振動センサで老朽化に備える!使用目的や種類・活用例
公開日:2024.03.12 更新日:2024.03.12
振動センサは、建物や設備などの劣化を早期に察知するためさまざまな場所で導入されています。建物などを長く安心して使うために重要な装置ですが、どの振動センサを使用するのが最適か迷う場合もあるでしょう。
振動センサには複数の種類があり、導入目的によって最適な機器が異なります。予知保全のために振動センサを導入するにあたり知っておきたい振動の概念や振動センサの基本的な仕組みを解説します。
振動センサとは?構造物の振動を計測する
振動センサとは、建物や設備などの震えを検知、計測し、数値化するシステムです。建造物だけでなく道路やダムなどの揺れの計測にも使用されます。
振動を数値化するための尺度は、変位・速度・加速度の3つです。
- 変位:測定対象の移動量、または大きさの変化量を表しています。構造物単体の振動や低速回転機器などの異常検知に適しています
- 速度:一定時間当たりの変位量が速度です。変位量を経過時間で割って求められ、各種モーターの異常検知に適しています
- 加速度:一定時間当たりの速度変化量が加速度です。ベアリングなどの異常検知に適しています
この3つは変換できる関係にあり、変位を微分すると速度、速度を微分すると加速度になり、反対に加速度を積分すると速度、速度を積分すると変位になります。
振動の定義と振動センサの仕組み
振動を計測するための尺度が3つあるのは、振動の仕方に種類があるからです。振動の定義、振動センサの基本構造を見ていきましょう。
振動の定義
広辞苑によれば、振動とは「①ゆれうごくこと。ふりうごかすこと。②物体が一つの中心のまわりを、ほぼ一定の周期をもって、ゆれうごくこと。また、電磁場・電流の強さで、ある量が一定値を中心に同様な時間的変化をする場合にもいう。」と明記されています。振動は、物体に何らかの力(押す力、低く力など)が加わった際、その物体が元の状態に戻ろうとすることで発生する物理現象です。
振動の種類は、加わる力の特性や減衰の有無などによって複数の種類があります。なかでも振動の方向による種類は、直線振動、曲げ振動、ねじり振動の3つです。
振動は前章で述べた変位・速度・加速度によって定量化されますが、周波数も大きく関係しています。変位を検知する振動の周波数はおもに100Hz以下、速度を検知する振動の周波数は10Hzから1,000Hz、加速度を検知する振動の周波数は1,000Hz以上です。
振動センサの基本構造
振動センサの構造は、一般的に振動を検知するセンサと、検知した振動を測定する機器が一体となっています。
センサ内にはおもりやバネが備えられ、外圧を受けて発生した振動が伝わります。振動を受けるとおもりは動き、その動きが電気を発する物質によって電気信号化される仕組みです。
振動センサの種類は?
