AIデータセンターとは?従来型との設備の違い・必要な設備構成と建設時の課題を解説

先進的なデータセンターのイメージイラスト

データセンターの新設・増設を計画するなかで、「AI向けのサーバーは従来と桁違いの電力と発熱を伴い、どのような電源・冷却設備で対応すればよいのか」と、設備要件に頭を悩ませている開発担当者、建設・設計担当者の方も多いのではないでしょうか。

AIの普及とデータセンターの急増は密接に結びついており、受変電設備・無停電電源装置(UPS)・冷却設備・非常用発電機といった設備の考え方も、従来型からさらなる高効率化・高度化への対応が求められています。

本記事では、データセンターの建設・設備更新を担う開発担当者、建設・設計担当者の方に向けて、AIデータセンターと従来型の設備要件の違いから、需要拡大の背景、受変電設備・無停電電源装置(UPS)・高密度ラック・液冷などの設備構成、そして電力・発熱・省エネ面で直面する課題と相談先までを体系的に解説します。

この記事は、東証プライム市場上場企業として、三菱電機をはじめ400社以上の製品を取り扱い、「データセンターの設備」もご提供する株式会社カナデンの知見とノウハウを元に解説しています。

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AIデータセンターとは?従来型との違い

AIの本格的なビジネス活用が進むなか、その基盤となるデータセンターに求められる設備も大きく変わりつつあります。なお、データセンターには「事業者が用意した施設を利用・間借りする側」と「施設そのものを建設・保有し、設備を選定する側」がありますが、本記事は後者、つまりデータセンターを新設・増設する事業者の視点で解説します。まずは、AIデータセンターがどのような役割を持ち、これまでの設備とどう違うのかを整理していきましょう。

比較項目 従来型データセンター AIデータセンター
主な用途 Webホスティング・ファイル保管・社内システム AIモデルの学習・推論・大規模データ解析
主要プロセッサ CPU中心 GPU・AI専用アクセラレータ中心
1ラックあたりの電力 数kW〜10kW程度 数十kW〜100kW超
主な冷却方式 空冷 水冷・液浸冷却・大容量空冷

高度なAI演算処理に特化して設計される

AIデータセンターは、大量のデータを読み込ませてパターンを学習させたり、ユーザーからの入力に対して即座に回答を生成したりする「演算処理」に特化して作られた施設です。従来のデータセンターは、主にWebサイトの公開や企業の社内システム稼働、データの長期保管といった用途を想定して設計されていました。一方、AI向けの施設では、計算を並列で処理する能力が求められます。一般的なCPUだけでなく、画像処理やAIの計算を得意とするGPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)を多数搭載したサーバーが中心となります。計算のスピードと効率を高めるために、ネットワーク帯域やストレージへのアクセス速度も高い水準で設計されているのが特徴です。

1ラックの消費電力と発熱量が高い

設備面における大きな違いは、サーバーを収容するラック単位での「電力消費量」と「発熱量」にあります。従来型のデータセンターでは、1ラックあたりの消費電力は数キロワット(kW)程度に収まるのが一般的でした。しかし、AI計算用の高性能なGPUを複数搭載したサーバーをラックに敷き詰めると、1ラックあたり数十kWから、場合によっては100kWを超えるほどの電力を消費します。発生する熱も相当な量になるため、従来のエアコンのような空気冷却(空冷)だけでは熱を逃がしきれないと考えられます。

なぜ今AIデータセンターの需要が急拡大しているのか?

ここ数年、AIデータセンターへの投資や建設ラッシュに関するニュースを目にする機会が増えたのではないでしょうか。AIの普及とデータセンターの新設・増設は密接に連動しており、従来型とは異なる設備要件を持つ案件が増えたことで、事業者だけでなく建設会社や設計会社も必要な設備の調査に忙しいことでしょう。背景には、テクノロジーの進化と企業のデジタル化という複数の要因が絡み合っていると考えられます。

需要拡大の背景 市場への具体的な影響
生成AIの普及 LLM開発企業によるGPUサーバーの大量調達と拠点の新設
リアルタイム処理の増加 通信遅延を防ぐための分散型インフラへの投資拡大
企業インフラのクラウド移行 ハイパースケーラー(巨大クラウド事業者)による超大規模施設の建設ラッシュ

