工場の省人化・少人化とは?成功事例や省力化との違いをわかりやすく解説
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生産年齢人口が減少に転じ、製造業においても人手不足への対策や生産性向上が求められています。工場における省人化・少人化は、生産性を高める上で欠かせない視点の1つといえるでしょう。
この記事では、工場の省人化・少人化に関する基本的な考え方や省力化との違い、省人化の基本的な進め方についてわかりやすく解説しています。工場における省人化の成功事例とあわせて見ていきましょう。
省人化・少人化とは
そもそも省人化・少人化とはどのような考え方を指すのでしょうか。省力化との違いや、省人化が求められている背景を理解しておくことが大切です。
機械化や自動化によって人員削減を実現すること
省人化・少人化とは、業務遂行に必要とされる労力・時間・工程などを削減し、従来よりも少人数での稼働を目指すことを指します。工場においては、機械化や自動化の取り組みが省人化・少人化につながるケースが少なくありません。
たとえば、従来は3名の作業者が必要だった工程を機械化することにより、オペレーター1名で業務をこなせるようになるのは、省人化の好例といえます。このように、生産量そのものを減らすことなく人員を削減するのが省人化・少人化のポイントです。
省力化との違い
省人化と似た言葉として「省力化」が挙げられます。省力化とは、業務遂行に必要な労力・時間・工程を削減し、負担軽減を図ることです。作業工程の見直しや機械の導入などを通じて、同じ作業をより少ない労力でこなせるようにすることが省力化の目的といえます。したがって、何を目的として省力化に取り組むかによって次の2つのパターンが想定されるでしょう。
作業人員は現状のまま負担軽減を図るパターン
作業担当者の負担軽減を図ることが目的のパターンです。より無理なく余裕をもって作業を進められるようにすることが目的のため、省力化の達成と省人化の実現はイコールではありません。
人員削減を図るために省力化を図るパターン
省人化を達成するための手段として省力化に取り組むパターンも考えられます。省力化に成功することでより少人数での稼働が可能になり、結果として省人化も達成しやすくなるからです。
工場の省人化が求められている背景
昨今、工場の省人化が求められている背景として、次の3つの要因が挙げられます。
人手不足への対応
少子高齢化は労働市場に深刻な影響をもたらしつつあります。現状の製造工程を維持するために必要な人員を、今後も確保し続けられるかどうかは不透明になっているのが実情です。今のうちから少人数でも稼働できる仕組みを確立しておくことは、事業を持続可能なものにする上で非常に重要なポイントといえます。
生産性向上
製造工程の生産性を高めることも、省人化を目指す目的の1つです。より少人数で無理なく作業を進められるようになることで、より高い利益率が見込めます。一方で、製造コストを削減できたとしても、作業者1人あたりの負担が増し、長時間労働を余儀なくされるような事態は避けなければなりません。単純に人員を減らすのではなく、より合理化・効率化された製造工程の確立が求められています。
事故の発生リスク抑制
工場の省人化は、事故の発生リスク抑制にも効果を発揮します。機械化や自動化を推進することにより、そもそも人の手を必要とする工程を削減できるからです。ただし、人員を削減したことによって作業者の負担が従来よりも大きくなり、人的ミスが多発するようでは本末転倒です。安全な作業環境を維持しつつ人手が必要な工程を減らしていくには、作業環境の改善と省人化をセットで進めていく必要があるでしょう。
省人化の基本的な進め方
ここからは、工場の省人化を進める際の基本的な手順を紹介していきます。
1. 現状の作業内容を可視化する
はじめに、現状の作業内容を洗い出して可視化しましょう。どのような手順で作業を進めているのか、フローチャートなどにまとめていくと共有しやすくなります。それぞれの工程で平均してどれだけの時間がかかっているのか、必要とされる人員は現状何名なのかを明確にしておくことが大切です。現状を正確に把握することにより、省人化の取り組みが求められる工程が見えてきます。
2. 作業工程の3Mを洗い出す
次に、洗い出した作業工程のうち3Mが生じているポイントを特定しましょう。3Mとは「無理」「無駄」「ムラ」のことです。作業者に大きな負荷がかかっていたり、作業の重複が見られたりするようなら、改善していく必要があります。また、必ず人の手や目視で行わなければならない工程かどうかも見極めることが重要です。この段階で省人化を推進する優先順位を見極めておくことにより、改善を図るべきプロセスを絞り込みやすくなります。
3. 作業の標準化を進める
作業工程の改善を図る際には、標準化を意識することが重要です。標準化とは、共通の基準やルールを明確化することを指します。担当者によって作業の手順が異なっていたり、独自の解釈で作業を進めたりすることのないよう、もっとも効率よく作業を進められる方法を検討し、ルール化しましょう。こうして決定した作業工程をマニュアルとして明文化し、いつでも確認できる状態にしておくことが大切です。
4. 必要に応じてIT/IoTを導入する
作業工程の改善に向けてITやIoTの活用が可能な工程に関しては、導入も視野に入れて検討しましょう。効果的にIT/IoTを取り入れることによって、自動化や負担軽減が実現できる可能性があります。設備やツールの導入ありきで考えるのではなく、あくまでも作業工程の改善に寄与する手段としてIT/IoTを導入するのがポイントです。
製造業におけるIoTの重要性や具体的な活用事例については、次の記事で詳しく解説しています。こちらもあわせてご参照ください。
