10種類の防爆構造について詳しく解説

10種類の防爆構造について詳しく解説

可燃性物質が空気と混じり合い、一定濃度を超えた状態で何らかの点火源に触れると、火災や爆発が起きてしまいます。可燃性物質が存在する場所では、火花や静電気などが点火源とならないように、「防爆」と呼ばれる技術的対策が施された電子機器を使用しなければなりません。一口に防爆機器と言っても、構造はさまざまです。本記事では10種類の防爆構造について、詳しく解説していきます。

耐圧防爆構造

「耐圧防爆構造」は、火災や爆発の圧力に耐えられるほど頑丈な容器を用いた防爆構造です。電子機器を容器で覆っておくことで、容器内に可燃性のガスや蒸気が入り込み内部で火災や爆発が起こったとしても容器が壊れて外部に点火することを防ぎます。

構造規格と整合指針で、適用可能な危険場所が異なります。構造規格では、第一類危険箇所(1種場所、Zone1)と第二類危険箇所(2種場所、Zone2)でのみ使用可能ですが、整合指針では、特別危険箇所(0種場所、Zone0)と第一類危険箇所(1種場所、Zone1)、第二類危険箇所(2種場所、Zone2)で使用可能です。

耐圧防爆構造は、防爆構造化が比較的簡単で、小型から中型の電子機器の防爆構造化に適しています。また他の防爆構造と組み合わせて使うことも可能です。

一方で容器自体に強度が必要であるため、大きくて重くなりやすい点がデメリットとして挙げられます。また容器内部で火災や爆発が起こることを前提としているため、中に入っている電子機器が破損する可能性があるということを認識しておきましょう。

構造規格の記号 構造規格で対象となる危険場所 整合指針の記号 整合指針で対象となる危険場所
d
  • 第一類危険箇所
    (1種場所、Zone1)
  • 第二類危険箇所
    (2種場所、Zone2)
da
  • 特別危険箇所
    (0種場所、Zone0)
  • 第一類危険箇所
    (1種場所、Zone1)
  • 第二類危険箇所
    (2種場所、Zone2)
- - d,db
  • 第一類危険箇所
    (1種場所、Zone1)
  • 第二類危険箇所
    (2種場所、Zone2)
- - dc
  • 第二類危険箇所
    (2種場所、Zone2)

なお、危険場所についての詳細を知りたい方は、以下のページをぜひご確認ください。

関連記事「防爆エリア(危険場所)の基礎知識と分類方法を解説」

内圧防爆構造

「内圧防爆構造」は、電子機器を囲った容器内に保護ガスを注入し、内部の圧力を高い値に維持することで、外部の可燃性のガスや蒸気が容器内に入り込まないようにする防爆構造です。内部の圧力を高める方法によって、以下の3種類に分類できます。

通風式 容器に給気口と排気口があり、空気を通すことによって容器内の圧力を高める
封入式 密閉された容器において、外部に漏れた微量の保護ガスを補充することで容器内の圧力を維持する
希釈式 容器内に入り込んだ可燃性のガスや蒸気の濃度を希釈するために保護ガスを注入し、容器内の圧力を維持する

内圧防爆構造のデメリットとしては、容器内の保護ガスの供給源や圧力検知の装置が必要である点、一定時間の掃気が必要である点が挙げられます。

整合指針では、細かい条件によって対象となる危険場所が分けられます。

構造規格の記号 構造規格で対象となる危険場所 整合指針の記号 整合指針で対象となる危険場所
f
  • 第一類危険箇所
    (1種場所、Zone1)
  • 第二類危険箇所
    (2種場所、Zone2)
pv,px,py
  • 第一類危険箇所
    (1種場所、Zone1)
  • 第二類危険箇所
    (2種場所、Zone2)
- - pz
  • 第二類危険箇所
    (2種場所、Zone2)

安全増防爆構造

「安全増防爆構造」は、通常時には点火源になる恐れがない電子機器に対して、より安全性を高めるために使われます。損傷や温度上昇を防いだり、絶縁性能を高めたりできる他、軽量のまま使用できるという特長があります。

容器の耐久性についての基準がなく、万が一容器内部で発火や爆発が起こってしまった場合、外部の可燃性のガスや蒸気に点火する恐れがあるため、基本的には第二類危険箇所(2種場所、Zone2)でのみ使用することをおすすめします。

構造規格の記号 構造規格で対象となる危険場所 整合指針の記号 整合指針で対象となる危険場所
e
  • 第一類危険箇所
    (1種場所、Zone1)
  • 第二類危険箇所
    (2種場所、Zone2)
e,eb
  • 第一類危険箇所
    (1種場所、Zone1)
  • 第二類危険箇所
    (2種場所、Zone2)
- - ec
  • 第二類危険箇所
    (2種場所、Zone2)

油入防爆構造

「油入防爆構造」は、電子機器の火花やアーク(気体放電現象)が発生する部分を容器内の油に浸す防爆構造です。電子機器が油の中に入っていることで、電気絶縁と爆発防止の効果があり、容器の外部にある可燃性のガスや蒸気に点火しない仕組みになっています。

