危険場所にスマートフォンやタブレットを持ち込む方法|防爆スマホ・防爆タブレットの選び方とおすすめ製品5選
可燃性のガスや液体を取扱っていたり、製品の製造・加工などで粉じんが大量に発生したりする現場では、 電子機器の火花や静電気、発熱などが原因で、火災や爆発が起きる可能性があります。
日本では労働安全衛生規則第280条及び、電気機械器具防爆構造規格第1条において、可燃性物質の濃度によって「危険場所」が定められており、 危険場所の中では一般的な電子機器を使用することはできません。しかし近年では、作業員の安全確認や作業の効率化のため、 危険場所にスマートフォンやタブレットを持ち込みたいという需要が高まってきています。その際に役立つのが、電子機器が火災や爆発の点火源となることを防止する 「防爆」という技術です。防爆スマホや防爆タブレットであれば、危険場所でも安全に使用できます。
本記事では危険場所にスマホやタブレットを持ち込む具体的な方法や、防爆スマホ・防爆タブレットの選び方、おすすめの製品などをご紹介していきます。
防爆の基礎知識について詳しく知りたい方は、以下のページを参考にしてください。
関連記事「防爆とは?防爆の基礎知識から近年のトレンドまで徹底解説」
危険場所にスマホやタブレットを持ち込む方法
危険場所にスマホやタブレットを持ち込むには、2つの方法があります。それぞれのメリットやデメリットについて見ていきましょう。
防爆スマホ・防爆タブレットを購入する
防爆性能のある防爆スマホや防爆タブレットを購入することで、危険場所にスマホやタブレットを持ち込むことができます。この方法のメリットは、購入したらそのまま対応している危険場所で使用できる点です。
デメリットとしては、本体にiPhone端末を使用した製品が少ないことが挙げられます。Android端末を使用した製品が多いため、iOS対応のアプリケーションを使いたい場合は、Androidのアプリケーションで代替できるものがないか確認しておきましょう。
また防爆スマホや防爆タブレットは、防爆構造の特殊なケースに入っており簡単に開けることができないため、故障した場合の修理に時間がかかってしまいます。故障した場合に備えて、予備を持っておくなどの対策が必要です。
一般のスマホやタブレットに防爆構造のケースを装着する
一般のスマホやタブレットに防爆構造のケースを装着することでも、危険場所への持ち込みが可能です。ただし、防爆構造のケースを装着すればどんなスマホやタブレットでも持ち込めるというわけではありません。端末に日本の防爆規格の認証を受けたケースを装着した状態で個別に検定を受け、合格した組み合わせでのみ危険場所で使用できます。そのため、ケースを着脱することはできますが、自由に端末を入れ替えることはできませんのでご注意ください。
この方法では端末が故障した場合に、従来の方法で端末のみを修理に出せるため、手間も時間もかかりません。一方で、防爆構造のケースはほとんどがiPhone・iPad向けであるという点がデメリットとして挙げられます。さらに、iPhone向けのケースは、日本の防爆規格の認証を受けているものがほとんどありません。防爆構造のケースを装着して使う場合は、そもそも日本の危険場所で利用できる製品なのかを確認しましょう。
防爆スマホ・防爆タブレットの選び方
ここからは、防爆スマホや防爆タブレットの選び方を解説していきます。
使用するOSを決める
まずはiOSとAndroid、どちらのOSを使用するか決めましょう。iOSの場合は基本的に、一般の端末に日本の防爆規格の認証を受けたケースを装着する必要があり、端末とケースのセットで検定を受け、合格しなければなりません。また繰り返しになりますが、iPhone向けの防爆構造のケースは、日本の防爆規格の認証を受けた製品がほとんどありません。日本でiOSを使用する場合は、iPadに防爆構造のケースを装着して使用するのが現実的だと言えます。
Androidの場合は、防爆スマホ・防爆タブレットとして販売されている製品が多く、購入後は速やかに使用できます。また工場などに設置されている機械はAndroid OSに対応しているものが多く、アプリケーションの開発などが進めやすいという点も特長の一つです。
以上のことからも、防爆スマホや防爆タブレットを選ぶ際は、現時点ではAndroidで検討するのがおすすめです。(2023年1月時点の情報です。)
日本の防爆規格の認証を受けている製品を選ぶ
日本の防爆規格の認証を受けている製品を選びましょう。日本では「公益社団法人産業安全技術協会(TIIS)」などによる「防爆構造電気機械器具に係る型式検定」に合格した電子機器のみ、危険場所での使用が認められています。現在の日本の防爆規格は、以下の2つです。
