製造現場の事故を防ぐ!効果的な安全対策とその導入ポイント
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製造業は機械とともに作業するという性質上、機械と人が絡む労働災害が発生しやすいです。
機械は人の服などを巻き込んだとしても、急に停止することは難しく、深刻なケガに発展するケースが後を絶ちません。
また、一度労働災害が発生すると、適切な安全対策が取られているか労働基準監督署からの確認が入るため、生産量や売上への影響も大きいです。
今回は、製造現場の事故を防ぐために効果的な安全対策をご紹介します。
安全対策を行うためのアイテムも紹介するので、ぜひ参考にしてください。
製造現場における労働災害発生状況
製造現場で安全対策を実施するには、実際に発生している労働災害について理解を深める必要があります。
労働災害発生状況を理解することで、どのような安全対策が効果的か、また自社にはどのような安全対策が必要か、考えるきっかけになるでしょう。
製造現場における労働災害発生状況について詳しく解説していきます。
製造現場の死亡事故発生率
厚生労働省が令和7年5月に公表した「令和6年における労働災害発生状況(確定)」によると、製造業における死亡事故は142件発生しています。
製造業の死亡事故発生率は、建設業(232件)、第三次産業(194件)に次いで3番目に高く、安全対策の重要性が高い業種であると見て取れます。
実際に製造現場には、多数の機械や工具、重量のある資材など、さまざまな危険が存在します。
製造現場で死亡事故が発生してしまうと、以下のようなリスクがあるため注意が必要です。
- 社会的な信頼性の低下
- 従業員家族からの損害賠償請求
- 行政処分
- 労働安全衛生法違反で書類送検
製造現場で死亡事故が発生すると、死亡した従業員の家族から損害賠償を請求されるケースがあります。
また、適切な安全対策がなされていなかったとして、経営者は労働安全衛生法違反で書類送検される可能性もあります。結果的に社会的な信頼性を失うことにつながり、経営に支障をきたすことになるでしょう。
製造現場における責任者は、これらのリスクを回避するためにも、安全対策を徹底することが重要です。
※出典:「令和6年における労働災害発生状況(確定)」(https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei11/rousai-hassei/xls/24-16.xlsx)
製造現場で多発する労働災害の実状
ここからは、製造現場で多発する労働災害の実情についてデータで確認していきます。
厚生労働省が令和7年5月に公表した「令和6年における労働災害発生状況(確定)」によると、製造業における死傷事故は26,676件発生していることが分かっています。
発生状況の内訳としては以下のとおりです。
- 1位:はさまれ・巻き込まれ(6,114件)
- 2位:転倒(5,656件)
- 3位:動作の反動・無理な動作(3,222件)
- 4位:墜落・転落(2,945件)
- 5位:切れ・こすれ(2,221件)
製造現場は人と機械が同じ空間で作業するという性質上、はさまれ・巻き込まれ事故が多い状況にあり、特に注意が必要です。
※出典:「令和6年における労働災害発生状況(確定)」(https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei11/rousai-hassei/xls/24-16.xlsx)
製造現場で起こり得る具体的な事故リスク

製造現場で起こり得る具体的な事故リスクをご紹介します。
製造現場における具体的な事故リスクについて理解を深め、安全対策につなげていきましょう。
はさまれ・巻き込まれ事故
はさまれ・巻き込まれ事故は、製造現場でもっとも発生件数の多い事故です。
「令和6年における労働災害発生状況(確定)」によると、製造現場におけるはさまれ・巻き込まれ事故が6,114件も発生していることが分かっており、管理者には人が機械などにはさまれない・巻き込まれないための安全対策が求められています。
製造現場での、はさまれ・巻き込まれ事故には以下のような原因があります。
- 機械の誤作動
- 作業者の不注意
- マニュアルが徹底されていない
- 安全教育の不十分
武生労働監督署が公表している安全資料を見ると、製造現場で発生の多い、はさまれ・巻き込まれ事故のうち、約半数が非定常作業(保守作業・トラブル対応)において、機械の運転を停止しなかったことにより発生したことが分かっています。
製造現場の責任者は、通常作業だけでなく非定常作業にも目を向けて安全対策を徹底していくことが重要です。
※出典:「令和6年における労働災害発生状況(確定)」(https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei11/rousai-hassei/xls/24-16.xlsx)
