フィジカルAIとは?生成AIとの違い、注目が集まる理由や活用分野を解説

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産業用ロボット

AIが急速に進歩を遂げつつある中、「フィジカルAI」実現への期待が高まっています。頭脳+身体を備えたAIの台頭はSF作品の世界ではなく、もうすぐそこまで来ている現実的な話なのです。

本記事では、フィジカルAIの基本的な仕組みや注目が集まっている理由、活用が期待されている主な分野についてわかりやすく解説しています。フィジカルAIの実用化に向けた課題点も挙げていますので、ぜひ参考にしてください。

フィジカルAIとは

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はじめに、フィジカルAIとはどのようなものかを整理しておきます。生成AIやロボティクスAIとの違いを押さえておくことが大切です。

センサ・AI・アクチュエーターを備えたシステム

フィジカルAIとは、頭脳と身体を備えたシステムの総称です。センサが感覚器、AIが脳、アクチュエーターが身体の役割を果たすことで、五感で外界の状況を判断し、自律的に対応できるシステムのことを指します。

感覚器+頭脳+身体の組み合わせは、私たち人間に備わっている基本的な機能と極めてよく似ています。つまり、人間のように外界から情報を得て判断し、行動できるロボットを「フィジカルAI」と呼んでいるのです。

生成AIとの違い

近年急速に普及しつつあるChatGPTやGemini、Copilotといった生成AIは、スマートフォンやPCなどのデバイスで利用します。ユーザーが端末を操作し、プロンプトと呼ばれる指示文を入力・送信することにより、AIが文章や画像、動画といったアウトプットを生成する仕組みです。

一方、フィジカルAIとはロボットなどの機械とAIが融合したシステムのことを指します。ユーザーによる入力を介さず、センサなどから取り入れた情報をもとに自律的に動作を行える点が大きな違いです。

ロボティクスAIとの違い

ロボティクスAIとは、AIを搭載したロボットのことです。AIが動作を最適化し、効率化する点に特徴があります。ただし、AIが果たす役割はあらかじめプログラムされた動作の補正やサポートです。人間によるプログラムありきで動作しているという点で、従来のロボットの延長線上にある技術といえるでしょう。

これに対して、フィジカルAIは外界を知覚し、自ら判断を下して動作するシステムです。プログラムありきではなく、外界から得た情報にもとづいて適した動作を判断できる点に大きな違いがあります。

フィジカルAIの基本的な仕組み

フィジカルAIがどのような仕組みで動作しているのか、基本的な知識を整理しておきましょう。

センサ

センサとは、カメラやLiDAR、マイクといったインプットを得るための装置のことです。LiDARとは、照射したレーザー光の反射光から対象物までの距離やその形状を計測する技術を指します。人間にたとえると、目や耳に相当する役割を果たす装置です。

マルチモーダルAI

マルチモーダルAIとは、画像や音声、文字情報、センサ情報といった複数のデータを同時処理できるAIのことです。センサから取り入れられた視覚・音声・言語などの情報を統合し、処理する能力を備えています。私たち人間は五感から得た情報をもとに状況を把握していますが、これに近い処理を可能にするのがマルチモーダルAIです。

行動生成モデル

行動生成モデルとは、他のロボットや人間の振る舞いを予測したり、自ら創出したりできるAIモデルのことです。周囲の環境を分析し、目的を果たすための動作や経路、計画などを自律的に生み出せます。確率分布にもとづき、状況に合わせた柔軟な振る舞いを可能にするのが行動生成モデルです。

物理シミュレーション環境

物理シミュレーション環境とは、仮想空間上に再現された動作検証用の環境のことです。現実世界でフィジカルAIが動作した際に発生し得るリスクや、必要とされる対応策を検証しながら開発を進めるために用いられます。現実世界にはじめからフィジカルAIを投入するのではなく、さまざまなリスクへの対策を講じる上で欠かせない仕組みといえます。

学習データ

学習データとは、AIに与えるためのデータのことです。現実世界で起こり得る状況をデータとして用意し、AIに学習させることによって、環境への適応能力を一定以上の水準に引き上げられます。

また、フィジカルAIが稼働し始めてからも、AIによる学習は継続します。外界から得た情報を学習データとして活用することで、より適切な対応が可能になるという仕組みです。

フィジカルAIに注目が集まっている3つの理由

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フィジカルAIが注目されている要因は多岐にわたりますが、ここではとくに重要な3つの理由を見ていきましょう。

理由1:生成AIの応用分野としての位置づけ

フィジカルAIは、生成AIの応用分野として位置づけられている面があります。生成AIはデジタル空間で文章や画像、映像などをアウトプットできるようになった点が大きな特徴です。プログラミングスキルを備えた人材でなくても、自然言語によってAIに指示を出せるようになったことは大きな進歩といえます。こうした生成AIの機能をさらに拡張し、デジタル空間を超えて現実世界で活用されるためのステップがフィジカルAIと考えられているのです。

理由2:社会課題の解決につながる可能性がある

フィジカルAIは、人手不足など社会課題の解決につながる技術としても注目されています。労働人口の減少に伴い、慢性的な人手不足に直面している業界は少なくありません。こうした業界の中には、物理的な作業を伴う業種も多いのが実情です。人に代わって現場作業を担えるロボット等の実用化を、多くの業界が待ち望んでいます。フィジカルAIがその解決策となり得ることから、大きな期待が寄せられているのです。

理由3:先進技術とのシナジー効果

人型ロボット(ヒューマノイド)のような先進技術とのシナジー効果が期待できることも、フィジカルAIが注目されている理由の1つです。人間との共存が日常生活レベルで可能なロボットを開発するには、人間に近い動作や判断が可能になる必要があります。フィジカルAIが先進技術と融合することで、人間社会に溶け込むロボットの開発がいっそう進むことが期待されているのです。

