データセンターの省エネ対策 なぜ今「義務化」の流れ?背景と効率化の具体策を解説

2025年11月14日

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なぜ今「データセンターの省エネ」が急務なのか?

現代のビジネスは、ITインフラなしには成り立ちません。
製造業や工事業に従事される皆様にとっても、工場のDX推進、IoTの活用、基幹システムの運用などで、自社のサーバー室や外部のデータセンターの存在は不可欠なものとなっているはずです。

一方で、これらのITインフラが消費する電力は、社会全体のデジタル化の進展に伴い、世界的に、そして日本国内でも増加の一途をたどっています。
政府の試算では、データセンターの電力需要増などが要因となり、2040年度の国内電力需要が現状から最大で2割程度増加する見通しまで示されています。

こうした状況を受け、政府が掲げる2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)達成のため、また昨今のエネルギー価格高騰による運用コストの圧迫に対応するため、エネルギーを大量に消費するデータセンターに対し、規制を伴う強力な省エネ対策が求められるようになりました。

本記事では、この「データセンターの省エネ義務化」の具体的な動向と、製造業や工事業の皆様が自社のサーバー室などで取り組むべき、具体的な省エネ対策について解説いたします。

参考記事:工場の設備別省エネ施策20選!コスト削減と脱炭素を両立

参考記事:【事例付き】工場(製造業)によるカーボンニュートラル実現への取り組みを解説

「省エネ義務化」の具体的な中身とは?

これまで、データセンターへの省エネ要請は「省エネ法(エネルギーの使用の合理化等に関する法律)」に基づき、エネルギー使用状況の報告や効率化の努力を求めるものが中心でした。
しかし、状況は大きく変わり、より踏み込んだ「義務化」へと舵が切られようとしています。

経済産業省は、省エネ法に基づく省令や告示を2025年度内にも改正し、データセンターに対するエネルギー効率の基準を設け、罰則を適用する方針を固めました。

報道によれば、その内容は以下のようになる見込みです。

・対象:2029年度以降に新設されるデータセンター
・基準:稼働2年後の電力使用効率(PUE)を「1.3以下」にすること
・罰則:基準を達成できない場合、改善計画の提出を求め、従わなければ改善命令が出される。
    それでも対応しない場合は、100万円以下の罰金が科される可能性があり。

さらに、既存の施設に対しても「2030年度にPUE1.4以下」という努力目標が設定されています。

この動きは日本だけのものではありません。
ドイツ(2026年7月以降に運転する施設はPUE1.2以下を要求)、中国(新設の大規模センターはPUE1.2以下目標)など、世界各国で同様の規制や基準づくりが進んでおり、データセンターの省エネは世界共通の課題となっています。

PUEとは? 省エネ義務化の基準となるエネルギー効率

地球

今回の「義務化」で基準として使われるのが「PUE(Power Usage Effectiveness)」という指標です。
これは、データセンターのエネルギー効率を示す世界的な標準指標です。

PUEは、データセンター全体の消費電力を、サーバーやストレージ、ネットワーク機器といったIT機器が消費する電力で割った値で算出されます。

PUE = データセンター全体の消費電力 ÷ IT機器の消費電力

この値が「1.0」に近いほど、IT機器以外の設備(主に空調や電源設備、照明など)での電力消費が少なく、エネルギー効率が非常に高いデータセンターであると評価されます。

経済産業省によると、2014年度以降に日本で建てられたデータセンターのPUE平均値は「1.47」とされています。
2029年度からの新基準「1.3以下」は、これと比べても非常に挑戦的な目標値であることがわかります。

仮にPUEが1.5の施設を1.2まで改善できた場合、電力消費は約2割も削減できる計算になり、PUEの改善が省エネに与えるインパクトの大きさがうかがえます。

PUE改善のために求められること

PUEを改善する、つまりIT機器以外の電力消費(特に空調)を減らすためには、どのような対策が有効でしょうか。
新しい規制は、まさにこの空調・冷却技術の革新を促すものです。

