データセンターの冷却方式とは?空冷・液冷の仕組みと選び方を解説

チップが液体に浸かって冷却されているイメージ画像

AIや機械学習の普及により、データセンターのサーバーが発する熱は大幅に増え、今後ますます爆熱化していきます。従来の空冷設備では対応しきれないケースも増えはじめ、新設・改修にあたって効率的な冷却方式の必要に迫られている設計・建設担当者や開発担当者の方も多いのではないでしょうか。

この記事では、空冷・水冷(DLC)・間接外気冷却・液浸冷却それぞれの仕組みと特徴を比較しながら、施設の規模や運用体制に合った冷却方式の選定ポイントを解説します。特に、展示会などでも注目が高まっている液浸冷却については、一相式・二相式の違いも含めて解説します。

この記事は、東証プライム市場上場企業として、三菱電機をはじめ400社以上の製品を取り扱い、「データセンターの設備」もご提供する株式会社カナデンの知見とノウハウを元に解説しています。

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データセンターの冷却とは?評価指標とPUEの基本

データセンターの冷却効率を客観的に測るために、まずは業界で広く使われている評価指標を理解しておきましょう。ここでは、冷却方式の導入効果を数値で比較・検討する際に必要な代表的な指標を解説します。

PUE(電力使用効率)の基本情報

PUE(Power Usage Effectiveness)とは、データセンター全体の消費電力を、ITシステムのみの消費電力で割った値です。PUEが1.0に近いほど、冷却などの付帯設備への電力ロスが少なく、効率的な運用ができていることを示します。

評価レベル PUE値の目安 概要
非効率 2.0以上 非効率に電力を使っている施設
標準的 1.5前後 一般的なデータセンターの平均値
高効率 1.2〜1.4 効率的に電力を活用している施設
(省エネ設計や液冷方式等を活用)
最高水準 1.0〜1.1 非常に効率的に電力を活用している施設
(液浸冷却など次世代技術を活用)

※出典:資源エネルギー庁「令和7年度第2回工場等判断基準WG省エネ法に関する措置について 2025年5月14日」 https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/sho_energy/kojo_handan/pdf/2025_002_03.pdf

WUEとCUEで見るエネルギーと環境への影響

PUEに加えて、近年は水資源の使用効率(WUE)と炭素排出量(CUE)の観点から評価する指標も注目されています。

1.WUE(Water Usage Effectiveness:水使用効率)
冷却に使用した水の量をIT機器の消費電力で割った値

WUEの値が低いほど、水を効率的に使用しているということを意味します。外気冷却や冷却塔(クーリングタワー)を活用した方式では、電力効率(PUE)は高い反面、冷却水の消費が増える傾向にあります。水資源の確保や排水に関する地域規制への対応において、特に重要な指標となります。企業の環境報告書(サステナビリティレポート)への情報開示として重視されています。

2.CUE(Carbon Usage Effectiveness:炭素利用効率)
データセンターが排出した二酸化炭素の総量をIT機器の消費電力で割った値

脱炭素経営(カーボンニュートラル経営)の取り組みを進める企業が注視しています。使用する電力の再生可能エネルギー比率(非化石価値など)の向上が直接的な改善につながります。高効率な冷却システムを導入し、データセンター全体の総消費電力を抑えるアプローチも同時に求められます。

自社のPUE目標をどう設定する?

計画の段階でPUEの目標値を設定しましょう。日本では、省エネ法で2029年度以降に新設されるデータセンターを対象に、稼働開始から2年後にPUE値1.3以下を達成することが義務付けられました。また同じく省エネ法のベンチマーク制度で、すでに稼働している既存のデータセンターに対しても、2030年度までに事業者平均でPUEを1.4以下にするという努力目標が課されています。

改修の場合、PUEの目標値は施設の規模や既存設備の状態、予算によって水準が異なります。まず現状のPUEを計測し、業界平均や競合他社の水準と比べることが出発点になるでしょう。空冷のみで運用している既存施設でも、アイルキャッピング(仕切り板)や空調制御の最適化によって改善できる場合もあります。部分的な液冷の導入も、改善するための現実的な選択肢でしょう。経営層への報告や省エネ目標の策定でも、PUEを軸に据えた具体的なロードマップを示すことで、設備投資の根拠を明確にしやすくなるはずです。

※出典:経済産業省「省エネ・非化石転換法に基づくデータセンター業に係る措置」https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/enterprise/factory/support-tools/data/dc_gaiyo.pdf

データセンターの冷却がなぜ重要なのか?