第一類危険箇所(1種場所、Zone1)と第二類危険箇所(2種場所、Zone2)で使用可能です。しかし「労働安全衛生総合研究所技術指針ユーザーのための工場防爆設備ガイド※」によると、油の劣化や漏電、過電流などが起こった際の防爆性が不安視されており、安全性を考えると第二類危険箇所(2種場所、Zone2)でのみ、使用するのが良いでしょう。

構造規格の記号 構造規格で対象となる危険場所 整合指針の記号 整合指針で対象となる危険場所
o
  • 第一類危険箇所
    (1種場所、Zone1)
  • 第二類危険箇所
    (2種場所、Zone2)
o,ob
  • 第一類危険箇所
    (1種場所、Zone1)
  • 第二類危険箇所
    (2種場所、Zone2)
- - oc
  • 第二類危険箇所
    (2種場所、Zone2)

※参考資料:労働安全衛生総合研究所「労働安全衛生総合研究所技術指針ユーザーのための工場防爆設備ガイド」https://www.jniosh.johas.go.jp/publication/doc/tr/TR_No44.pdf

本質安全防爆構造

「本質安全防爆構造」は、他の防爆構造と比べて防爆性能が高い防爆構造です。通常時だけでなく故障時でも、火花やアークなどが点火源にならないことが公的機関の試験によって確認されています

携帯機器以外の本質安全防爆構造の機器は、非危険場所にある制御盤に安全保持器を設置し、危険場所にある本体と接続する仕組みになっています。安全保持器からは点火源になり得ないほどの微弱な電流のみが流れるため、火災や爆発が起こることはありません。また本質安全防爆構造は、危険度の高い特別危険箇所(0種場所、Zone0)にも使用できる場合があります。故障の数をどの程度考慮しているかで、対象となる危険場所が変わるので注意しましょう。

構造規格の記号 構造規格で対象となる危険場所 整合指針の記号 整合指針で対象となる危険場所
ia <数えられる故障を2つまで考慮した電子機器>
  • 特別危険箇所
    (0種場所、Zone0)
  • 第一類危険箇所
    (1種場所、Zone1)
  • 第二類危険箇所
    (2種場所、Zone2)
ia <数えられる故障を2つまで考慮した電子機器>
  • 特別危険箇所
    (0種場所、Zone0)
  • 第一類危険箇所
    (1種場所、Zone1)
  • 第二類危険箇所
    (2種場所、Zone2)
ib <数えられる故障を2つまで考慮した電子機器>
  • 第一類危険箇所
    (1種場所、Zone1)
  • 第二類危険箇所
    (2種場所、Zone2)
ib <数えられる故障を2つまで考慮した電子機器>
  • 第一類危険箇所
    (1種場所、Zone1)
  • 第二類危険箇所
    (2種場所、Zone2)
- - ic
  • 第二類危険箇所
    (2種場所、Zone2)

樹脂充填防爆構造

「樹脂充填防爆構造」は、火花やアーク、熱などが発生する部分を絶縁性の樹脂で囲った防爆構造です。樹脂が容器を兼ねることも可能で、小型化することもできます。また他の防爆構造と組み合わせることも可能です。

デメリットとしては、バッテリーの交換ができない点や、絶縁性の樹脂で囲うことで発生する静電気への対策を行う必要がある点が挙げられます。また同じ樹脂充填防爆構造であっても、異常時における点火の恐れに応じて使用できる危険場所が異なるため注意しましょう。

構造規格の記号 構造規格で対象となる危険場所 整合指針の記号 整合指針で対象となる危険場所
ma
  • 特別危険箇所
    (0種場所、Zone0)
  • 第一類危険箇所
    (1種場所、Zone1)
  • 第二類危険箇所
    (2種場所、Zone2)
ma
  • 特別危険箇所
    (0種場所、Zone0)
  • 第一類危険箇所
    (1種場所、Zone1)
  • 第二類危険箇所
    (2種場所、Zone2)
mb
  • 第一類危険箇所
    (1種場所、Zone1)
  • 第二類危険箇所
    (2種場所、Zone2)
mb
  • 第一類危険箇所
    (1種場所、Zone1)
  • 第二類危険箇所
    (2種場所、Zone2)
- - mc
  • 第二類危険箇所
    (2種場所、Zone2)

非点火防爆構造

「非点火防爆構造」は、通常時だけでなく故障時においても、外部に引火する恐れのない電子機器だけに適用できる防爆構造です。「簡易防爆」と呼ばれることもあります。単純に「火災や爆発に至るまでの電気エネルギーがない」という条件のみで防爆構造として認められているため、防爆性能は低いです。危険度の低い第二類危険箇所(2種場所、Zone2)でのみ使用できます。

構造規格の記号 構造規格で対象となる危険場所 整合指針の記号 整合指針で対象となる危険場所
n
  • 第二類危険箇所
    (2種場所、Zone2)
nA
  • 第二類危険箇所
    (2種場所、Zone2)
nC
nR