※出典:「機械による「はさまれ・巻き込まれ」 災害の撲滅に向けて」(https://jsite.mhlw.go.jp/fukui-roudoukyoku/content/contents/001480527.pdf)
フォークリフト関連の事故
製造現場においては、製品の移動時にフォークリフトを活用している現場も少なくありません。
製造現場では、狭い通路や視界の悪い場所が多く、フォークリフトと作業員が衝突するリスクが高い傾向があります。
また、限られた場所に製品を保管しなければいけないため、高積みした製品が墜落・転落して作業員に当たるといった事故も多発しています。
このようなフォークリフト関連の事故が発生すると、作業員の死傷事故につながったり、製品が破損して損害を受けたりする可能性があるため注意が必要です。
高所作業における事故
製造現場では、以下のように高所での作業が必要な場面があります。
- フォークリフトによる資材荷上げ作業
- トラックの荷台からの積み下ろし作業
- 鋼板加工作業
中でも、足場の状態が不安定、無理な体勢で作業しているというケースにおいて事故が多発しているため、製造現場の責任者は安全対策を徹底した上で高所作業を指示する必要があります。
高所作業での労働災害は死亡や障害を負うなど、重大な事故につながる可能性が高い特徴があるので、特に注意が必要です。
製造現場の事故防止に効果的な安全対策

製造現場は数ある業種・業界の中でも、労働災害の危険性が高い傾向があります。
作業員の安全を守るためにも、企業・製造現場の責任者は安全対策と真剣に向き合う必要があります。
ここからは、製造現場の事故防止に効果的な安全対策をご紹介します。
作業前のKY活動の実施
KY(危険予知)活動とは、作業開始前に、その作業に潜む危険を事前に予測し、対策を作業員間で共有することで、労働災害の主要な原因である不安全行動(ヒューマンエラー)を防ぐ安全管理活動です。
製造業では、この活動を「KYサイクル」として日々の業務に組み込んでいます。これは「業務前」「業務中」「業務後」の3つの段階で安全を確認する活動です。
- 業務前: 始業時にミーティングを行い、その日の業務に潜む危険を話し合います。
- 業務中: 危険なポイントでは、一人ひとりが指差し呼称で安全を確認しながら業務を進めます。
- 業務後: 終業時にミーティングを行い、その日の危険箇所や対策を報告・共有します。
KYサイクルを定着させることで、作業員一人ひとりの危険に対する感受性が高まり、事故を未然に防ぐことにつながります。
作業時のヒヤリハット報告および共有
作業時のヒヤリハット報告および共有も、製造現場における安全対策として効果的です。
ヒヤリハットとは作業中に危ないと思った体験のことを指しており、共有することで作業員の危険に対する意識を高めることができます。
ヒヤリハットの例としては以下のようなことが挙げられます。
- 歩行中にフォークリフトとぶつかりそうになった
- 二人作業時に息が合っておらず物が落ちそうになった
- 機械に指をはさみそうになった
作業員からのヒヤリハット報告を共有して、同じヒヤリハットを繰り返さないための対策を考えることが重要です。
ヒューマンエラーの防止
製造現場ではヒューマンエラーの防止に関する安全対策が非常に重要です。
製造現場における労働災害のほとんどは不安全行動(ヒューマンエラー)が引き金となっているため、人間のミスをどれだけ減らせるかが事故防止のカギとなります。
ヒューマンエラーを防止するための一つの策として、安全に作業できる「マニュアル」を作成することが挙げられます。
安全対策に関する内容が記載されているマニュアルを作成すれば、OJT教育でありがちな「人によって教え方が異なり安全意識にばらつきが生まれる」といった事象を防げます。
また、マニュアルを作成する際は文面だけでなく動画でのマニュアルも導入することがポイントです。
作業ごとにどのような危険があるかもまとめて、ヒューマンエラーを防止しましょう。
5S活動の実施
製造現場の安全対策として、5S活動の実施も欠かせません。
5Sは「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「躾(しつけ)」の頭文字を取ったもので、製造現場の環境を整備する活動のことです。
5S活動を実施すると、製造現場に潜む危険を取り除くことができ、労働災害を防止できます。
「5Sは当たり前のことでは?」と思っている人も多いかもしれませんが、5Sを継続的に徹底できている製造現場は多くありません。
5S活動の実施は安全対策だけでなく、作業の効率化や生産性の向上などの効果にも期待できます。
安全パトロールの実施
製造現場においては、労働安全衛生規則で週1回以上の安全パトロールを行うことが義務付けられています。
安全パトロールとは、製造現場の安全状況を定期的にパトロールし、潜在的な危険を改善する活動のことです。
通常の業務のなかでは見過ごされやすいリスクを第三者視点で点検することで、事故を未然に防ぐことができます。
