製造現場のプロが知っておきたい「静電気」への万全の対策

2025年11月21日

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静電気はなぜ発生するのか?

「静電気」と聞くと、冬場にドアノブに触れた時の「バチッ!」という嫌なショックを思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし、製造や工事の現場においては、単なる「嫌なショック」では済まない大きな危険因子となり得ます。

そもそも、なぜ静電気は発生するのでしょうか。

すべてのモノは、プラスとマイナスの電気が釣り合った「原子」でできています。
しかし、2つのモノが「接触」したり、「摩擦」されたりすると、モノの間でマイナスの電気を持つ「電子」の奪い合いが起こります。

・電子を奪われたモノはプラスに帯電。
・電子を受け取ったモノはマイナスに帯電。

このプラスとマイナスの電気の偏りが、その場に溜まり続けている状態が「静電気」です。
特に、現場でよく使われるプラスチックやゴムなどの「絶縁体」は、電気が逃げにくい性質を持っています。
そのため、一度電気の偏りが発生すると、それがずっとその場に居座り続けるため、静電気が溜まりやすいのです。

製造業・建設業で静電気が引き起こす3つの主要な危険

現場における静電気は、主に以下の3つの大きな危険を引き起こす可能性があります。

①火災・爆発事故のリスク

最も注意が必要なのが、静電気による引火・爆発のリスクです。

ガソリン、シンナー、塗料の溶剤、アセトンなどの引火性の高い蒸気や粉じんが現場に存在する場合、静電気が放電する際に出る小さな「火花(スパーク)」が着火源となって、火災や爆発を引き起こすおそれがあります。

特に、

・塗料を扱う塗装工程 ・微細な粉末(ふんまつ)を扱う工程
・溶剤(ようざい)を扱う洗浄(せんじょう)工程

などでは、このリスクを常に意識し、万全の対策を講じる必要があります。

②電子部品の破壊と不良品発生

電子部品を扱う現場では、静電気が製品の品質を損なう深刻な原因となります。
半導体などの精密な電子部品は、わずかな静電気の放電でも回路が壊れてしまうことがあります。

・破壊:部品が完全に故障し、機能しなくなる。
・劣化:すぐに故障しなくても、徐々に性能が落ち、寿命が短くなる。

こうした不良は、製造過程で気づきにくいケースもあり、市場に出た後にクレームにつながる大きなリスクとなります。

③作業効率の低下(異物付着)

静電気は、製品や設備にホコリやゴミを吸い寄せる性質も持っています。

・フィルムやシートの搬送時に、ホコリが付着しやすくなる。
・異物混入の対策をしているクリーンルーム内でも、作業着や手袋に溜まった静電気が原因でホコリが吸着する。

これにより、不良品の増加、機械の停止、清掃作業の増加など、作業効率が大きく低下する結果を招きます。

静電気の危険を遠ざける具体的な対策方法

静電気による危険を防ぐためは、「静電気を発生させない」「発生した静電気を溜めない」「溜まった静電気を安全に逃がす」という3つの視点で対策を組み合わせることが重要です。

人体対策:作業者からの放電防止

現場の作業者からの静電気放電は、不良や事故の原因となりやすいため、最も基本的な対策となります。

・帯電防止服・制電作業着の着用
・リストストラップ(アースバンド)の着用:腕に装着し、人体に溜まった電気を常にアース(大地)へ逃がす。
・帯電防止靴と導電性床材の組み合わせ:靴を通して電気を床から逃がす仕組み。

設備・環境対策:アースと除電

設備や作業環境自体に静電気対策を施すことも不可欠です。

・設備のアース接続:金属製の設備や装置は、必ずアース線で大地に接続し、静電気が溜まるのを防ぐ。
・イオナイザー(除電器)の活用:空気にプラスとマイナスのイオンを発生させ、対象物の静電気を中和し、強制的に取り除く装置です。特に、プラスチックや紙などアースが取れない絶縁体の除電に有効です。
・湿度管理:湿度を高く保つ(目安:60%以上)ことも、空気中の水分を通して静電気を逃がしやすくするため効果的です。

正しい知識の教育

対策機器を導入するだけでなく、作業者一人ひとりが静電気の危険性を正しく理解し、対策機器を正しく使うことが最も重要です。

・保護具の正しい着用方法、使用方法の徹底
・静電気が発生しやすい行動(例:摩擦の大きい動き)の回避

これらの対策を地道に実行することが、安全な製造現場、高品質な製品づくりにつながるため、ぜひあらためて現場でご確認いただくことをおすすめいたします。

まとめ

静電気は、目には見えませんが、製造現場の安全と品質を脅かす大きな脅威です。

今回の記事でご紹介した「火災・爆発」「部品の破壊」「作業効率の低下」という3つの危険性を理解し、「人体対策」「設備・環境対策」を徹底することで、そのリスクは大幅に低減できます。

「バチッ」で済まない静電気の危険を遠ざけ、皆さまが安心して最高のパフォーマンスを発揮できる現場づくりを、私たちカナデンは全力でサポートいたします。
静電気対策でお困りのことがございましたら、いつでもお気軽にご相談ください。

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