特殊防爆構造

「特殊防爆構造」は、前述した耐圧防爆構造、内圧防爆構造、安全増防爆構造、油入防爆構造、本質安全防爆構造、樹脂充填防爆構造、非点火防爆構造以外の防爆構造のことを指します。公的機関の試験などによって安全性が確認され、認可を受けたもののみ危険場所で使用可能です。

有している防爆性能によって、使用可能な危険場所は異なります。

構造規格の記号 構造規格で対象となる危険場所 整合指針の記号 整合指針で対象となる危険場所
s
  • 防爆性能によって異なる
sa
  • 特別危険箇所
    (0種場所、Zone0)
  • 第一類危険箇所
    (1種場所、Zone1)
  • 第二類危険箇所
    (2種場所、Zone2)
- - sb
  • 第一類危険箇所
    (1種場所、Zone1)
  • 第二類危険箇所
    (2種場所、Zone2)
- - sc
  • 第二類危険箇所
    (2種場所、Zone2)

粉じん防爆普通防じん構造

「粉じん防爆普通防じん構造」は、容器の接合面にパッキンを取り付けたり、接合面の奥行きを長くしたりして、内部に粉じんが入り込まないようにした防爆構造です。また容器の温度上昇によって外部の粉じんに着火することを防ぎます。

粉じんには以下の2種類が存在しますが、粉じん防爆普通防じん構造は、可燃性粉じんが存在する危険場所でのみ使用できます。

粉じんの種類
可燃性粉じん
  • 小麦粉
  • 砂糖
  • 合成樹脂
  • 化学薬品
  • カーボンブラック
  • コークス
爆発性粉じん
  • チタン
  • マグネシウム
  • アルミニウム
  • ブロンズ

粉じん防爆特殊防じん構造

「粉じん防爆特殊防じん構造」は、粉じんによる爆発を防ぐための防爆構造です。容器の接合面にパッキンを取り付けて、内部に粉じんが入り込まないようにします。また容器の温度上昇が外部の粉じんに伝わらないように防ぐことが可能です。

前述した粉じん防爆普通防じん構造は、可燃性粉じんへの着火を防ぐものであるのに対し、粉じん防爆特殊防じん構造は、可燃性粉じんと爆発性粉じんの両方への着火を防ぐものです。

なお構造規格では、可燃性粉じんか爆発性粉じんかで防爆構造が変わりますが、整合指針の場合、防爆構造自体は「容器による粉じん防爆構造」の1種類で、危険場所ごとに使用できる電子機器が異なります。

【構造規格】

防爆構造 構造規格の記号 対象となる粉じん
粉じん防爆普通防じん構造 DP
  • 可燃性粉じん
粉じん防爆特殊防じん構造 SDP
  • 可燃性粉じん
  • 爆発性粉じん
【整合指針】
防爆構造 整合指針の記号 対象となる危険場所
容器による粉じん防爆構造 ta
  • ゾーン20
  • ゾーン21
  • ゾーン22
tb
  • ゾーン21
  • ゾーン22
tc
  • ゾーン22

機器の防爆構造の確認方法

防爆構造を施した電子機器(防爆機器)の性能は、英数字の記号で表されます。以下に、ここまで解説した防爆構造の記号を一覧でまとめました。なお、構造規格と整合指針で、表記が異なるケースがあります。

防爆構造 構造規格 整合指針
耐圧防爆構造 d d,da,db,dc
内圧防爆構造 f pv,px,py,pz
安全増防爆構造 e e,eb,ec
油入防爆構造 o o,ob,oc
本質安全防爆構造 ia,ib ia,ib,ic
樹脂充填防爆構造 ma,mb ma,mb,mc
非点火防爆構造 n nA,nC,nR
特殊防爆構造 s sa,sb,sc
粉じん防爆普通防じん構造 DP -
粉じん防爆特殊防じん構造 SDP -
容器による粉じん防爆構造 - ta,tb,tc

※ 「-」:該当の規格では対応する表示がない

日本の危険場所で防爆機器を使用するには、国から認可を受けている登録検定機関による「防爆構造電気機械器具に係る型式検定」を受け、合格した製品でなければなりません。試験に合格した防爆機器には合格証が発行されます。防爆構造を確認したい場合は、防爆機器の製造元・販売元から仕様書や合格証のコピーをもらい、上記の記号を確認しましょう。

防爆機器の記号についてより詳しく知りたい方は、以下のページもぜひ参考にしてください。

関連記事「防爆とは?防爆の基礎知識から近年のトレンドまで徹底解説」

まとめ

本記事では10種類の防爆構造をご紹介しました。それぞれに特徴があり、対象となる危険場所が異なります

防爆構造の種類を確認するには、防爆機器の記号をチェックしましょう。ただし同じ防爆構造でも、構造規格と整合指針で記号や対象の危険場所が変わるケースもあります。本記事でご紹介した内容を参考に、危険場所に適した製品を選ぶようにしてください。

防爆機器の導入を検討している方や防爆機器について不明点がある方は、防爆機器を多数取扱っているカナデンにお気軽にお問い合わせください。

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