振動センサの種類は、振動センサの設置方法や振動を伝えているものによってさまざまあり、接触式と非接触式に大別されます。
振動センサを使用する場合は、対象物に振動センサを取り付けられるかどうかや、振動の周波数などに応じ、最適な種類の振動センサを使用することが大切です。
接触式
接触式の振動センサは、測定したい対象物に直接固定して使用します。振動する本体とともに、センサ自体も振動することが特徴です
- 圧電型
水晶の単結晶やチタン酸バリウム(圧電素子)をバネとして使用し、力がかかったときに発生する電荷を測ります - 動電型
磁気回路中のコイルが力を受けて磁場の流束を切るように動くと、直角方向に運動速度に比例した起電力が発生する原理を用い、その電気量から振動を計測します - ストレインゲージ型
ストレインゲージ(電気抵抗線ひずみ計)を貼り付けた金属に荷重を加え、金属のひずみにより変化する抵抗値を測定しま。 - サーボ型
振り子の原理を応用し、地動と相対運動する振り子の運動を測定します
非接触式
非接触式の振動センサは、文字どおり振動する対象物には触れていません。振動センサと対象物間にある空間に電気を発する物質をおき、対象物の振動による変動を見ることで振動を測定します。
- 静電容量型
振動センサと対象物の間の静電容量から距離、振動を測定します - 渦電流型
高周波磁界を利用して距離、振動を測定します。 - レーザードップラ型
対象物から反射されたレーザー光の周波数変化(ドップラー効果)により振動を測定します。
振動センサを使用する目的
振動センサを使い建物や設備などの振動を測定することは、その建物や設備などを使用する人々の安全を守るために欠かせない検査です。振動センサはさまざまなシーンで活用されていますが、おもな使用目的は次の2つに分けられます。
建物や設備などの予防保全
建物や設備が劣化すると、熱の発生や異音などさまざまな変化が現れます。異常振動もその一つです。振動センサを使用して継続的にデータを取得することで、建物や設備などの不具合を早期に発見して分析し、予防保全に活用することが大きな目的です。
単に機械の故障を事前に察知するだけでなく、交換部品を速やかに手配する、機械故障によって起こる生産ラインの停滞を防止するなど、効率的な運用につながります。
異常な状態で生産された商品は不良品となる可能性も高く、振動センサの使用は不要な生産コスト増大の回避にもつながるでしょう。
また、マンションのエレベーターなどが故障し復旧に時間を要する場合など、適切なライフラインの維持を損なうケースに発展する場合もあります。老朽化や不具合について早い段階で対策し、体制を備えておくことが重要です。
検査ラインでの異常診断
すでにある設備だけでなく、製品の生産過程における検査においても、振動センサは重要な働きをします。特に電子部品などは、商品の耐久性や安全性を評価する指標として振動特性を測定することが一般的です。検査ライン上での振動の異常検知により、製品の仕組み改善や使用材料の変更を行ない、結果として品質の向上につながります。
どれだけ丈夫か、どれだけ長持ちするかがある程度判断でき、品質保証の策定にも活用される重要なデータといえるでしょう。これから商品を使う人々に信頼性の高い商品を届けることが大きな目的です。
振動センサの利用シーン
続いて、振動センサの具体的な利用シーンを紹介します。
建設現場や生産現場の機器
建設現場や生産現場には多くの機器が導入されています。振動センサの導入により、設備などの劣化や故障による生産ロスを未然に防止しています。
具体的な設備や部品などは、サーモモーターやインバーター、コンプレッサー、大型ファンなどです。ドリル折れやベアリングなどの故障予知も行ない、部品確保など迅速な対策に活用されています。
水流ポンプ
上下水道設備や排水設備において、水冷用ポンプや排水ポンプなど、定期的に水流ポンプの振動を測定しています。重要なライフラインである水にかかわる設備は、予知保全が必須です。
振動は劣化や故障を察知する重要な指標の一つであり、定期的な振動測定により人々の快適な生活が保たれています。
建物や設備の予知保全のため振動センサを活用しよう
振動センサは、建物や設備などの不具合を早い段階で察知して安全に長く使うために重要なシステムです。また、既存の設備だけでなく新たに生み出される商品の機能性向上にも活用されています。
振動センサは接触式と非接触式に分けられ、どの物質を用いて振動を計測するかによってさらに細かな種類があります。計測する振動の周波数が異なるため、対象物の振動の特性や振動センサを取り付けられる場所、電源の有無などをしっかりと確認して最適な振動センサを選ぶことが大切です。
カナデンでは、予知保全を振動センサの導入を含め、製造現場から経営システムまで、すべての階層を効率化する、トータルソリューションの提供も行なっています。お気軽にご相談ください。
振動センサのほかに、加速度から振動以外のデータも計測する加速度センサや、AE波から振動センサより高い周波数の振動を検知するAEセンサがあります。 今回紹介した振動センサの種類が、すべて予知保全に活用されているわけではありません。例えば、スマートフォンなど精密機器に使われる振動センサと予知保全に使われる振動センサは種類が異なります。振動センサの種類を細かく見るよりも、機能などに注目しながら自社にあった商品を選ぶとよいでしょう。