画像処理の成否は照明で決まる!LED照明を選定する3つのポイントと精度を向上する方法

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外観検査装置(ビジョンシステム)

「画像処理や画像検査の精度を高めたい」と、高精度カメラの導入を検討する方も多いでしょう。しかし、本当に高精度な画像処理を実現するためには、カメラだけでなく「最適な照明の選定」が欠かせません。なぜ照明選びが、画像処理に大きな影響を与えるのでしょうか。

本記事では画像処理における照明の重要性や照明選びのポイント、高精度の画像検査を実施するための具体的な方法を解説します。検査精度を高めるためのソリューション事例もご紹介するので、画像処理・画像検査に課題を感じている方はぜひ参考にしてください。

【この記事で分かること】

  • 画像処理において照明が重要な理由
  • 最適な照明を選ぶために押さえておくべき3つのポイント
  • 画像処理・画像検査の精度を高めるためのソリューション

なぜ画像処理において「照明」が重要なのか?

目視による検査よりも精度を高められる画像検査は、製品の品質を維持する上で重要な検査方法の一つです。近年はAIを活用した高度な判別も可能になっていますが、その精度を大きく左右する要因の一つが「照明」です。

人は、対象物に当たった光の反射により物を認識します。暗闇で物が認識できないのは、光の反射がないからです。

画像検査は、カメラが人の目の代わりとなり、同じ仕組みで対象物を認識し、欠陥や異常を見つけ出します。そのため、光の反射から得られる情報がなければ、どれほど高性能なカメラやAIを使っても正確な判定はできません。

画像検査の精度を向上させるには、カメラがより正確な情報を取得できるよう、適切な照明を用いることが重要です。不適切な照射環境では、カメラが必要なデータを十分に得られず、検査精度が低下する恐れがあります。

特に、近年普及が進むAIによる高精度な判定を実現するためには、対象物から必要な情報を的確に抽出できる照明が必要不可欠です。

LED照明を選定する際に押さえておきたい3つのポイント

画像検査の照明には、白熱灯や蛍光灯よりも点灯の応答時間が短く、発光色や光量、波長などの自由度が高い、LED照明が主流となっています。

ここからは、画像検査に用いるLED照明を選ぶ際に押さえておきたい3つのポイントを見ていきましょう。

画像処理照明の選択で基本となる「光の当て方」で選ぶ

3つの光の基本的な当て方の図

LED照明を選ぶ際は、「光の当て方」を重視することが大切です。光の基本的な当て方には、以下の3つがあります。

  • 正反射光
  • 拡散反射光
  • 透過光

これらには、光の対象物への作用と、反射光のカメラへの届き方の違いがあります。どのような対象物を検査するのか、何を検出したいのかによって、適切な光の当て方ができる照明を選ぶことが大切です。

3つの光の当て方について、詳しく見ていきましょう。

正反射光:鏡面ワークの傷・凹凸を強調する

正反射光とは、光を当てたときに入射角と反射角が等しくなる照射方法です。光が拡散せずにそのまま強く反射するため、カメラは鮮明な反射光を受け取ることができます。

反射の強さは、対象物が鏡面仕上げであるか、また表面に傷や凹凸があるかによって変化します。特に、鏡面加工された平面上の微細な傷や凹凸を検出する際に効果的な照射方法です。

拡散反射光:表面のハレーションを抑え、全体を均一に照らす

拡散反射光は、照射して対象物に当たった光が、さまざまな方向に反射する照射方法です。光が拡散するため、正反射光と比べて光の強度が弱まります。

金属製品などの画像検査の際、対象物の表面が強い光を反射してしまうハレーションが起こると、表面の状態を正確に判別できません。しかし、対象物全体に均一に照明を照射できる拡散反射光ならハレーションを抑えられるので、表面の状態を正確に判別できます。特に金属やガラスといった反射しやすい対象物に適した照射方法です。