※出典:日本貿易振興機構(JETRO)「第5項 世界のデジタル関連投資 | 第2節 主要国・地域の産業動向 - 第2章 世界と日本の直接投資 - 2025年版 - ジェトロ世界貿易投資報告 - 国 ・地域別に見る - ジェトロ」

生成AI・大規模言語モデル(LLM)の急速な普及

要因の一つは、ChatGPTをはじめとする生成AIの普及です。文章や画像、プログラムのコードなどを人間に近いクオリティで生成できるAIは、ビジネスの生産性を大きく向上させる可能性を持っていると考えられています。高度なAIは、数千億という極めて多くの「パラメータ(人間の脳のシナプスのようなもの)」を持つ大規模言語モデル(LLM)を基盤としています。巨大なモデルに世界中のテキストデータを読み込ませて学習させるには、これまでのコンピューターでは何十年もかかるほどの計算量が必要です。短期間でAIを賢く育てるためには、強力な計算力を持つ専用データセンターの存在が欠かせない要素となっています。

リアルタイム処理が必要な領域の増加

AIの活躍の場は、チャットツールだけにとどまりません。工場での不良品検知や、街中を走る自動運転車、医療現場での画像診断など、現実世界でのリアルタイムなデータ処理が求められる領域が増えています。例えば自動運転では、車載カメラが捉えた映像やセンサーの情報を瞬時に解析し、ブレーキを踏むかハンドルを切るかを判断する処理が求められます。遅延の許されない処理を支えるため、通信拠点の近くに設置されるエッジ型のAIデータセンターなども含め、インフラの需要が多角的に広がっていると言われています。

企業インフラの「クラウド移行」とオンプレミスの縮小

多くの企業でデジタルトランスフォーメーション(DX)が推進されている中で、自社内に物理的なサーバーを持たず、クラウドサービスを利用する流れに注目が集まっています。企業が自前のITインフラを維持・更新する経済合理性が低下するなか、企業のオンプレミス(自社所有)は今後さらに縮小すると予測されています。そのため、AmazonやGoogleなどの巨大なクラウドサービスを提供する事業者(ハイパースケーラー)は、世界中の企業からのリクエストに応えるため、大規模の予算を投じてAIデータセンターの増設を急いでいます。

AIデータセンターに求められる設備構成

AIデータセンターを新設・増設する際は、サーバーだけでなく、それを安定稼働させる電源・冷却・ラックといった設備(ファシリティ)の設計が要となります。ここでは、開発担当者、建設・設計担当者が設備仕様を検討するうえで押さえておきたい主要な構成要素を見ていきます。

重要な構成要素 役割と最新技術の例
電源設備 大電力を安定供給する受変電設備・無停電電源装置(UPS)・非常用発電機
冷却設備 爆熱を処理する空冷・液冷(直接液冷)・液浸冷却
高密度ラック・IT機器 高発熱に耐える高密度ラックと、GPUなど演算プロセッサ・大容量ストレージ・高速回線

大電力を支える受変電設備・UPS・非常用発電機

AIデータセンターでは、1ラックあたり数十kWから100kWを超える電力を消費することもあり、まず求められるのが大容量の電力を安定して供給する電源インフラです。建物に電力を引き込み電圧を変換する受変電設備は、想定される最大負荷に見合った容量で設計する必要があります。加えて、停電や瞬時電圧低下からサーバーを守る無停電電源装置(UPS)や、長時間の停電に備える非常用発電機も、データセンターの安定稼働には欠かせない設備です。これらは後から容量を増やすことが難しいため、建設・設計の初期段階から、想定するGPU搭載量に見合った電源計画を立てておくことが重要と考えられます。




爆熱を処理する冷却設備(空冷から液冷・液浸へ)

計算能力が上がるほどプロセッサは高温になり、AIサーバーは従来の空調(空冷)だけでは冷やしきれないほどの熱を帯びることが多くなります。いわゆる「爆熱化」への対応として、空気よりも熱を奪う効率が高い液体を使った冷却方式が注目されています。代表的なものに、発熱する部品へ直接冷却液を循環させる「直接液冷(Direct Liquid Cooling/Direct-to-Chip)」や、電気を通さない特殊な液体にサーバーごと沈める「液浸冷却」があり、省エネや廃熱回収の観点からも導入が進み始めています。どの冷却方式を選ぶかは電源設備やラック構成とも密接に関わるため、建設計画の早い段階で検討したいポイントです。なお、冷却方式の詳しい比較は、以下の記事をご一読ください。