▶製造業におけるIoTの重要性とは?活用事例・低コストでの導入方法をご紹介
5. 従業員への周知を図る
改善後の工程や作業の進め方について従業員へ周知し、共通認識を形成しましょう。従来の作業工程と新たな作業工程が混在することのないよう注意が必要です。従業員に説明する際には「工程がどのように変更されたか」といった結果だけでなく、「なぜ変更したのか」の過程を丁寧に伝えることが求められます。必要に応じてIT/IoT機器の操作方法や使用時の注意点などをレクチャーする機会を設け、従業員が新たな作業工程に馴染めるようにサポートすることが大切です。
省人化の成功事例
省人化を実現する上で欠かせない取り組みの1つが業務効率化です。IT/IoTを有効活用することで、業務効率化に成功した事例を紹介します。
事例1:稼働状況のモニタリングによる改善・効率化
工場設備の稼働状況を把握し、稼働率の見直しにつなげた事例です。具体的には、設備のPLC情報を収集し、稼働状況監視モニタに表示することにより、設備の遠隔監視やデータの蓄積・分析ができるようにしました。
結果として、生産設備の実稼働状況がガントチャートで表示されるようになり、稼働率が可視化されました。また、詳細な稼働状況監視によりボトルネックを早期発見し、稼働率向上に向けた改善活動に役立てることができました。
【稼働状況のモニタリングに役立つ製品例】
- 設備稼働監視ソリューション『稼働アップNAVI』
タワーライトに取り付けるだけで設備の稼働状況をワイヤレス送信。表示ソフトを標準装備しており、リアルタイム表示&データ収集を手軽に始められます。
- 工程監視構築ツール『JoyWatcherSuite』
さまざまな用途の監視システムを容易に構築できる開発ツール。機械・装置単体から生産工場やプラントといった大規模な監視システムまで構築可能です。対話形式でパラメーター設定ができるため、特別な知識は不要でシステムを構築できます。
事例2:設備点検をDX化して効率化を実現
設備の点検業務にかかる負担を軽減し、効率化を図った事例です。点検データをオンラインで集約した上で、グラフ化・帳票化・アラーム発報を自動化。
これにより、タブレットやインカムによる簡単な入力のみで点検作業を完了させられるようになり、業務効率化につながりました。また、点検項目や下限・上限値をあらかじめ設定しておくことにより、転記ミスの予防に役立った点も大きなメリットです。タブレットをクレードルに戻すだけで点検データが自動でグラフ化され、リアルタイムで共有されることから、異常発生時の対応にも寄与しています。
【設備点検のDX化に役立つ製品例】
- 設備点検システム『Smart Tenken Vision』
点検漏れや転記ミスを防止するとともに、結果のグラフ化や共有も可能な設備点検システム。直感的なタブレット入力で点検作業を進められ、点検結果は自動でグラフ化されます。点検終了後はタブレットをLANに接続すると点検終了と確認のメールが自動で送信されるため、異常が見られた際にも迅速な対応が可能です。
事例3:生産データの一元管理で生産性を向上
製造工程・人の動き・スケジュールを可視化し、生産性向上を実現した事例です。設備・ユーティリティの監視データと生産データを統合し、一元管理することにより、生産性向上や品質向上、コスト削減に寄与しました。製造プロセスの進捗状況をリアルタイムに把握できるため、生産ライン全体のスケジュール管理が容易になったことも大きな成果の1つです。
【生産データの一元管理に役立つ製品例】
- SCADAソフトウェア『GENESIS64™』
FAとITのデータを一元的に管理し、さまざまなデータの監視・分析ができるソフト。OPC™、MODBUS®といった業界標準のオープンなプロトコルに対応しており、多様な機器と簡単に接続できます。また、異なるシステムから取得したデータを体系的に整理し、システム全体から設備・機器単位まで管理できるため、設計から運用・保守に至るライフサイクル全体にわたって効率的なシステム運用を実現します。
工場の省人化についてよくある質問
工場の省人化について、よくある質問をQ&Aにまとめました。疑問点や不明点の解決に役立ててください。
省人化と省力化はどう違いますか?
- 省人化:労力・時間・工程の削減を通じて現状よりも少人数での稼働を目指すこと
- 省力化:作業の負担軽減を図ること
省力化は必ずしも省人化を前提としていません。ただし、省人化を実現するには、省力化を推進する必要があるケースも多いのが実情です。つまり、省力化は省人化を達成するための手段の1つともいえます。
工場で省人化を推進するメリットは?
工場で省力化を推進するメリットは、主に次の3点です。
- 人手不足の解消につながる
- 生産性向上を実現しやすくなる
- 事故の発生リスクを抑制できる
人の手を介する業務を機械化・自動化することにより、従来よりも少ない人員で業務をこなせるようになります。結果として生産性向上につながるとともに、事故が発生するリスクを抑えられる点が大きなメリットです。
効率的な工場環境の実現に向けて省人化を推進しよう
工場における省人化・少人化は、今後ますます生産年齢人口が減少していく中で講じておきたい対策の1つといえます。現状の作業内容を丁寧に精査し、必要に応じてIT/IoTを活用することで、効果的に業務効率化と省人化を実現できるでしょう。今回紹介した省人化の進め方や成功事例を参考に、ぜひ効率的で安全性の高い工場環境を実現してください。
カナデンでは、お客様の工場が抱える人手不足や生産性に関する課題に対し、省人化を実現するための最適なソリューションをご提案しています。まずはお気軽にお問い合わせください。