透過光:対象物のシルエットや内部の異物を確認する

透過光とは、光が対象物を透過する照射方法です。対象物の背面から光を照射します。

背面から均一に光を照射できるので、対象物全体のシルエットを把握するのに適した照射方法です。また、対象物の密度や厚みによって光の透過度合いが異なるため、表面的には分からない製品内部の異常や欠陥を判別するのにも役立ちます。透明や半透明の製品の検査によく用いられる照射方法です。

検査目的に合わせた照明の「形状」で選ぶ

検査目的に合わせた照明の形状の図

検査目的に合わせて、照明の「形状」を選ぶことも、正確な画像検査を行うために重要なポイントです。一般的に、以下のような形状の照明があります。

  • リング照明
  • バー照明
  • ドーム照明
  • 同軸落射照明
  • バックライト照明

ここからは、形状ごとの特徴と適した対象物を見ていきましょう。

リング照明:汎用性が高く、エッジ強調や印字検査

リング照明とは、円形にLEDが配置された照明のことです。カメラの正面から対象物を照らすフロント照明として最も一般的で、対象物の中心に向けて均一に光を照射できます。照射方向には、真上からのタイプや斜め方向からのタイプなど、用途に応じたバリエーションがあります。

影が出にくく全体を均一に照らせることから、印字やラベルの検査に用いられることが多いです。また、浅い角度から光を当てられるローアングルタイプであれば、エッジの輪郭を際立たせたり、表面の微細な傷を検出したりする用途にも適しています。

ただし四角い対象物の場合は、均一な照射ができないことがあるため、他の形状の照明と組み合わせて用いられるケースもあります。

バー照明:自由な設置角度で多様な検査に対応

バー照明とは、直線上にLEDが配置された棒状の照明のことです。リング照明よりも照射角度が調整しやすいため、さまざまな画像検査に用いられます。扱う製品が直線的なものが中心の場合にも、適した形状です。

表面の傷・凹凸などの異常を判別する外観検査や印字検査、基板やパネルなどのアライメント(位置決め)、製品や部品の方向判別など、さまざまな画像検査に活用されています。長尺のバー照明なら、尺の長い製品の検査も効率的に行うことが可能です。

ドーム照明:影のない均一照明で光沢ワークに最適

ドーム照明は、ドーム内部に設置したLED光を拡散反射させ、その反射光を対象物に照射する構造の照明です。ドーム内で光が全方向に広がるため、多方向から均一な光を当てることができます。

段差のある対象物や曲面(R加工)を持つ製品でも影が発生しにくく、正確な画像撮影が可能です。特に、光沢のある素材や凹凸の多い対象物、ハレーションが起きやすい素材でできた製品の外観検査、印字検査などに用いられます。

同軸落射照明:平坦な光沢ワークの微細な傷検出に最適

同軸落射照明は、ハーフミラーと均一な面光源により、カメラの光軸と照明の光軸を一致させる照射を行うための照明を指します。

カメラと照明を同軸で照射することにより、対象物の正反射光の撮影が可能です。例えば、光沢のあるフラットな対象物に同軸落射照明で光を照射すると、傷がある箇所だけ正反射光が弱くなるので、傷を正確に判別できます。

フラットな対象物の微細な傷や打痕の検出、基板のアライメント、プリント基板のパターン検査などに用いられるタイプです。

バックライト照明:シルエットによる精密な寸法・形状検査に最適

バックライト照明とは、対象物の背面から光を照射できる照明の形状です。狭指向角タイプと拡散タイプがあります。

背面から指向角が狭い光を照射できる「狭指向角タイプ」は、対象物のシルエットを正確に浮き上がらせることができるので、精密な寸法・形状検査を行う際に適しています。「拡散タイプ」は、樹脂製の対象物などの対象物の透過検査やガラス基盤のアライメントなどに用いられます。

その他の照明形状

照明の形状には、その他にもスポットやラインなどさまざまなものがあります。

スポット照明は、カメラの光軸と照明の光軸を一致させて照射できるタイプです。カメラのセンサーサイズと等しい大きさの対象物を撮影するときに用いられるテレセントリックレンズで撮影する際に適しています。