ここでは、なぜ近年になってデータセンターにおける温度管理がこれほどまでに注目を集めているのか、背景と目的を解説します。サーバーの高密度化や電力消費といった観点から、冷却システムの持つ役割を順番に確認していきましょう。

冷却の目的 主な理由 期待できる効果
機器の故障防止 許容温度を超えると部品の損傷や性能低下が起きるため 安定稼働の維持
消費電力の削減 施設全体の消費電力のうち約40%が冷却設備であるため 運用コストの低下
環境規制への対応 省エネ基準や法規制を遵守する必要があるため コンプライアンスの遵守

サーバーが高密度化し発熱量が増大するため

AIやハイパフォーマンスコンピューティングの普及により、サーバー一台あたりの処理能力は大きく向上したと言われています。限られたスペースに多くの半導体が詰め込まれるようになり、サーバーから発生する熱量も増えています。部屋の空間全体を空調で冷やす従来のアプローチだけでは、局所的に熱がこもる「熱だまり」が発生しやすいと考えられます。特定のラックだけが異常な高温になれば、周囲の機器にも悪影響を及ぼしかねません。多くの熱を効率的に、かつピンポイントで排出する新しい仕組みが求められているのです。

冷却不足でシステム障害のリスクが高まるため

機器の温度がメーカーの定める許容範囲を超えると、システムに深刻な影響を及ぼす可能性があります。異常な温度上昇を検知したサーバーは、自らを熱から保護するために処理性能を意図的に落とすよう設計されていることが一般的です。サーマルスロットリングと呼ばれる動作で、性能が低下すると予定していた計算処理が終わらず、業務の遅延につながります。それでもなお温度が下がらない場合は、ハードウェアの損傷を防ぐためにシステム全体が強制的にシャットダウンする場合もあります。データセンターの機能が停止すれば、企業の事業運営や顧客へのオンラインサービス提供が止まりかねません。適切な温度管理を持続することは、企業がサービスを提供し続けるための事業継続計画の観点からも大切な要素と言えるでしょう。

電力消費を抑え環境規制に対応できるため

データセンターは膨大な電力を消費する施設であり、そのうちの約45パーセントが冷却システムに使われているとされています。冷却効率を高められれば、電気料金の削減にもつながるでしょう。また、昨今は環境保護の観点から、企業に対して二酸化炭素排出量の削減や省エネ基準の達成が強く推奨されるようになりました。グローバル企業においては、サプライチェーン全体での環境負荷低減が取引条件として求められるケースも出てきています。

データセンターの主要な冷却方式と特徴

データセンターで採用されている冷却方式には、いくつかの種類があります。ここでは、現在主流の空冷方式から、高発熱に対応する水冷方式(DLC)、外気を活かす間接外気冷却、そしていま最も注目される液浸冷却まで、それぞれの特徴を解説します。なかでも液浸冷却は展示会でも大きく取り上げられるトレンドとなっているため、一相式・二相式の違いを含めて詳しく取り上げます。

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冷却方式 仕組みの概要 メリット 導入コスト
空冷方式 冷やした空気を循環させて熱を奪う 運用実績が豊富でメンテナンスが容易 低め
水冷方式(DLC) 発熱部品に密着させた冷却板に液体を通し熱を奪う 高発熱・高密度ラックに対応でき効率が高い 高め
間接外気冷却 外気で冷やした空気や冷媒を熱交換器経由で循環させる 外気を活用し冷却の消費電力を大きく抑えられる 中程度
液浸冷却(一相・二相) サーバーを絶縁性の冷却液に丸ごと沈める 電力効率が非常に良く冷却性能が高い かなり高め

従来から主流である「空冷方式」

空冷方式は、サーバー室内に冷やした空気を循環させて機器の温度を下げる仕組みです。長年にわたり多くのデータセンターで採用されてきた実績があり、導入・運用ノウハウが蓄積されています。床下に空間を設けて冷風を送る二重床空調や、温かい空気と冷たい空気の通路を物理的に分けるアイルキャッピングなど、効率を高める工夫が積み重ねられてきた点も特徴です。導入コストが比較的安く、既存の設備設計を活かしやすいため、一般的な業務サーバーの冷却には現在でも十分に対応できます。一方で、空気を媒体とする性質上、熱を運ぶ能力には物理的な制限があります。AIサーバーのように発熱量の大きい機器を空冷だけで冷やしきるのは、徐々に難しくなっていると考えられるでしょう。

