産業用VRとは?製造業での活用事例や導入メリット、手順を解説

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VRを使用する人

近年、産業用VRの活用がさまざまな業界で進みつつあります。VRグラスを見たことはあるものの、具体的な活用シーンやメリットに関しては把握していないという方も多いのではないでしょうか。

本記事では、産業用VRに関する基本事項や活用が期待されている業界、製造業における活用例を紹介しています。産業用VRの導入手順にもふれていますので、ぜひ参考にしてください。

1. 産業用VRとは

はじめに、産業用VRの基本事項を整理しておきましょう。一般的なVRグラスや、スマートグラスとの違いを理解しておくことが大切です。

1. VRとは何か

VRグラスとは、仮想現実(VR)を体験するためのウェアラブルデバイスの総称です。頭や体の動きに合わせて360度仮想空間に没入できるため、ゲームやシミュレーション、トレーニングなど幅広い用途で活用されつつあります。

VRと似た言葉に「AR(拡張現実)」があります。ARは現実世界の視界にデジタルデータを重ねることで、得られる情報量を拡張するための技術です。これに対してVRは仮想世界に入り込むための技術を指します。

2. 産業用VRと一般的なVRの違い

産業用VRとは、産業界での利用を前提に設計・開発されているVRデバイスのことです。一例として、トレーニングや安全確保、コスト削減といった利用目的が想定されています。

一方、一般的なVRデバイスはエンターテイメントや教育、消費者体験などが主な用途です。基本的な仕組みは産業用VRと同じですが、製造現場や建築現場といった耐久性が求められる環境下での使用や、専門的な用途への対応は想定されていない点が異なります。

3. スマートグラスとVRの違い

スマートグラスはメガネ型デバイスの総称です。通信機能やセンサ、カメラ、マイク、スピーカーのほか、レンズの部分にディスプレイが搭載されています。通常のメガネと同様に現実世界を見つつ、ディスプレイに映し出される情報を確認できる点が特徴です。前述のAR技術は、現実世界の視界にデジタルデータを映し出すARグラスに活用されています。ARグラスもメガネ型デバイスのため、スマートグラスの一種です。

これに対して、VRは視界を完全に覆い、仮想世界に没入することを想定して開発されています。現実世界の視界を遮断する点がスマートグラスとの大きな違いです。

2. 産業用VRの活用が期待されている業界の例

VRを使用する作業員

産業用VRは、さまざまな業界で活用が期待されています。ここでは一例として、製造業界・建築業界・医療福祉業界の例を見ていきましょう。

1. 製造業界

製造業界では、次のようなVRの用途が想定されます。

  • 製造工程のシミュレーション:仮想空間内で製造工程を構築してテスト運用する
  • 安全教育:事故や危険な状況を仮想空間で体験する
  • 技術継承:ベテラン作業員の手元を仮想空間で間近に見る
  • モックアップ制作:仮想のモックアップを制作し、手に取って確認できる状態にする
  • デザインレビュー:仮想空間で制作した試作デザインについて意見を出し合う

大規模な設備や危険な状況を現実世界で用意するとなると、多くのコストと時間を要します。現実世界の制約を受けることなくVRで表現できることは、製造業界にとって大きなメリットです。

2. 建築業界

建築業界でのVR活用例として、次のものが挙げられます。

  • 設計やデザイン:実際に建築物を造る前に仮想空間でシミュレーションをする
  • 作業員のトレーニング:高所での作業などを仮想空間で体験する
  • 熱や空気の流れの可視化:現実世界では目に見えないものを可視化して示す
  • 内覧会など:現地に赴くことなく仮想空間で内覧やリフォームイメージを体験できる

現実世界で体験する前に仮想空間での体験が得られることは、VRの大きなメリットです。大がかりな工事を実施したり、研修施設を手配したりすることなく、臨場感のある体験ができるでしょう。

3. 医療福祉業界

医療福祉業界では、次のような用途が期待されています。

  • 施術トレーニング:仮想空間で施術を行い、スキルアップを図る
  • 介護体験:実際に介護に携わる前に仮想空間で体験しておく
  • 医師間/患者とのコミュニケーション:診断結果や施術イメージを共有する
  • 新薬開発:3Dモデルで表現された分子構造を用いて新薬開発のシミュレーションを行う

VRは没入感が得られるため、あたかも目の前で行われていることのように実感しやすい点が特徴です。こうしたVRの特性を活かして、言葉や静止画では説明が難しかったことをスムーズに伝えられる可能性があります。

3. 製造業における産業用VRの活用例

VRを使用する作業員

前述のとおり、製造業はVR活用が期待されている分野の1つです。ここでは、具体的な活用方法の一例を紹介します。

1. 保全業務の省人化・省力化を実現

製造現場に設置されている設備や機器を仮想空間に再現することで、保全業務の省人化・省力化に役立つ可能性があります。仮想空間に設置したプラントや製造工場、インフラ設備で物理的なシミュレーションを実施し、より効率的な運用方法や機械類の配置などを試行錯誤できるからです。実際に設備や機器を配置後、判断ミスや想定外の事態に気づくといったリスクを低減できるでしょう。

