得られます。ぜひ本記事を参考に、自社に合った施策を行い、カーボンニュートラルの実現を目指しましょう。
カナデンでは、CO₂削減や省エネに役立つさまざまなソリューションをご提案しています。補助金に関するご相談も無料で受け付けていますので、お気軽にご相談ください。詳しくはカナデンの「カーボンニュートラルのご提案カタログ」からもご確認いただけます。