高発熱に対応する「水冷方式(DLC)」

水冷方式は、空気よりも熱を伝えやすい液体(水や専用の冷媒)を使って機器を冷やす仕組みで、なかでも代表的なのが「ダイレクト・リキッド・クーリング(DLC:Direct Liquid Cooling)」です。DLCは、CPUやGPUなど発熱の大きい部品に冷却板(コールドプレート)を直接密着させ、そこに液体を循環させて熱を奪う方式で、空冷では冷やしきれない高密度・高発熱なラックにも対応できるとされています。サーバー内部のファンや空調機の稼働を抑えられるため、省エネ効果が期待できる点も魅力でしょう。一方で、液漏れ対策や配管の点検といった、空冷にはなかった運用・保守体制を整えておく必要があります。近年では、一般的なサーバーは空冷のまま、高発熱なラックだけをDLCで冷やすハイブリッドな設計も増えています。


外気を活かす「間接外気冷却」

間接外気冷却は、外の冷たい空気を熱交換器を介して利用し、施設内の空気や冷却水を冷やす方式です。外気を直接サーバー室に取り込むのではなく、熱交換器で隔てることで、外気に含まれる塵や湿気、腐食性ガスの影響を抑えられる点が特徴です。冷凍機(チラー)を動かす時間を減らせるため、気候の冷涼な地域では冷却にかかる消費電力を大きく抑えられ、PUEの改善につながります。一方で、外気温が高い地域や夏季には冷凍機との併用が必要になり、立地の気候条件によって効果が左右されます。データセンターの建設地を選ぶ段階から、外気冷却をどこまで活かせるかを検討しておくと、省エネと安定稼働を両立しやすくなるでしょう。

いま注目の「液浸冷却」(一相式・二相式)

液浸冷却は、電気を通さない絶縁性の冷却液にサーバーを丸ごと沈めて冷やす方式です。部品全体が直接液体に触れるため冷却効率が高く、100kWを超えるような高発熱のAIサーバーにも対応しやすいのが特徴です。冷却ファンや大規模な空調が不要になり、消費電力を大きく削減してPUEの改善も期待できます。各地の展示会でも人が大勢集まり、次世代の冷却手段として注目が急速に高まっています。

液浸冷却には、液体が気化しない「一相式(単相式)」と、冷却液の沸騰・気化で熱を奪う「二相式」があります。一相式は構造がシンプルで運用しやすく、二相式は冷却性能が高い反面、専用設備や冷却液の管理がより厳密に求められます。導入には専用タンクや床の耐荷重など建物側の要件もあり初期費用は高めですが、省エネ効果が大きく、新設・大規模改修時に検討する価値のある方式です。

空冷・水冷(DLC)・間接外気冷却・液浸冷却にはそれぞれ特徴と注意点があり、自社の計画にどの方式が合うのか判断に迷う場面も多いはずです。カナデンは幅広い事業領域とパートナー企業のネットワークを活かし、データセンターを建設・改修予定のお客様向けに、各種設備のご提案や、複数メーカーを比較したうえでの製品選定が可能です。検討初期から情報収集としてお気軽にご連絡ください。

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自社に最適な冷却方式を選ぶためのポイント

データセンターの冷却方式を選定する際は、単に冷却能力の高さだけで決めるのではなく、総合的な判断が求められます。ここでは、導入の検討をスムーズに進めるために確認しておくべき重要なポイントを解説します。

選定ポイント 考慮すべき事項 影響する領域
コストバランス 初期投資と毎月の電気代の差引き 予算計画や投資回収期間
設備への親和性 建物の構造や床の耐荷重 工事の規模や工期
運用体制の構築 専門的なメンテナンススキルの有無 日常の管理業務や障害対応

ポイント1:導入コストと運用コストのバランスを取る

新しい冷却方式を導入する際は、初期の設備投資と導入後の電気代削減効果を見極めておきましょう。液冷方式や液浸冷却は、専用の配管やタンクが必要になるため、空冷方式に比べて初期費用が高くなる場合があります。しかし長期的な視点で見ると、空調にかかる消費電力を削減できる傾向にあるため、トータルコストで有利になるケースもあるでしょう。空調の場合の電気料金単価や今後のサーバー増設予定を踏まえて、何年で投資を回収できるかをシミュレーションするのがおすすめです。回収期間が想定よりも長くなる場合は、実際にその冷却能力が必要なラックに絞って部分的に導入するという選択肢も考えられます。