ライン照明は、線上にLEDが配置されたタイプです。ラインセンサーカメラを用いたシート材検査や異物検査に適しています。

検査のコントラストを高める照明の「色」で選ぶ

検査精度を高めるためには、コントラストを高められる「色」の照明を選ぶことが大切です。

照明を選ぶ際の色の決め方を解説します。

対象物の色と補色の関係を利用して決める

適切な照明を選ぶためには、対象物の色と補色の関係を考慮することが大切です。

例えば、赤い対象物に対して白色LED照明や赤色LED照明を使用すると、コントラストが弱く、判別しづらい傾向にあります。一方、青色LED照明を使用すると、対象物が黒く表示され、コントラストがはっきりするので、対象物を検出しやすくなります。また、表面の「金色」を強調したい場合には赤色照明が効果的で、逆に目立たせたくないときは青色照明が効果的です。

この現象が起こるのは、同系統の色の光は反射されやすく、逆に補色の光は吸収という性質が関係しています。対象物の色とその補色の関係を利用して照明の色を選ぶことで、検査対象の特徴を正確に浮かび上がらせることが可能です。

波長による透過・散乱特性を活用して決める

照明の色を決める際は、波長による透過特性や散乱特性を活用するケースもあります。

光の透過度は波長によって異なり、例えば長波長の赤色は透過しやすく、短波長の青色は拡散しやすい特性を持っています。例えばキャリアテープに包まれたチップを撮影する場合、透過率が高く散乱率が低い赤色LED照明の使用により、コントラストをはっきりさせることが可能です。

また、複数の異なる波長のLEDを搭載し、それぞれの波長を切り替えて照射できる照明よりも、単色LED照明を用いることで、よりエッジのシャープさが際立つ画像を得られることもあります。逆に、対象物と同色の異物を判別する際や、同色に見える対象物を判別する際は、複数の異なる波長のLEDを搭載し、それぞれの波長を切り替えて照射できる照明を使用し、波長ごとの見え方の違いを生かすことで、対象物の正確な識別ができます。

高精度かつ安定した画像検査を実施するための具体的な方法

外観検査装置(ビジョンシステム)

高精度かつ安定した画像検査を行うためには、具体的にどのようなポイントを押さえて実施すれば良いのでしょうか。

ここからは、「ハレーション対策」と「タクトタイム短縮とノイズ抑制」に分けて、具体的な実施方法を解説します。

ハレーション対策:適切な照明とソフトウェアで解決

ハレーションを防いで高精度な画像検査を安定して行うには、適切な照明とソフトウェアを選定する必要があります。

前述した通り、ハレーションを抑えるためには、拡散反射光を照射できる照明が最適です。それに加え、画像解析ソフトやHDR(ハイダイナミックレンジ)などのソフトウェアの活用により、判別しやすい画像を生成できます。

画像解析ソフトは撮影した画像を用いて、対象物を自動で判別するソフトウェアです。AIを搭載したものも登場しており、精度の高い画像検査をサポートします。

HDRは、明度の異なる複数の画像を一枚の画像に自動合成することで、鮮明な画像を生成する技術のことです。HDRにより白飛びした画像や暗すぎる画像を、解析しやすい状態に処理できます。

タクトタイム短縮とノイズ抑制:十分な光量と安定性

タクトタイムの短縮やノイズの抑制には、十分な光量を安定して照射できる照明を選ぶことが大切です。

タクトタイムとは、製品を1つ製造するのにかける時間のことで、画像検査においては、1つの製品を検査するのにかかる時間を指します。タクトタイムを短くしようと、搬送速度を上げた場合、適切な露光時間を確保できず、モーションブラー(画像のブレ)が起きてしまいます。

モーションブラーを抑制する方法には、露光時間を短くするか、光量を増やすのが効果的です。しかし、露光時間を必要以上に短くすると、光量が減ってしまうので、モーションブラーは抑制できるものの、撮影した画像が暗くなってノイズが増えてしまいます。

十分な光量があれば、露光時間が短くても、しっかり明るさを確保できるため、搬送速度を上げてもモーションブラーが起こりづらいです。ノイズも抑制できるので、精度の高い画像検査ができます。

