企業が蓄電池を導入するメリット・デメリットや補助金制度、寿命についてわかりやすく解説

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蓄電池設備

災害発生時などに、大規模な停電が発生することは十分に想定されます。企業にとって、不測の事態に備えて電源供給が可能な仕組みを整えておくことは重要な課題の1つです。

この記事では、産業用蓄電池と家庭用蓄電池の違いや、企業が蓄電池を導入するメリット・デメリットをわかりやすく解説しています。災害対策以外の導入メリットや、導入に際して注意しておきたい点もまとめていますので、ぜひ参考にしてください。

蓄電池とは

電池のイラスト

そもそも「蓄電池」とはどのようなものを指すのでしょうか。主な蓄電池の種類と、産業用蓄電池・家庭用蓄電池の違いを整理しておきましょう。

一次電池と二次電池

電池とは、電気エネルギーを蓄積しておき、必要に応じて供給できるようにするための装置のことです。化学反応を利用して電気エネルギーを蓄積・供給する装置のことを「化学電池」といいます。化学電池のうち、乾電池のように使い切りタイプのものが一次電池、充電して繰り返し利用できるタイプのものが二次電池です。蓄電池は充電することで電気エネルギーを蓄え、必要なときに電気エネルギーを利用できることから、二次電池に含まれます。

化学電池には、このほかにも水素と酸素を利用して電気を発生させる「燃料電池」があります。発電時に二酸化炭素を排出しないことから、環境負荷の低い電源として近年注目されている化学電池です。

蓄電池の種類

蓄電池にはいくつかの種類があります。主な蓄電池の種類と基本的な仕組みは次のとおりです。

種類 仕組み 主な用途
鉛蓄電池 正極に二酸化鉛、負極に鉛、電解液に希硫酸を使用した電池 自動車のバッテリーなど
ニッケル金属水素化物電池 正極にニッケル酸化物、負極に水素吸蔵合金、電解液にアルカリ性の溶液を使用した電池 家庭用電子機器、充電式乾電池など
ナトリウム硫黄電池(NAS電池) 正極に硫黄、負極にナトリウム、電解質にβ-アルミナを使用した電池 非常用電源など
リチウムイオン電池 正極と負極をリチウムイオンが移動することで蓄放電する電池 スマートフォン、ノートPC、産業用機器など

製造業(工場)にて導入するなら産業用蓄電池

蓄電池には主に一般世帯での使用を想定して作られているものと、事業用途を想定して製造されている産業用蓄電池があります。両者の大きな違いは蓄えられる電気の容量です。産業用蓄電池は事業用途を想定して設計・製造されているため、事業用の設備として導入するのであれば産業用蓄電池の導入を検討するべきでしょう。とくに製造業(工場)では、多くの設備や機器に電力を供給する必要があります。自社が必要とする電力をまかなえる容量を備えた製品かどうかを慎重に見極めて導入することが大切です。

災害発生などに伴って停電が発生した場合、製造ラインを止めないためには予備電源の確保が必要です。また、近年では環境経営が重視されていることから、太陽光発電で生み出された電力を効率よく活用し、工場全体の電力消費量を抑えることも重要な取り組みの1つといえます。こうした背景から、製造業における産業用蓄電池の活用が注目されているのです。

【産業用蓄電池の製品例】

蓄電池のメリット

メリットの画像

製造業において蓄電池を導入することによって、具体的にどのようなメリットを得られるのでしょうか。主な5つのメリットについて解説します。

災害発生時に非常用電源として利用できる

1つめのメリットは、BCP(事業継続計画)に活用できる点です。大規模な災害が発生し、商用電源の供給が停止した際にも、蓄電池を非常用電源として活用できます。これにより、自社にとって重要度の高い製造工程を止めることなく稼働を続けられるでしょう。災害によって深刻なダメージを受け、事業の縮小や廃業を余儀なくされるリスクを抑制する効果が期待できます。製造業に求められるBCPについては、次の記事で解説していますので参考にしてください。

▶製造業に求められるBCP(事業継続計画)とは?策定の流れを事例とともに紹介

ピークカット/ピークシフトを実践できる

ピークカット/ピークシフトに役立つことも、蓄電池を導入する大きなメリットの1つです。法人契約の場合、電気代は契約電力(最大需要電力)をもとに算定されます。最大需要電力とは、一定期間内に測定された30分ごとの平均使用電力のうち、最も大きい電力のことです。最大需要電力を抑えるための考え方として、次の2つが挙げられます。

  • ピークカット:電力需要がもっとも高い時間帯の電力使用量を削減する
  • ピークシフト:電力需要が集中する時間帯を分散させる

商用電源と蓄電池の併用により、ピークカットやピークシフトを実現しやすくなります。ピークカットとピークシフトを併用することで、最大需要電力の削減効果をいっそう高められるでしょう。

環境経営の実現に役立つ

蓄電池の活用は、環境経営の実現にも役立ちます。環境経営とは、事業運営に伴う環境負荷を軽減し、持続可能な社会の実現に寄与する経営手法のことです。蓄電池の導入により、太陽光発電による再生可能エネルギーの利用率を高められます。結果として、CO2排出量の削減効果が期待できるでしょう。こうした取り組みがESG投資を呼び込む効果も生む可能性もあることから、近年は製造業においても注目が高まっています。