冷却・空調の技術革新

データセンターやサーバー室の電力消費のうち、約3割から5割は空調が占めると言われています。ここの効率化がPUE改善に直結します。

・冷却方式の見直し(空冷から液冷へ)

従来のサーバー冷却は、ファンなどによる「空冷」が主流でした。 しかし、PUE1.3以下の高い目標を達成するためには、より効率的な冷却方式が求められます。
そこで注目されているのが、水などの液体を使って直接的または間接的に機器を冷やす「液冷(水冷)」技術です。空気よりも熱を運ぶ効率が格段に高いため、空調全体の消費電力を大幅に削減できる可能性があります。

・外気導入(フリークーリング)と立地

冬季や中間期など、外の気温が低い時期に、その冷たい外気をフィルターでろ過して冷却に利用する「外気導入(フリークーリング)」も有効です。
また、年間を通じて気温が低い北海道などの冷涼な地域にデータセンターを立地することも、PUEの改善に大きく貢献します。

自社サーバー室でもできる運用改善

上記のような大規模な設備投資は難しくとも、製造業の皆様の自社サーバー室においても、PUE改善のためにできることは多くあります。
これらは効率化の基本であり、地道な取り組みが効果を生みます。

・空調設定温度の見直し

サーバー室は「寒ければ寒いほど良い」というわけではありません。過度に冷却することは電力の無駄遣いです。 IT機器の推奨動作温度(例えば18℃~27℃など)の範囲内で、設定温度を適切に(少し高めに)見直すことが重要です。

・IT機器の運用改善

1)サーバーの仮想化と集約

古いサーバーや使用率の低いサーバーが多数稼働していないでしょうか。
物理サーバーの台数を減らし、仮想化技術を用いて1台の高性能なサーバー上で複数のシステムを稼働させることで、サーバー自体の消費電力と、それに伴う冷却負荷の両方を削減できます。

2)不要な機器の停止

長期間使用されていない「ゾンビサーバー」や、用途を終えたネットワーク機器が、電源が入ったまま稼働し続けていないか、定期的な棚卸しと電源オフの運用が求められます。

省エネ対策の第一歩は「見える化」から

工場俯瞰イメージ

PUE1.3という厳しい新基準への対応、あるいは既存施設の努力目標(PUE1.4)達成のためには、まず現状のエネルギー使用状況を正確に把握する「見える化」が不可欠です。

これは、大規模データセンターに限った話ではありません。皆様の工場の生産ラインや設備ごとにエネルギー監視を行うのと同様に、自社のサーバー室においても、いつ(時間帯別、季節別で) ・どこで(どのラックで、どの空調機で)・どれくらい(電力、温度、湿度)」のエネルギーが使われ、どのような環境になっているかをデータとして把握しなければ、対策の優先順位も、実施した対策の効果測定もできません。

弊社では、こうしたデータセンターやサーバー室の「見える化」を実現するソリューションを豊富に取り扱っております。

御社の環境・業務に合わせた「エネルギー監視システム『Ever Green Vision』」や、1台で温度・湿度・照度・加速度・磁気(開閉)データの取得が可能な「おくだけセンサー『ロガー』」など、お客様の課題やご予算に応じた、さまざま機器やシステムをご提案いたします。

まとめ

デジタル化の進展に伴い、データセンターやサーバー室が社会インフラとして重要性を増す一方、その電力消費は増加の一途をたどっています。

「省エネ義務化」という罰則を伴う厳しい流れは、単なる規制強化と捉えるのではなく、ITインフラの技術革新とエネルギー効率の抜本的な改善を促す、社会全体からの要請と捉えることができます。

エネルギー効率の改善は、電力コストの削減という直接的なメリットだけでなく、ITシステムの安定稼働、そして企業の環境責任(CSR)を果たし、脱炭素社会に貢献することにも直結します。

まずは、皆様の会社のサーバー室の「見える化」から始めてみませんか。 私ども専門商社としての知見と技術を活かし、お客様の状況に合わせた最適な省エネソリューションをご提案いたします。
ぜひお気軽にご相談ください。

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