サーモグラフィカメラとは?活用事例や失敗しない選び方
公開日:2024.03.12 更新日:2024.06.03
サーモグラフィーカメラの活用を検討してはいるものの、関連知識が足りず「本当に導入する必要があるのか」「どんな製品を選ぶべきか」と悩まれている企業担当者の方も多いでしょう。
サーモグラフィーカメラは、赤外線を検知し、隠れた危機を事前に検知するカメラです。サーモグラフィーカメラは、用途に合わせて「熱画像解像度」や「フレームレート」などの性能に注目して適した製品を選ぶ必要があります。
この記事では、サーモグラフィーカメラの基礎知識や活用事例、最適な選び方などを紹介します。ぜひ参考にしてください。
サーモグラフィーカメラとは?
そもそも「サーモグラフィー」とは、物体から放射される赤外線を検知し、温度を色分けして表示する技術です。
この技術を用いて温度を可視化できるカメラをサーモグラフィーカメラといい、「赤外線カメラ」や「サーマルカメラ」とも呼ばれます。可視化の際には、高温部分が暖色(赤)、低温部分が寒色(青)で表示されるのが一般的です。
サーモグラフィーカメラの種類には天井設置型やハンディタイプまでさまざまなものがあり、取得したデータを取り込める製品もあります。
サーモグラフィーカメラで「危機」を事前に検知する重要性
サーモグラフィーカメラを活用することで、危機を事前に検知し、対策を講じることが可能です。ここでは、危機を事前に検知することで得られる利点を解説します。
生産性が上がる
問題を早期に発見できるため、迅速な対応で最悪の事態を回避することにつながります。
また、万が一設備の故障や停止に陥っても、発見が早ければ復旧までの時間も早くなり、生産の中断時間を最小限に抑えられます。
問題が表面化する前に予防措置を講じられることから、スタッフは予防的なアクションを取りながら作業ができます。そのため、ユーザビリティの向上や、生産性アップも期待できます。
コスト削減につながる
サーモグラフィーカメラの活用は、装備や設備の不具合に対して先手を打った予防策を可能にし、故障リスクの軽減につながります。そのため、企業は修理やメンテナンスといった関連コストを削減できるでしょう。
さらに、サーモグラフィーカメラは環境や装置を非接触監視できるため、従来の監視方法と比べて人件費削減も期待できます。
セキュリティが向上する
暗闇や見通しの悪い場所において、不審者などの侵入や温度変化を検知できることがサーモグラフィーカメラの利点です。建物全体や広範囲の一括監視が可能となるため、大型施設などのセキュリティ向上につながります。また、昼夜を問わず24時間体制の監視にも適しています。
問題を早期発見でき、すぐに対応できる
異常な温度を検知するサーモグラフィーカメラは、危機管理の観点から非常に重要です。
隠れた問題や危機を早い段階で察知することで、迅速な対応を可能にし、事態が深刻化する前に手を打つことができます。また、このような利点は、前述した生産性向上やコスト削減につながるのです。
サーモグラフィーカメラの特長
前述のとおり、サーモグラフィーカメラには危機を事前に検知できる特性から、多くの業界で活用されています。
ここでは、サーモグラフィーカメラの特長を5つ紹介します。
見えない熱を可視化できる
サーモグラフィーカメラは、肉眼ではとらえることのできない赤外線を可視化し、熱画像として生成します。温度の高いものを赤く、低いものを青く表示し、さまざまな情報を取得することが可能です。
サーモグラフィーカメラでは、人が見ることのできない温度分布や温度変化を正確に把握できます。
非接触でも測定できる
一定の距離を保ちながら、非接触で対象物の表面温度を測定できるのも、サーモグラフィーカメラの特長です。
近づくことが難しい感染症対策や危険物の監視などに活用されています。また、衛生面から手で触れることができない生鮮食品の検査などにも役立っています。
