設備老朽化がもたらす3つのリスクとは?早期発見と適切な対策が肝心

公開日:2024.03.12 更新日:2024.03.12

設備老朽化がもたらす3つのリスク

生産性の低下やメンテナンスコストの増加といった問題から設備老朽化を解決したい場合、どのような対策を採ればよいのか悩んでいる企業も多いでしょう。

設備老朽化は早期の発見と対応が重要であり、放置すればさまざまなリスクを招きます。

一般的に、老朽化した設備には「リプレイス」および「オーバーホール」と呼ばれる対策を講じることが有効です。

この記事では、設備老朽化がもたらす3つのリスク、設備老朽化を早期に発見するための方法と有効な対策などを解説します。

設備老朽化とは

設備老朽化とは、設備を長期間にわたり使用し続けた結果、部品が摩耗するなどして、本来その設備が持っている性能を十分に発揮できなくなることをいいます。

メーカーの保証期間は5~10年間が一般的ですが、高額な初期投資をかけて導入した大型設備は何十年と使い続けることも少なくありません。

生産ラインを稼働させながら大型設備を入れ替えるのは費用面・用地面などから困難なため、多くの工場で応急処置的な修繕で延命措置を施しながら、老朽化した設備や機械がそのまま使われ続けているのが実情です。

設備の機械の故障が発生する可能性 (故障率)を縦軸、設置から経過した期間を横軸としてグラフに表すと、グラフの形は「バスタブ曲線」と呼ばれる曲線を描くのが一般的です。導入当初は設備や機械の欠陥によって故障率が高くなるものの、初期故障期を通してこうした故障は取り除かれます。

運用が安定してくると偶発故障期と呼ばれる期間に入り、偶発的に故障が発生します。これが、バスタブ曲線の底の部分です。さらに期間が経過すると摩耗故障期に入り、時間が経つほど劣化や環境要因による故障が増えていきます。

設備老朽化による影響を防ぐには、設備ごとのバスタブ曲線を踏まえ、予防保全・予知保全を適切なタイミングと方法で行なうことが重要です。

ちなみに、保全方法には上記の予防保全・予知保全のほか事後保全があります。

  • 予防保全:定期点検、定期メンテナンスといった定期的に実施する保全行為
  • 予知保全:IoT技術を利用してトラブルの発生を事前に予知する保全行為
  • 事後保全:実際に発生した故障や不具合に対応する保全行為
カナデン担当者からのコメント

すでに生産停止になっている設備や部品を、現在も継続して使われている企業様も多くいらっしゃるかと思います。使い続けてきた結果、頻繁に不具合が見られるためにご相談いただくケースが多いのですが、生産ラインの停止を防ぐためにも、設備が故障する前に予防保全・予知保全をするとよいでしょう。

設備老朽化がもたらす3つのリスク

設備老朽化がもたらす3つのリスク

設備老朽化を放置すると、以下3つのリスクを招くおそれがあります。

(1)生産性低下とコスト増加リスク

先述したように、老朽化した設備や機械は時間経過とともに故障や不具合の発生率が高まります。そもそも旧式設備は最新設備に比べると能力が劣るうえ、たび重なる修理に余分な時間がかかります。

設備が老朽化していると不良品が発生する頻度も高まり、検品や交換対応の手間を取られるでしょう。

また、生産以外での時間コスト、人的コストが増大してコストパフォーマンスが低下すると、結果的に生産性の低下と生産コストの増加リスクを招きます。

(2)従業員に危険が生じるリスク

老朽化した機械や設備を放置すると、従業員の「はさまれ」「巻き込み」や火災などの重大事象を引き起こすリスクもあるでしょう。

従業員に被害が出ると労災認定され、損害賠償請求や行政処分などのペナルティを負うことも考えられます。メディアに取り上げられるような事態になれば、報道を通じた社会的制裁を受け、企業イメージの大幅ダウンにつながる危険もあります。

設備老朽化の放置は、将来の企業活動に甚大な影響をおよぼしかねません。

(3)修理ができないリスク

設備老朽化は、設備や機械の修理不能を招くこともあります。設備や機械はメーカーにより随時モデルチェンジや新商品開発が行なわれており、一般的に導入から5~10年以上経過すると部品の供給がストップするケースも多くなります。

もし運転中に不具合を起こしたとしても、部品が思うように調達できず、修理不能で一時的に製造ラインを止めなければならないケースも考えられるでしょう。設備の入れ替えが必要になると生産停止が長期におよんで、売上や利益に大きく影響するかもしれません。

設備や機械が修理可能であるか日頃から確認しておき、部品の供給ストップなどで修理が困難になったら、なるべく早期に設備更新を検討しましょう。

カナデン担当者からのコメント

設備老朽化について、生産プラントや工場によっては、導入から30〜40年経過する設備を使用し続けているケースも多いです。古すぎて部品の供給が終了している、あるいはメーカーがなくなっているケースも多く、修理できずに生産が一時的にストップすることは大きなリスクと指摘します。また、メンテナンスできるスタッフがいなくなるリスクもあります。

設備老朽化を早期発見するための方法

設備老朽化を早期発見するための3つの方法を紹介します。

自主点検も含めた定期点検を実施する

予防保全・事後保全に不可欠なのは、日頃の設備点検です。設備や機械によっては定期的な法定点検が義務付けられているものもあります。しかし、それだけでは頻度が少なく、問題を長期にわたり見逃す危険性があります。