十分な光量を安定して照射できる照明を選べば、タクトタイムの短縮とノイズの抑制を同時に実現することが可能です。

【製品・サービス紹介】画像処理に関するカナデンのソリューション

幅広い電子機器を取り扱い、企業の課題解決をサポートするソリューションを提供しているカナデンでは、画像処理・画像検査の精度向上や業務効率化をサポートする製品・サービスをご提案しています。

最後に、カナデンがご提案する画像処理に関するソリューションの一例をご紹介します。

1,500種類以上の豊富な画像処理用の照明ラインナップ

カナデンでは、『画像処理用照明』として、以下のような照明を1,500種類以上取りそろえています(※)。

  • リング照明
  • スクエア照明
  • バー照明
  • ドーム照明
  • フラット照明
  • 同軸照明
  • スポット照明
  • ライン照明
  • 紫外照明
  • 赤外照明

豊富なラインナップの中から、お客さまの検査ニーズや対象物の特性に応じて、最適な製品のご提案が可能です。

例えば、株式会社レイマックのマルチポジションリング照明『IMAR-Dシリーズ』は、ハイアングルからローアングルまで、照射の高さを自由に調節できるリング照明です。どのポジションからでも、照射エリアの中央が暗くならない設計になっているため、どのような検査目的でも精度の高い画像検査が行えます。

拡散照明ですが、照度が高いので、高速検査や高倍率検査にも活用が可能です。白・赤・青の発光色を自在にブレンドして、検査目的に最適な照射ができます。

高度な画像処理ソフトウェアで検査を自動化

カナデンでは、精度の高い画像検査を自動化するための画像処理ソフトウェアも取り扱っています。

例えば画像処理ソフトウェア『Vision Edition』は、キヤノン製ネットワークカメラや産業用カメラN10-W02を利用した画像処理ソフトウェアです。エッジ検出やブロブ検出などの検査系機能や、2Dコードリーダー、アナログメーター読み取りなどの点検系機能を搭載しています。必要な処理ユニットを並べ、線でつなぐプログラミング形式なので、直感的に操作ができるのが特徴です。

また、株式会社スカイロジックのAI汎用外観検査ソフトウェア『EasyInspector2』は、AIのディープラーニングとルールベース型の処理を同時に用いることにより、さまざまな検査や確認作業を自動化できるソフトウェアです。マスター画像との比較や、傷・ブツ検出、位置・幅・角度測定などのさまざまな検査機能を、1つのソフトウェアにまとめています。

ソフトウェアをインストールし、市販のWebカメラなどを接続するだけで、簡単に検査システムが構築できるのが特徴です。低価格のUSBカメラも使用できるため、コストを抑えて導入したい方にも適しています。

専門家による最適な照明選定サポート

カナデンでは、専門家による最適な照明サポートもご提供しています。

LED照明の選定ポイントはご紹介した通りですが、適切な製品を選ばなければ、検査精度が落ちてしまう可能性が高いです。しかし、膨大な種類のある画像検査向け照明の中から自社に合った製品を選ぶことに、苦戦してしまう方も少なくありません。

カナデンでは、画像検査向け照明を熟知した専門家が課題やお悩みをお伺いし、お客さまに最適な照明の導入をご提案いたします。

補助金ヘルプデスク」も設置しているため、補助金・助成金を活用した照明やソフトウェアの導入のお手伝いも可能です。活用できる補助金・助成金の種類や条件から、手続きのサポートなどについて、無料でご相談を受け付けていますので、お気軽にご相談ください。

最適な照明を選び、画像処理の品質を上げましょう

精度の高い画像検査を行うには、照明選びがとても重要です。ご紹介したLED照明を選ぶ際のポイントを参考に、自社の検査ニーズに合った照明を選び、画像処理の品質を高めましょう。

とはいえ、最適な照明選定は簡単ではないため「検査目的に合う照明が分からない」「専門的なアドバイスが欲しい」という方もいるかもしれません。

カナデンは、豊富なラインナップの中から、お客さまに最適なソリューションをご提案いたします。照明選びに迷ったら、ぜひお気軽にご相談ください。

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