暗闇でも撮影できる
赤外線は通常の光より透過性が高く、暗闇でも温度測定が可能です。そのため、サーモグラフィーカメラは地下の作業現場や夜間警備など、光の届かない場所でも活用されています。また、夜間のリアルタイムモニタリングも可能です。
霧や煙で視界が悪くても撮影できる
サーモグラフィーカメラは、暗闇と同様に、霧や煙の立ち込める見通しの悪い場所でも使える測定機器です。
視界が悪い状況でも人やモノを撮影できるため、消防や災害の現場などでも有用とされています。また、製造現場などでのトラブル発生時には、迅速な対応をするための助けとなることもあります。
広い範囲を測定できる
カメラで広範囲の対象物の表面温度をチェックできるのも特長の一つです。一度に多くの対象物を測定できるため、製造ライン上にある複数の機器を管理しやすくなります。
また、広範囲で人の表面温度を測定できることから、医療機関や空港などの人の出入りが多い場所で、発熱者を検知するのにも活用されています。
コロナの感染拡大対策の一環として、非接触で温度を測定できるサーモグラフィーカメラの認知度・導入率は大きくアップしました。
サーモグラフィーカメラは、以前は100万~200万円といった非常に高額な価格でした。しかし、現在はさまざまなシーンで活用されるようになったこともあり、種類にもよりますが10万円程度で購入できるものもあります。
サーモグラフィーカメラの選び方
ここでは、実際にサーモグラフィーカメラを選ぶポイントを性能別に紹介します。
画像精度を求めるなら「熱画像解像度」で選ぶ
熱画像解像度は、画像をどれだけ細かく鮮明に表現できるかを測る指標です。解像度が高いほど、細かい温度差や詳細な温度分布を取得できます。
解像度の高いサーモグラフィーカメラの場合、小さな温度変化を鮮明に測定でき、精密な温度マッピングを作成することが可能です。熱変化が重要となる機器や、科学的調査にも向いています。
動くモノの温度を測るなら「フレームレート」で選ぶ
フレームレートは、1秒当たりに何回画面が更新されているかを示す数値です。フレームレートが高いほど、動くモノの温度変化を素早く検知できます。
フレームレートの高いサーモグラフィーカメラは、動きの激しい状況を測定するのに最適です。ベルトコンベア上を移動する製品の温度管理などにはフレームレートの高いものを選ぶとよいでしょう。
温度差を精密に測るなら「温度分解能」で選ぶ
温度分解能とは、検知可能な最小の温度差のことです。温度分解能が高いほど、小さな温度差を正確に測定できます。
温度分解能に優れたサーモグラフィーカメラは、医療診断に用いるような精密さが要求される機器に適しています。商品開発や研究におけるデータ測定時にも、有益な結果を期待できます。
幅広い温度を測るなら「測定温度範囲」で選ぶ
測定温度範囲とは、正確に測定できる温度の最小値から最大値までの範囲のことです。 測定温度範囲が広いほど、幅広い温度を測定できます。
例えば、冷凍食品の品質管理であれば最小値の低いもの、高熱を扱う金属加工には最大値の高いものを選ぶ必要があります。業界や用途に合わせて、適した測定温度範囲のサーモグラフィーカメラを選びましょう。
Wi-Fi対応や出力方法などの「機能」で選ぶ
性能面以外の機能も、サーモグラフィーカメラ選びの重要なポイントです。
Wi-Fiに対応しているか、使用環境、用途、データの活用方法などによって必要な機能は異なります。また、サイズや設置方法なども確認して選ぶとよいでしょう。
サーモグラフィーカメラを選ぶ際にまず考えるべきは、「何度から何度まで測れるのか」を表す測定温度範囲です。そのうえで、温度差をどれくらい精密に測るのか、測定したいエリアはどれくらいの広かなど、導入目的に応じて製品を選ぶとよいでしょう。
企業の担当者様が、自らさまざまな製品を比較検討したり複数社に見積もりを依頼したりするのは大きな手間がかかるのではないでしょうか。