【製品例】

予知保全の重要性については、次の記事で詳しく解説しています。

▶予知保全とは?導入の重要性や知っておくべきメリットと導入フロー

また、工場の省人化・少人化については次の記事もあわせてご参照ください。

▶工場の省人化・少人化とは?成功事例や省力化との違いをわかりやすく解説

2. 仮想空間でトレーニングを実施

実際の設備・機器を操作する前に、仮想空間でトレーニングを実施することも可能です。操作ミスが重大な危険を招くような状況下においても、安全性を確保しつつシミュレーションを行えます。

とくに事故の未然防止に関しては、危険な状況を仮想空間で体験できる点が大きなメリットです。火傷や機械に巻き込まれる状況などは、実際に試すわけにはいきません。臨場感のある仮想空間で危険性を実感することによって記憶に残りやすくなり、実際の現場で注意力が高まる効果が期待できます。

【製品例】

3. モノ・ヒトの流れを仮想空間でシミュレーション

製造現場におけるモノ・ヒトの流れをシミュレーションする方法もあります。製造ラインや加工プロセス、物流倉庫、マテハン(マテリアルハンドリング)などをシミュレーションすることで、ボトルネックの発見や作業工程の効率化に役立つでしょう。

シミュレーション結果を時系列でグラフ化し、視覚的にわかりやすく示すことも可能です。さまざまな状況を手軽にシミュレーションすることは、仮想空間だからこそ実現できるメリットといえます。

【製品例】

4. 産業用VRの導入手順

チェックリスト

産業用VRを導入する場合、どのような手順で進めればよいのでしょうか。導入時の基本的な流れを紹介します。

1. 導入目的を整理する

はじめに、自社がVRを導入する目的を整理します。現在の製造工程や組織体制のうち、VRによって解決が期待できる課題をピックアップしましょう。課題に優先順位をつけた上で、VR導入の費用対効果を検討します。

VR関連機器の導入には初期費用がかかりますが、将来的な利益増やコスト削減につながるのであれば、初期費用を回収できる可能性があります。たとえば従業員のトレーニングにVRを導入する場合、トレーニングに要する期間が大幅に短縮されるようならコスト減が見込めるでしょう。こうした費用対効果の検証を適切に行うためにも、導入目的を明確にしておくことが大切です。

2. 仕様・機能の要件を定義する

次に、目的を達成するにはどのような仕様・機能が必要になるかを検討します。VRで何を実現したいのか、どのような機能が備わっていれば課題解決につながるのかを詰めておくことが大切です。

その上で、必要な機能を実現するための要件を定義します。要件に沿って機能の実装に向けた設計を進めましょう。

3. コンテンツを制作する

VRで体験するコンテンツの制作を進めていきます。工程や作業手順を反映させたシナリオを作成し、3Dモデルや3D映像の開発を制作会社などへ依頼しましょう。コンテンツの再現度によって臨場感が大きく左右されるため、要望を詳細に伝えることが大切です。

また、コンテンツ制作会社によって、得意とするジャンルが異なる点にも注意しましょう。産業用VRの開発実績があるか、自社と同じ業種の制作を手がけたことがあるか、といった点をヒアリングしておくことをおすすめします。カナデンでもVRコンテンツの制作会社をご紹介しておりますので、ぜひご相談ください。

4. テスト運用を行う

試作品を現場にテスト導入し、実際の手順や動作と異なる点を洗い出していきます。ベテランの実務担当者に試作品を使ってもらい、改善点を挙げてもらうのが得策です。調整が必要な箇所がまとまったら、開発会社や制作会社に修正を依頼します。

完成したVRコンテンツは、まず一部の部門やチームで導入してから徐々に適用範囲を広げていくとよいでしょう。デバイスの操作方法なども含めて、丁寧にレクチャーを行うことが大切です。

5. 定期的にアップデートを行う

VRデバイスの運用が始まると、ユーザーによるフィードバックや利用履歴が蓄積されていきます。たとえばトレーニングに使用するVRコンテンツであれば、重要なポイントがユーザーに伝わっているのかヒアリング調査などを実施するとよいでしょう。

また、実務上の操作手順や作業工程が変更された際には、コンテンツも速やかに修正する必要があります。VRで体験したことと、実際の作業内容が異なるといったことがあると従業員が混乱する原因になりかねません。運用開始後も定期的なアップデートを行うことが大切です。

産業用VRは製造業の可能性を広げるデバイス

産業用VRを取り入れることで、現実世界ではコスト面などの事情により試しにくいことや、危険を伴う状況などを仮想空間で体験できます。製造業においても、従来は実現が難しかったことが仮想空間で思う存分できるといったシーンは多々あるでしょう。物理的な制約を受けない仮想空間のメリットを活かして、事業の可能性をいっそう広げてみてはいかがでしょうか。

産業用スマートグラスは、製造現場の生産性向上や人材育成、技術継承の効率化に大きく貢献するデバイスです。カナデンでは、遠隔作業支援や点検業務に活用できるスマートグラスをはじめ、現場課題に応じたソリューションをご提案しています。導入目的に合わせた製品選定や活用方法の検討など、詳細なご相談にも対応可能です。産業用スマートグラスの導入をご検討中の方は、ぜひお気軽にお問い合わせください

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