高密度ラックと演算・ストレージを支える構成

大電力と冷却を前提に、実際にサーバーを収容するのが高密度ラックです。AI向けのGPUサーバーは消費電力・発熱ともに大きいため、ラックには高い耐荷重と発熱を逃がす構造、そしてラックごとの配電・冷却との整合が求められます。ラック内に収まるIT機器としては、並列計算を担うGPUなどの演算プロセッサ、学習データを瞬時に供給するペタバイト(テラバイトの1000倍)級の高速フラッシュストレージ、そして何万台ものサーバーをつなぐ広帯域・低遅延のネットワーク回線が中心となります。

頭脳であるGPUの性能を活かすには、これらを支えるラック・電源・冷却をひとつのシステムとして設計する視点が欠かせないと言えるでしょう。

AIデータセンターの構築・運用が直面する3つの課題

AIデータセンターの建設・運用の裏側には、持続可能性や安全性を脅かす課題も存在します。設備投資の判断を誤ると後戻りが難しいため、計画段階でこれらのリスクを正しく理解しておきましょう。

直面する主な課題 企業や社会への影響
環境負荷と電源確保 莫大な電力消費によるCO2排出・コスト高騰と、電源容量の確保難
立地の偏りと供給不足 都市部の電力インフラひっ迫と災害時のシステム停止リスク
セキュリティの脅威 機密データの漏洩やAIモデルを改ざんされるリスク

膨大な電力消費と電源確保・省エネが課題になる

国際エネルギー機関(IEA)のレポートなどでも指摘されている通り、データセンター全体の電力消費量は今後数年で倍増するペースで推移するとされています。AIサーバーをフル稼働させる電力に加え、それを冷やす冷却設備にも相当な電力が必要です。建設側にとっては、そもそも必要な電源容量を確保できるかが大きな論点となり、同時に、企業がカーボンニュートラルを掲げるなかで大規模な電力消費は環境負荷の面でも逆風になりかねません。再生可能エネルギーの調達や、サーバーの排熱を周辺地域の暖房などに再利用する廃熱回収の仕組みづくり、施設全体の省エネ化が急務となっており、これらは設備選定の段階から織り込んでおきたい要素です。

※出典:IEA「Executive summary – Energy and AI – Analysis - IEA」https://www.iea.org/reports/energy-and-ai/executive-summary

※出典:環境省「データセンターによる再エネ利活用の促進に関するアニュアルレポート」https://www.env.go.jp/content/000392164.pdf

都市部集中で供給ひっ迫と災害のリスクがある

通信の遅延を防ぐため、データセンターは企業やユーザーが集中する都市部の周辺に建設される傾向にあります。しかし莫大な電力を消費することもあり、送電網の容量不足や電力不足を招きかねない点が課題です。特定の地域に重要なデータ基盤が集中する状況は、地震や水害といった自然災害が発生した際のリスク(単一障害点)を高める要因にもなり得ます。電力が豊富な地方への分散化が議論されていますが、地方から都市部へデータを送るための通信インフラ整備など、乗り越えるべき壁は少なくありません。

※出典:経済産業省「デジタルインフラ(DC等)整備に関する有識者会合(第7回事務局説明資料)」https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/joho/conference/digital_infrastructure/0007/004_jimukyokusiryou.pdf

※出典:Green x Digital コンソーシアム「データセンターの地方分散立地実現に向けた検討状況」https://www.gxdc.jp/pdf/regional-dc-report.pdf

機密データを狙うサイバー攻撃が増す可能性がある

AIデータセンターには、企業の未公開の技術情報や個人のプライバシーに関わる大量のデータが集約されています。国家を背景とするハッカー集団やサイバー犯罪者にとって、価値の高い標的となり得ると考えられます。システムへの不正アクセスだけでなく、空調や電源を制御している産業用システム(OT)がハッキングされ、意図的に施設を熱暴走させられる物理的なリスクも考慮する必要があります。強固なセキュリティ対策を常にアップデートし続ける体制が求められます。

ここまで挙げた電力・冷却・セキュリティの課題は、いずれも設備機器の選定段階から検討すべき領域です。カナデンは1907年創立のエレクトロニクスソリューションズ・カンパニーとして、受変電設備や無停電電源装置(UPS)、空調・冷熱機器、非常用発電機、ラック、監視などを扱うビル設備事業を展開しています。データセンターの新設・増設を計画されているお客様に対し、複数メーカーの製品を横断的に比較しての設備選定と窓口一本化が可能です。建設・設計の初期段階からご相談いただけますので、お気軽にご相談ください。