カナデンでは、商社としての面を活かして、複数メーカーのサーモグラフィーカメラをご紹介できます。企業様のニーズに合った最適な製品を提案できるため、ぜひお気軽にご相談ください。
サーモグラフィーカメラの活用例
最後に、サーモグラフィーカメラの具体的な活用シーンをいくつか紹介します。
制御盤などの継続監視
サーモグラフィーカメラを導入すると、電気キャビネットや配線などの制御盤の温度を継続的に監視できます。
制御盤の温度変化をリアルタイムでモニタリングできるため、異常な熱を感知して問題を早期に発見し、修復することが可能です。
サーモグラフィーカメラの活用による危機検知は、火災や故障などの深刻なリスクの軽減につながるでしょう。
製造装置の継続監視
サーモグラフィーカメラは、製造業における装置の継続的な監視にも役立ちます。
例えば、ベルトコンベアなどの製造装置の動作中に生じる熱の変化をリアルタイムでとらえることが可能です。
そのため、製造装置の可動部分が異常な熱を帯びたときにも早期に察知できます。潜在的な故障や劣化を素早く特定し、製造工程に欠かせない装置の故障や生産停止などのリスクを減らすことにつながります。
倉庫や冷蔵倉庫の継続監視
サーモグラフィーカメラは、倉庫や冷蔵倉庫内の管理においても有用です。
倉庫内の温度が異常に上昇したり低下したりした場合、サーモグラフィーカメラはその温度変化をスピーディーに検知できます。
これにより、温度調整設備の劣化の予知や保全を行なうことが可能です。また、製造品目の状態監視に活用することで、品質の保証や規格の遵守を確認できます。
製造設備の日常点検や定期点検
現場で扱いやすいコンパクトなサーモグラフィーカメラは、日常点検に向いています。
例えば、ヒューズの異常温度や空気漏れ、配管設備などの隠れた問題を簡単に特定できます。また、顧客とすぐに画像を共有したい場合や、修理内容を記した報告書を作成する際にも役立つでしょう。
このように、サーモグラフィーカメラで監視・点検することで、異常な熱を帯びた製品などを検知可能です。万が一、閾値を超えた箇所を発見した際は、リプレイスやオーバーホールを実施することで、いち早く予防保全を行なえます。
火災報知機や煙感知器が反応するような状況では、すでに火災が発生してしまっているという現実があります。そのため、火災関連のヒヤリハットを経験した企業様が、「異常温度を検知して火が出る前に対応したい」というニーズから、サーモグラフィーカメラを導入する事例が増えています。
また、サーモグラフィーカメラは安全対策だけでなく、食品製造業の品質管理などのさまざまな業種・用途で役立つ製品です。温度を「見える化」することで得られるメリットは多岐にわたるので、製造業全体でサーモグラフィーカメラの導入はますます増えるでしょう。
まとめ:サーモグラフィーカメラを活用して「隠れた危機」を事前に察知しよう
赤外線を検知して温度を可視化するサーモグラフィーカメラは、潜在的な危機を事前に発見できる重要なツールです。制御盤や製造装置、倉庫管理や日常点検などあらゆる場面での活用が期待できるでしょう。また、導入により企業の生産性向上やコスト削減にもつながります。
製造現場のリスクを軽減し、より効率的な経営を実現するために、サーモグラフィーカメラの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
カナデンでは、製造現場から経営システムまでの全階層の効率化につながるトータルソリューションを提供しています。
従来の温度検知方法は、対象物に直接触れて検知する「熱電対」や、非接触で赤いスポットの当たったポイントを検知する「スポット式非接触温度計」の使用が主流でした。
しかし、サーモグラフィーカメラの場合は、対象物の温度を「点」ではなく「面」で確認したいというニーズに応えられます。利便性の高さから、サーモグラフィーカメラを導入する企業様が増えています。