・電気機械器具防爆構造規格(昭和44年労働省告示第16号) ※通称「構造規格」
・工場電気設備防爆指針(国際整合技術指針 Ex2015,Ex2018,Ex2020) ※通称「整合指針」
構造規格と整合指針のどちらか一方の規格で認証されている製品であれば、どちらを使っても問題ありません。
また海外では、以下に挙げるようなさまざまな防爆規格が存在します。
・IECEx:国際規格
・UL規格:アメリカの防爆規格
・ATEX:ヨーロッパの防爆規格
海外の規格の認証を受けている防爆スマホであっても、構造規格もしくは整合指針の認証を得ていなければ、日本の危険場所では使用できない点に注意しましょう。日本の危険場所で防爆スマホを使用する場合は、「構造規格と整合指針どちらかの規格の認証を受けていること」を必ず確認してください。
使用場所に対応している防爆構造の製品を選ぶ
可燃性物質の濃度によって、危険場所は以下の3つに分類されます。それぞれの危険場所に適した防爆構造を有する、防爆スマホや防爆タブレットを選びましょう。
危険場所の分類 | 詳細 |
---|---|
特別危険箇所 (0種場所、Zone0) |
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第一類危険箇所 (1種場所、Zone1) |
|
第二類危険箇所 (2種場所、Zone2) |
|
なお同じ防爆構造であっても、構造規格と整合指針で使用可能な危険場所や記号が異なることがあり、事前にどちらの規格であるのか確認する必要があります。製品の製造元・販売元に仕様書もしくは防爆構造電気機械器具に係る型式検定の合格証の写しをもらい、記載の記号によって詳細を確認してください。
危険場所と防爆構造の対応表は以下の通りです。
危険場所の分類 | 防爆構造(構造規格) | 防爆構造(整合指針) |
---|---|---|
特別危険箇所 (0種場所、Zone0) |
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|
第一類危険箇所 (1種場所、Zone1) |
|
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第二類危険箇所 (2種場所、Zone2) |
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|
危険場所の分類について詳しく知りたい方は、以下のページを参考にしてください。
関連記事「防爆エリア(危険場所)の基礎知識と分類方法を解説」
使用場所に存在する可燃性物質に対応している製品を選ぶ
防爆スマホや防爆タブレットを導入する際は、防爆構造の種類の他に、危険場所に存在する可燃性物質の種類にも対応している製品を選びましょう。なお、構造規格と整合指針でチェックする内容が異なります。
防爆機器の性能は、前述した製品の仕様書や防爆構造電気機械器具に係る型式検定の合格証の写しに記された記号によって確認できます。
構造規格
構造規格の認証を受けている防爆スマホや防爆タブレットの場合、以下の要素を確認し、対象の危険場所での使用に適しているか検討してください。
要素 | 詳細 |
---|---|
爆発等級 | 外部の可燃性物質へ点火しない容器の隙間の最大サイズ |
発火度 | 可燃性のガスや蒸気が自然発火する温度 |
また爆発等級と発火度ごとの代表的な可燃性ガスの種類は以下の通りです。
発火度 G1 | 発火度 G2 | 発火度 G3 | 発火度 G4 | 発火度 G5 | |
---|---|---|---|---|---|
爆発等級1 |
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- |
爆発等級2 |
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- | - | - |
爆発等級3 |
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- | - |
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整合指針
整合指針の認証を受けている防爆スマホや防爆タブレットの場合、以下の要素を確認し、対象の危険場所での使用に適しているか検討してください
要素 | 詳細 |
---|---|