法定点検に加え、半年に1回・1年に1回といった一定の頻度で定期点検を実施し、異常をできる限り早く察知することが重要です。また、各担当者がつねに自主点検を行なう習慣を付け、業務のなかで日常的に設備の状態を確認すれば、より迅速に異常を発見できるでしょう。

点検結果や設備保全内容を記録し可視化する

自主点検を含めた定期点検を実施したら、毎回、その点検結果を記録して保管しておくことも大切です。記録する際は「いつ」「どの部分が」「どのように故障したか」も記しておきましょう。

記録を残しておくと、不具合が起こりやすい場所の傾向が明確になります。繰り返し同じ場所で不具合が確認される場合、設備更新の必要が迫っているのかもしれません。点検内容や故障・不具合の発生を「見える化」することで、設備更新や修繕の適切なタイミングを見極められるようになります。

点検結果や保全内容の可視化が適切な予防保全を可能にし、老朽化による大規模な生産停止などのリスク軽減につながるのです。

IoTデバイスによる予知保全を行なう

各担当者による自主点検は、いち早く異常を発見できる可能性があるものの、担当者全員がそうした異常に気付けるわけではありません。今後労働力不足が深刻化するにつれ、人の目や担当者の感覚・勘に頼るのは困難になるでしょう。

これからの予知保全には、IoTデバイスの積極的な導入が欠かせません。設備にIoTデバイスをつなげれば、リアルタイムで設備・機器のデータを収集できます。異常の予兆をとらえ、設備老朽化による3つのリスクを未然に察知できるのです。

老朽化対策として有効な「リプレイス」と「オーバーホール」

「リプレイス」と「オーバーホール

老朽化した設備を見つけた際は、次の2つの対策が有効です。

設備を置き換える「リプレイス」

「リプレイス」とは、老朽化が目立つ現在の設備を新たな設備に置き換えることです。老朽化による3つのリスクを軽減できることに加え、最新機器への置き換えによって生産性向上や生産コストダウンなども期待できます。

リプレイスは、経済産業省「DXレポート」において指摘されている「2025年の崖」を乗り越えるためにも重要です。「2025年の崖」とは、ブラックボックス化された既存システムがDX化されないまま運用されることにより、2025年以降に1年当たり最大12兆円もの経済損失が生じる可能性があるという見通しを指します。

出典:経済産業省「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」

機械や設備を修繕しながら長く大切に使う考え方も大切ですが、「2025年の崖」を回避するには、リプレイスによってシステムや設備を時代に合ったものに置き換えていく必要があるでしょう。

将来の労働力不足への対策として、リプレイスで産業用ロボットを取り入れるのも有効な選択肢です。

修理や部品交換で対応する「オーバーホール」

設備ごと新しいものに置き換える「リプレイス」に対し、既存設備に適切な修理や部品交換を施すことで老朽化に対応する方法が「オーバーホール」です。

定期的なオーバーホールの実施は予防保全の要素の一つであり、故障や不具合のリスクヘッジが見込めます。老朽化していた既存設備がオーバーホールによって本来の性能を取り戻すことができれば、低下していた生産性や安全性の回復にもつながるでしょう。

オーバーホールはリプレイスに比べて費用を低く抑えられるため、老朽化への日常的な対処として効果的です。

2つの方法を選択する際の考え方

設備老朽化が進行しているとき、リプレイスとオーバーホールのどちらを選択すればよいのでしょうか。

オーバーホールは比較的安価に実施できるメリットがある一方、既存設備の延命措置的な意味合いがあるため、生産性向上やコスト削減にはそれほどつながりません。

リプレイスは費用がかかるものの、最新設備の導入により生産性向上や機械寿命の延長につながる点が大きなメリットです。

このように老朽化の程度と投資にかけられる予算によって選択が異なります。

老朽化の程度が軽く予算に限りがある場合はオーバーホールを検討し、老朽化が進行して予算をかけてでも生産性向上が必要な場合はリプレイスを検討するとよいでしょう。

昨今深刻化の一途をたどっている労働力不足に対応するためには、産業ロボットや最新システムを取り入れた設備のリプレイスを検討するのもおすすめです。

カナデン担当者からのコメント

設備老朽化に対しては新規購入も有力な対策です。もちろん新規購入はリプレイス・オーバーホールに比べて費用がかかります。ただ、最新機器はエネルギー効率が向上しているため、リプレイスやオーバーホールよりも新規購入のほうがトータルでは経済的という場合もあります。当社では長期的な目線も持ちながら、リプレイス・オーバーホール・新規購入を比較検討し、お客様にとって最適なソリューションを提案しています。

まとめ

設備老朽化を放置すると、「生産性低下とコスト増加リスク」「従業員に危険が生じるリスク」「修理ができないリスク」の3つのリスクを招くおそれがあります。これらのリスクは生産ラインに影響を与えるだけでなく、不良品の増加や労災の発生などにより、企業の信用問題にかかわることもあるでしょう。

3つのリスクを回避するには、リプレイスやオーバーホールといった対策を検討することに加え、日頃の適切な保全行為による設備老朽化の早期発見が求められます。

そこで重要になるのが「予防保全」とIoT技術を活用した「予知保全」です。

カナデンは、製造現場の品質と生産性アップにつながる自動化システムなどのFA機器、メカトロニクス商品などを用いて、設備老朽化などの製造現場が抱える悩みに応えるトータルソリューションを提供。製造ラインの自動化、可視化が適切な予防保全、最新の予知保全を可能にします。

設備老朽化への対応や深刻化する労働力不足への対策を検討しているなら、カナデンにご相談ください。カナデンの高い技術と提案力で製造現場のDX化を強力にサポートいたします。

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