安全パトロールのチェック項目は多岐に渡りますが、一例としては以下のようなものが挙げられます。
- 通路に工具や部品が落ちていないか
- 機械の安全管理が適切に行われているか
- 作業員がきちんと保護具を着用して作業しているか
- 電気コードの断線やむき出し部分がないか
- 高所作業時の転落防止措置がとられているか
安全パトロールを実施する際は、単に指摘するだけでなく、その場で改善を行うことが重要です。また、なぜ指摘されたのか、どのように改善すれば良いかを職場全体で考えることで、安全意識の向上にも期待できます。
災害事例に学ぶ製造現場の安全対策

最後に、製造現場の災害事例とそれに伴う安全対策について紹介していきます。
進入禁止場所での事故事例
製造現場で、歩行中にピットに墜落してしまった災害事例をご紹介します。
発生状況
製造現場において作業者が忘れ物を取りに行くためにほかの作業員と別行動をとった際、製造現場の工事中ピットに墜落した。
製造現場内は、照明が不十分で視界が悪く、ピットの周囲には十分な安全対策が施されていなかった。
原因
原因としては以下のようなことが考えられます。
- 製造現場内に照明がなく、視界が確保できていなかったため
- ピットの周囲にフェンスやライトなどの安全処置が施されていなかったため
- 被災者が単独で行動したため
危険個所が多い製造現場に適切な安全対策が施されていない場合、労働災害が発生する可能性が高くなります。
対策
対策のひとつとして、製造現場内の照明設備を整えることが挙げられます。
特に危険個所の周囲には、誰が見ても危ないと分かる安全対策が必要です。
危険個所への進入を防ぐ方法としてはフェンスの設置も有効ですが、本災害のように暗い空間の中でも危険個所と認識するためにはライトの設置が不可欠です。
フォークリフト作業時の事故事例
製造現場でフォークリフトが作業員に衝突してしまった災害事例をご紹介します。
発生状況
フォークリフト運転者のAがバック走行中に安全確認を怠り、被災者Bを轢いて死亡させた。
フォークリフトにはサイドミラーが設置されていたものの、人を感知する機器は設置されていなかった。
原因
原因としては以下のようなことが考えられます。
- フォークリフト運転者の安全確認が不十分だった
- フォークリフトに人体検知機器を設置していなかった
- フォークリフトの作業範囲を明確に定めていなかった
フォークリフトを運転する際は、周囲の安全確認を徹底する必要があります。
対策
対策としては、フォークリフト運転者に対して指差し確認を徹底させることが挙げられます。
停止状態から動き出す前に指差し確認を徹底させることで、周囲確認の怠慢を防げます。
また、フォークリフト運行時は突発的に作業員が飛び出してくるケースもあるため、事故を防止するには人体検知機器の設置が不可欠です。
人体検知機器としては、AI技術が搭載されているフォークリフト用人検知警報システム『OV-1』がおすすめです。
AIによって人のみに反応する仕様となっており、反応距離は約1~6mの範囲で設定できます。
はさまれ・巻き込まれの事故事例
製造現場で作業員の腕が機械にはさまれてしまった災害事例をご紹介します。
発生状況
作業員が型打ち機でプラスチックシートを打ち抜いている際、右腕が機械にはさまれてしまい、肘から下を切断する重傷を負った。
機械には安全機能が搭載されていたが、作業効率のために意図的に無効化していた。
原因
原因としては以下のようなことが考えられます。
- 機械の安全装置が機能していなかったこと
- 機械に搭載されている安全装置のほかに安全機器を設置していなかったこと
- 製造現場における安全対策の重要性への理解度が低かったこと
対策
対策としては、機械に搭載されている安全装置を機能させることが挙げられます。
製造現場内には危険性の高い機械が複数設置されており、適切な安全装置の設置と定期的なメンテナンスが必須になります。
作業員同士の意思疎通が取られておらず、知らないうちに安全装置が無効化される可能性も考えられるため、機械に搭載されている安全装置とは別の安全機器の設置が推奨されます。
機械付近に設置する安全機器としては、機械に接近する人の安全を確保できる安全スイッチ『HS5L/HS1T/HS5E-K』がおすすめです。
まとめ
今回は、製造現場内における安全対策について解説しました。
製造現場で事故が発生すると、従業員のケガや社会的信頼性の失墜など、企業にとってよいことはありません。
従業員家族からの損害賠償請求や取引先との取引停止が重なり、倒産にまで発展してしまう可能性も考えられます。
製造現場の責任者は、本記事で紹介した安全対策を実施することが重要です。
また、必要に応じてフォークリフト用人検知警報システム『OV-1』、安全スイッチ『HS5L/HS1T/HS5E-K』nなど安全対策機器についても導入を検討してみてください。
製造現場の安全対策を徹底し、労働災害ゼロを目指していきましょう。