ポイント2:既存設備との親和性と拡張性を確認する

すでに稼働しているデータセンターに新しい冷却方式を導入する場合、建物の構造や床の制限が課題になることがあります。例えば、液浸冷却用のタンクを設置するには、十分な物理的スペースと液体の重さに耐えられる強固な床が必要です。既存の環境にそのまま持ち込むことが難しい場合、大規模な改修工事が必要になるでしょう。高発熱なAIサーバーラックのみを液冷に切り替え、残りの一般的なサーバー群は従来の空冷を維持するハイブリッド運用を採用する企業も増えています。現状の設備をどこまで活かせるかを確認しながら、自社のペースに合わせて段階的な移行を検討するのがおすすめです。将来的に機器が増えた際にも、冷却能力をスムーズに拡張できるような設計にしておくとよいでしょう。

ポイント3:メンテナンス性を考慮して運用体制を整える

冷却方式によって、日常のメンテナンス手順や障害発生時の対応フローも変化します。水冷や液浸冷却の場合、配管の定期点検や冷却液の品質管理など、空冷時にはない新しい運用業務が発生します。万が一のトラブル時に迅速に対応できるよう、自社の運用チームに新しい技術を習得する体制や余裕があるかを確認しておきましょう。保守作業が複雑になる場合は、専門知識を持った外部事業者へのメンテナンス委託を検討するのもおすすめです。新しい技術を導入する際は、機器の性能だけでなく「安全に使い続けられるか」という運用面での持続可能性を評価することも大切です。

国内外のデータセンター冷却に関する最新動向

ここでは、現在の冷却技術の進化や主な動向を整理します。

※2026年7月現在の情報です。

AIサーバーの普及と冷却需要の関係

生成AIや大規模言語モデルの学習・推論に用いられるGPUクラスターは、従来の汎用サーバーと比較して電力密度が異なります。1ラックあたりの消費電力が数十キロワットに達するGPUサーバーの登場により、空冷インフラでは温度管理が追いつかないケースが世界中で報告されている状況です。冷却設備メーカー各社はDLC(ダイレクト・リキッド・クーリング)対応の新製品投入を加速させており、データセンター設計においても液冷対応を前提とした施設計画が増えていると言われています。国内でも大手クラウド事業者やコロケーション事業者が液冷対応ラックの採用を公表しており、液冷は一部の先進的な施設に限った技術ではなくなりつつあると考えられるでしょう。

グリーンデータセンターと環境規制の強化

日本国内では省エネ法に基づくエネルギー管理の強化が続いており、一定規模以上のデータセンターは定期的なエネルギー使用状況の報告が義務づけられています。欧州をはじめとするグローバル市場では、EUタクソノミーやESG開示要件に対応するため、データセンターの環境性能を数値で証明することが取引上の要件となりつつある状況です。規制強化の潮流に対応するためにも、PUEやWUEの改善を冷却設備の選定理由として明確に位置づけておくことが、今後の事業継続にとって重要な意味を持つと言えるでしょう。

廃熱利用と地域連携という新たな視点

冷却システムから排出される廃熱を再利用する取り組みも、先進的なデータセンターで始まっています。サーバーが発する熱を地域の暖房システムや温水施設に供給する事例が、北欧を中心に報告されています。エネルギーコストの削減と地域社会への貢献を同時に実現する取り組みとして注目されており、大規模施設の新設や移転を検討する際には、廃熱活用の可能性も視野に入れておく価値があるでしょう。

まとめ

この記事の要点をまとめます。

  • AI普及による発熱増大に対応するため、データセンターの冷却効率改善が急がれている
  • 冷却方式には空冷・水冷(DLC)・間接外気冷却・液浸冷却などがあり、高発熱なAIサーバーには水冷や液浸が適する。なかでも液浸冷却は一相式・二相式ともにいま最も注目されるトレンドである
  • 方式の選定時は初期費用だけでなく、長期的な運用コストや他設備との相性を考慮する

データセンターの冷却課題に向き合い、安定した事業運営と省エネを両立するインフラ構築を進めていきましょう。

冷却設備の選定は、コスト・設備親和性・運用体制を踏まえた総合的な判断が求められます。エレクトロニクスソリューションズ・カンパニーであるカナデンは、データセンターの設備を多数取り扱い、複数メーカーを比較した製品選定や見積作成はもちろん、データセンター設備に関するご相談を承ります。情報収集の段階でも、まずはお気軽にお問い合わせください。

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執筆者:カナデン編集部

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