グループ記号 | 電子機器を使用する場所に存在する可燃性物質の分類 |
温度等級 | 電子機器の最高表面温度 |
またグループ記号と温度等級ごとの代表的な可燃性ガスの種類は以下の通りです。
温度等級 T1 | 温度等級 T2 | 温度等級 T3 | 温度等級 T4 | 温度等級 T5 | 温度等級 T6 | |
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グループ記号 ⅡA |
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- | - |
グループ記号 ⅡB |
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- |
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- | - |
グループ記号 ⅡC |
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- | - |
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- |
記号の見方や内容の詳細については、以下のページを参考にしてください。
関連記事「防爆とは?防爆の基礎知識から近年のトレンドまで徹底解説」
おすすめの防爆スマホ・防爆タブレット5選
おすすめの防爆スマホ・防爆タブレットを5つご紹介します。自社の危険場所に適した製品かどうか確認し、ぜひ導入をご検討ください。
IS330.1
『IS330.1』は、第一類危険箇所(1種場所、Zone1)と第二類危険箇所(2種場所、Zone2)で使用できる防爆スマホです。整合指針の認証を受けています。
OSはAndroid10で、306gという軽さが特長の一つ。危険場所で作業する際に携帯していても、あまり負担に感じません。また専用のドライバーを使用すれば、ユーザー側でバッテリーの交換が可能です。予備のバッテリーを充電しておけば、長時間使用することができます。
IS530.1
『IS530.1』は、第一類危険箇所(1種場所、Zone1)と第二類危険箇所(2種場所、Zone2)で使用できる防爆スマホで、整合指針の認証を受けています。
OSはAndroid10。企業で業務に使用するモバイル端末を総合的に管理するツール「EMM」などと組み合わせて使用でき、効率的にセキュリティ設定などが可能です。325gと軽量で、防塵防水対応のためさまざまなシーンで使用できます。
LANEX®-Phoneシリーズ
『LANEX®-Phoneシリーズ』は、第二類危険箇所(2種場所、Zone2)で使用できる防爆スマホで、整合指針の認証を受けています。
OSはiOSで、iPhone端末の防爆スマホです。キャリア回線を利用した通話用途はもちろん、工場内に設置したWi-Fiなどに接続することで、現場に居ながら無線LAN端末としても使用できます。またiPhoneならではの安定したカメラ性能も特長の一つです。
IS930.1
『IS930.1』は、第一類危険箇所(1種場所、Zone1)と第二類危険箇所(2種場所、Zone2)で使用できる防爆タブレットで、整合指針の認証を受けています。
OSはAndroid10で、水深2mに1時間水没していても水が侵入しないことが実証されている防水対応です。また防爆の耐衝撃テストにも合格した頑丈なタッチパネルは、グローブをはめたままでも快適に操作できます。
Agile S NI
『Agile S NI』は、第二類危険箇所(2種場所、Zone2)で使用できる防爆タブレットPCです。
画面サイズは10.1型で持ち運びしやすいだけでなく、Windows10対応の高性能なCore5 2.5GHzプロセッサにも対応しています。遠隔監視制御ソフトとの連携によって、危険場所の作業を見える化したり、危険場所の作業データを管理したりすることが可能です。
まとめ
本記事では、危険場所で安全にスマートフォンやタブレットを使用する具体的な方法や、防爆スマホ・防爆タブレットの選び方などについて解説しました。
防爆スマホや防爆タブレット、もしくは防爆構造のケースを装着した端末を使う場合は、日本の防爆規格の認証を受けているもの、そして対象の危険場所に適したものを選ぶようにしましょう。
カナデンでは、今回ご紹介した5つの防爆スマホや防爆タブレットの他にも、さまざまな防爆機器を取扱っています。防爆機器の導入を検討している方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。