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課題解決を専門家に相談したほうがよいケース

データセンターの建設・増設では、電源・空調・監視・非常用電源など専門領域が多岐にわたり、すべてを社内だけで進めようとすると、設備仕様の見極め違いやコスト超過を招くおそれがあります。以下のような状況がある場合は、設備に詳しい商社・技術パートナーや、データセンター構築・ファシリティの専門家に早めに相談すべきタイミングと考えられます。

自社で抱えがちな悩み 専門家が提供できる解決策
電源・冷却能力の不足 高密度・高発熱に対応した電源計画・冷却設備の導入支援
設備ごとにメーカーがばらばら 受変電・UPS・冷却・非常用電源をメーカー横断で比較・提案
建設初期の設備要件が不明確 計画段階からの設備要件整理・省エネ・BCP設計の支援

AI向けの高密度・高発熱に既存設備で対応できないとき

新設・増設するデータセンターや既存のサーバルームにAI向けのGPUサーバーを収容しようとした際、「ラックの電源容量が足りない」「空調を強めても設定温度まで下がらない」といった問題に直面することがあります。電源や空調の限界は、既存設備の容量が不足しているサインである可能性があります。無理に進めるとサーバーの故障や停止につながるおそれがあるため、高密度に対応した配電計画の策定や、ラック単位で導入できる液冷システムの選定などについて、電源・冷却設備に詳しいエンジニアや商社に相談するのがおすすめです。

電源・冷却・監視・非常用電源などを一括で相談したいとき

データセンターの安定稼働には、受変電・UPS・冷却・非常用発電機・監視など多くの設備が関わりますが、これらは設備ごとにメーカーが分かれるため、個別に選定・調整しようとすると比較や調整が煩雑になりがちです。稼働状況を可視化する統合管理ツール(DCIM)による遠隔監視や、異常の兆候を事前に察知する仕組みも含め、電源から空調・監視までをまとめて相談できるパートナーがいれば、選定の手間を抑えつつ設備全体の整合性を確保しやすくなります。複数メーカーの製品を扱う商社であれば、中立的な立場で最適な組み合わせを提案できるはずです。


建設初期から設備要件・省エネ・BCPを整理したいとき

大規模なデータセンターを建設・運用する際は、サーバーを動かすだけでなく、施設全体のエネルギー効率(PUE)を高める省エネ設計や、停電・災害時にもシステムを止めないBCPの観点が求められます。これらは建物の設備設計と一体で考える必要があり、電源や冷却設備を動かす制御システム側のセキュリティ対策も同時に進めることが望ましいと考えられます。設備の省エネ化やBCP設計は、建設の初期段階から、設備に強い設計やエンジニアリング、商社のパートナーと相談することで、サステナブルで信頼性の高いデータセンターにつながるはずです。

まとめ

この記事の要点をまとめます。

  • AIデータセンターは高密度・高発熱で、従来型と比べ電源・冷却などの設備要件がより高度になる
  • 受変電・UPS・非常用発電機・高密度ラック・液浸冷却など、従来と異なる設備構成が求められている
  • 電源確保や省エネ・冷却の課題を解決するには、設備選定を相談できるパートナー選びが有効である

AIの進化はデータセンターに求められる設備の常識を塗り替えつつあり、建設・増設の計画もより高効率・高度化が必要になっています。自社の計画とAIデータセンターの設備要件を正しく照らし合わせ、将来を見据えた持続可能な設備投資を進めていきましょう。

カナデンは1907年創立、エレクトロニクスソリューションズ・カンパニーとしてビル設備をはじめ幅広い事業領域を展開しています。メーカー・エンジニアリング会社といったパートナー企業と連携し、複数メーカーの製品を横断的にご提案できる立場から、お客様のベストパートナーであり続けることを目指しています。データセンターの設備に関する検討初期のご相談にも対応しますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

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執筆者:カナデン編集部

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お役立ちコラムは株式会社カナデンのデジタルマーケティング課が運営する、エレクトロニクスと技術ソリューションの情報メディアです。当編集部には、長年お客様の課題に向き合ってきた元営業メンバーも在籍しています。エレクトロニクスソリューションズ・カンパニーとしての「現場の生の声」と「確かな専門知識」を活かし、モノづくりやビジネスの現場で使える役立つ情報を分かりやすくお届けします。

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