フィジカルAIの活用が期待されている主な分野

フィジカルAIは幅広い分野で活用が期待されています。その代表的な5つの業界と、主な活用例や期待されている導入効果は次のとおりです。

製造業

製造業は長年にわたって生産工程にロボットを活用してきた業界です。ただし、従来のロボットに関しては、あらかじめプログラムされた定型的な動作が中心でした。未知の状況や、事前に登録されていないワークへの対応は困難だったのが実情です。フィジカルAIを導入することで、臨機応変に状況を判断し、自律的に対応する人間の能力に近い役割を担うことが期待されています。

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倉庫・物流業

倉庫・物流業では、倉庫で安全に作業を進められるロボットが求められています。事故を未然に防ぐには、荷物や作業者を避けて通行したり、多種多様なサイズ・重量の荷物を適切に扱ったりしなくてはなりません。従来は人が担ってきたこれらの作業をフィジカルAIに委ねられるようになれば、倉庫作業の自動化・省人化がいっそう進むでしょう。人手不足への対応や業務効率化の観点から、フィジカルAIの導入に期待が集まっています。

自動車製造業

自動車製造業では、自動運転領域におけるフィジカルAIの活用が期待されています。自動運転技術を搭載した車には、交通状況や歩行者の様子などを検知し、初見の状況にも対処する能力が求められるからです。外界から情報を取り入れ、自律的に判断して適切な動作を選択できるフィジカルAIは、まさに自動運転で求められている技術といえます。人による運転以上に正確で安全性が考慮された自動運転車の実現に向けて、フィジカルAIの技術がいっそう活用されていくでしょう。

医療分野

医療分野においては、フィジカルAIの外科手術ロボットへの応用が期待されています。外科手術には複雑で繊細な動作が不可欠です。人命に関わる処置であることから、高精度な動作をミスなく行えるロボットを開発しなければなりません。また、患者によって血管の走り方や臓器の位置・大きさなどは異なるため、自律的に判断して動作するロボットの開発が求められています。フィジカルAIはこうした課題を解決し、医療現場の負担軽減を実現する技術として注目されているのです。

介護・福祉分野

介護・福祉分野では、利用者の体格や体重、体の動きに合わせて歩行や起き上がりをサポートするロボットが求められています。職員の負担を軽減し、人手不足に備えるためにも必要な技術といえるでしょう。また、フィジカルAIには利用者のメンタルサポートの役割を果たすことも期待されています。話し相手になることで孤独感を和らげたり、コミュニケーション力の維持に貢献したりといった、従来は職員が担ってきた役割の一部を代替できる可能性があるからです。

フィジカルAIの実用化に向けた課題

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フィジカルAIは多方面から期待が寄せられている技術であると同時に、実用化に向けて乗り越えていくべき課題も内包しています。次に挙げる4点は、技術面・倫理面の課題となり得るでしょう。

安全性の確保

フィジカルAIは機械である以上、安全性をどう確保するかが重要な課題となります。想定外の挙動が生じる可能性も否定できないことから、事故につながるリスクをどう制御するかがポイントです。たとえば、緊急停止の条件設定をどのように行うか、判断基準をどう設けるかといった点を慎重に検討しなければなりません。

また、AIが学習に利用するデータの収集範囲や、プライバシー確保をどう規定するかも必ず検討しておくべき点です。情報漏えいや不適切なデータ利用につながることのないよう、ルール策定を進めていく必要があります。

省電力化の実現

フィジカルAIをはじめとするAI活用が世界規模で広がるにつれて、電力使用量は避けられない課題となっていくでしょう。世界中でAIが稼働するようになると、データセンター、AIモデルによる学習、推論処理などによって大量の電力を消費するからです。いかに省電力の仕組みを確立し、持続可能な運用を可能にするかが課題となります。消費電力の抑制は、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みとも表裏一体です。省電力化の実現は、フィジカルAIを実用化する上で避けて通れない課題といえます。

判断プロセスの透明化

判断プロセスとは、AIが学習・判断する際のプロセスのことです。どのような判断プロセスをたどったのかを、人間が理解できるAIのことを「説明可能なAI(XAI)」といいます。AIの機械学習アルゴリズムが複雑化するほど、判断プロセスが不透明になっていく可能性は否定できません。開発者さえも理解できない判断や動作を繰り返すフィジカルAIは、人間にとって脅威にもなり得ます。こうしたブラックボックス化を防ぐためにも、判断プロセスの透明性をどう担保していくのかが問われます。

メリットとリスクの理解促進

フィジカルAIの実用化について、メリットとリスクをバランス良く理解することも大切です。急速に進化するAIに対する不安を解消し、メリット・リスクの両面を正確に理解してもらうための啓蒙活動を技術の開発と同時並行で進めていく必要があります。AIを正しく活用し、特有の危険性や誤った利用方法について、社会全体でリテラシーを向上させるための取り組みが求められていくでしょう。

フィジカルAIは今後期待されている分野の1つ

用途によっては人の脳を超える処理能力を備えたAIに、感覚器と身体が備わることで、いよいよ現実世界で人間と共存可能なロボットが誕生するでしょう。本記事で解説してきたフィジカルAIは、決して遠い未来の話ではありません。間もなく私たちの暮らしの身近なところでフィジカルAIが活用され、多方面の業界で課題を解決していく時代が訪れることが期待されます。

カナデンでは、製造業を中心に産業用ロボットを多数取りそろえています。産業用ロボットの選定や導入について、是非お気軽にご相談ください。

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