エネルギーセキュリティを強化できる

蓄電池の導入は、エネルギーセキュリティの強化にもつながります。エネルギーセキュリティとは、エネルギーの安定的な調達を適正価格で実現するための取り組みのことです。企業にとって、化石燃料由来の電力に依存するのは大きな経営リスクとなり得ます。世界情勢に応じて燃料価格が急変することも決して珍しくないからです。再生可能エネルギーを自社で生み出し、計画的に利用できる仕組みを整えておくことは、エネルギーセキュリティを向上させる意味において重要な取り組みといえるでしょう。

補助金制度を活用できる

国や自治体の補助金制度を活用できる場合があることも、蓄電池を導入するメリットの1つです。太陽光発電と蓄電池を組み合わせて導入した場合、各種補助金の支給対象となる可能性があります。蓄電池の導入には設備投資が伴いますが、設備の購入費や工事費用などの負担を補助金によって軽減できるでしょう。太陽光発電に関連する補助金制度や適用条件、申請方法については、次の記事もあわせてご参照ください。

▶【令和7年度】太陽光発電の補助金制度とは?適用条件や申請方法と合わせて解説

蓄電池のデメリット

天秤にかける

蓄電池の導入は企業に数々のメリットをもたらす一方で、注意しておきたいデメリットもあります。次の3点については、蓄電池を導入するにあたって十分に理解しておく必要があるでしょう。

導入時に初期費用がかかる

蓄電池を導入するには、本体の購入費用や設置工事費がかかります。こうした初期費用が必要になることは、短期的にはデメリットとして映るケースも少なくないでしょう。

ただし、中長期的な視点に立てば蓄電池の導入によって電気代の削減効果がもたらされ、将来的に初期費用を回収できる可能性があります。災害発生時に事業継続そのものが困難な状況に陥るリスクを回避できる点なども踏まえつつ、中長期的な視点で費用対効果を見極めることが大切です。

設置スペースを確保する必要がある

産業用蓄電池は一般家庭向けの機器と比べて大型になる傾向があります。屋内外のいずれに設置する場合も、相応のスペースを確保できるかどうかが条件となる点に注意が必要です。さらに、蓄電池は発熱することから、放熱性も考慮して設置場所を確保しなければなりません。他の設備等と近接することのない、風通しの良いスペースを確保できるかどうか、あらかじめ十分に検討しておく必要があります。

充放電の繰り返しによって劣化する

蓄電池は半永久的に利用できるものではなく、充放電の繰り返しによって劣化していきます。機種ごとに示されている充放電のサイクル数上限に達したら、基本的には買い替えが必要になると考えてください。導入前におおよその製品寿命を予測しておく必要があります。

また、設置後には定期的に点検やメンテナンスを実施しなければなりません。こうした設置後の維持コストがかかる点も織り込んで資金計画を立てておくことが大切です。

産業用蓄電池に関するよくある質問

産業用蓄電池について、よくある質問をQ&Aにまとめました。

蓄電池とは何ですか?

蓄電池とは、充電によって電気エネルギーを貯めておき、必要に応じて放電できるタイプの電池のことです。電池には大きく分けて使い切りタイプの一次電池と充電して繰り返し利用できる二次電池があります。蓄電池は二次電池の一種です。

また、蓄電池は鉛蓄電池、ニッケル水素電池、ナトリウム硫黄(NAS)電池、リチウムイオン電池など、充放電の仕組みによっていくつかの種類に分けられます。産業用蓄電池には、主にナトリウム硫黄電池やリチウムイオン電池が用いられています。

産業用蓄電池と家庭用蓄電池はどう違いますか?

産業用蓄電池と家庭用蓄電池の主な違いは、蓄えられる電気の容量です。産業用蓄電池は事業用途を想定して設計・製造されているため、事業用の設備として導入するのであれば産業用蓄電池を選ぶ必要があります。とくに製造業(工場)では、多くの設備や機器に電力を供給しなければなりません。自社が必要とする電力をまかなえる容量を備えた製品かどうかを慎重に見極めて導入することが大切です。

蓄電池を導入して電気を効率よく活用しよう

産業用蓄電池を導入することで、災害発生時に非常用電源として利用できるほか、ピークカット/ピークシフトを実現しやすくなる点が大きなメリットです。また、太陽光発電と組み合わせて再生エネルギーの利用率を高めることは、環境経営の推進にも役立ちます。化石燃料由来の電力依存度を抑え、自社で生み出される電力の割合を高めることにより、エネルギーセキュリティの強化にもつながるでしょう。今回紹介した蓄電池のメリット・デメリットを踏まえて、電気を効率よく活用するための仕組みを取り入れてみてはいかがでしょうか。

【産業用蓄電池の製品例】

カナデンでは、お客様一人ひとりの事業内容や設備状況を丁寧にヒアリングし、潜在的なリスクの洗い出しから最適なBCP対策の立案・実行までをサポートします。

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